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第18話「決戦 ナイトメア!」【Dパート 降臨、ジェイカイザー改】

 【3】


 久方ぶりに見る、大地に描かれる魔法陣。

 その中心から浮かび上がってくる巨体。

 初お披露目となる蘇った相棒の姿に、若干の期待をしていた裕太はすぐに落胆することになった。


『ジェイカイザー改、見参ッ!』

「が、外見が変わってねえ……」


 仮にも大破してからの修復だったのだ。

 追加装甲が付いたり、新武装が追加されたり、そういう変化を期待していた裕太であったが、予想に反してジェイカイザーの外見は何一つ変化していなかった。

 いや、もしかしたら間違い探しのように修理前の姿を横に並べれば多少の差異はわかるかもしれないが、そうでもしないと違いがわからないくらい何も変化していない。


『何を言っている裕太! 人間、外見ではなく中身で勝負だ!』

「おまえ人間じゃねえだろうが! しょうがない、とりあえず乗せろ!」

『おう!』


 ジェイカイザーが屈みこみ、コックピットハッチを開ける。

 背後から無数のネコドルフィンが〈ナイトメア〉にとりつく音と鳴き声が響く中、裕太は一心不乱にタラップを駆け上がり、コックピットへと入り込んだ。

 おろしたてのものなのか、ビニール袋に包まれたままのパイロットシートにそのまま座り、操縦レバーに手をかける。

 ビニールでガサガサする背中に気を散らしつつも神経接続を果たし、正面に持ち上がってきたメインコンソールに指を伸ばす。


「……あれ? 画面が反応しないぞ」

『裕太、保護シートが張りっぱなしになっているぞ!』

「おいおい、マジで全部新品なのかよ!」


 仕方なく、爪の先で保護シートの端をこするようにして持ち上げ、ベリベリと一気に剥がす。

 ようやく反応するようになったタッチパネルに改めて指を乗せ、コックピットハッチを閉じる。

 そして周囲の風景を映して灯るディスプレイに、これまた保護シートが張ってある跡が見えたが裕太はもう剥がすのは諦めていた。


 前方に映るネコドルフィンの塊がプルプルと震え、その動きが徐々に大きくなっていく。

 そして、弾けるようにネコドルフィンが周囲にはね飛び、〈ナイトメア〉の全身が顕になると同時にネコドルフィンたちが海へとポチャポチャ音を立てて落ちていく。


「おちるニュイ~」

「たかいニュイ~」

「つめたいニュイ~」

「ひどいニュイ~」

「ええい、このネコ饅頭まんじゅうめ! ゼェゼェ……ほう、ようやくマシーンに乗ったか、笠本裕太!」


 ネコドルフィンを振りほどくのに相当の苦労をしたのか、息を切らせながら叫ぶグレイ。

 裕太は冷静にレバーを操作し、カーティスが運んできたコンテナの中のジェイブレードをジェイカイザーの手に取らせた。


 と、同時に裕太の携帯電話にかかる大田原からの着信。


「大田原さん! 修理ありがとうございました!」

「いいってことよ。それよりもだ、ジェイブレードとかの違法武器を使うときは、使用申請をしろってことを言い忘れてた」

「申請? たしかに画面に申請ボタンが……」


 メインコンソールの端に映る真っ赤なボタンに達筆のフォントで“申請”と書かれた一角を、裕太は試しに指で突いてみる。

 すると画面が切り替わり、真っ白な背景に黒い文字列が画面いっぱいに映し出された。

 その中の黄色く彩られている部分には“ジェイブレード”と書かれているのを確認した裕太は、そのまま送信ボタンを押す。

 数秒すると、“承認完了”という大きな文字が表示され、ジェイブレードのセーフティが解除された。


「これで承認終了だ。今後もジェイブレードやビームセイバーを地球で使うときは頼むぜ?」

「……これって、誰が承認しているんですか?」

「世の中には知らないほうが良いこともある。よし、じゃあ俺たちの仇撃ち、頼んだぞ」


 一方的に切れる電話。

 しかし、これでジェイブレードを使って思いっきり戦うことができるようになった。


 ジェイカイザーが『ふん!』と気合を入れてジェイブレードを構えると、ブレードの細い刃の両端から緑色に輝く透明なフォトンエネルギーの刃が現れ、幅広の剣へとその姿を変化させる。

 あまりのかっこよさに、思わず惚れ惚れしてしまう裕太。

 だが、正面に立つ〈ナイトメア〉もまた、右腕の手の甲あたりからビームセイバーのような光の刀身を伸ばし、切っ先をこちらに向けた。


「そちらが武器を使うのならば、徒手空拳としゅくうけんでは不公平だからな。こちらもビームカタールを使わせて貰うぞ!」


 ビームカタールを振りかぶり、目にも留まらぬ速さで飛びかかる〈ナイトメア〉。

 その一撃をジェイブレードで受け止めると、フォトンエネルギーとビームがぶつかり合い激しい火花が周囲に飛び散る。

 光のシャワーに目を奪われながらも、裕太は操縦レバーを捻ってジェイブレードを一旦引き、横薙ぎに一閃した。

 しかし、素早い動きで〈ナイトメア〉がジェイブレードを受け止め、先ほどと同じ格好に戻る。


 互角の戦い……だが、それができることに性能の上昇を裕太は噛み締めていた。

 動きが目で追える、反射的に操作が効く。

 これまで秒単位の操作ラグを考慮しながら無茶な操縦を強いられていた世界から解放され、裕太は勝利への糸口を確実に認識していた。


 一度押し込むように力を入れ、次の瞬間に後ろに飛び退くイメージを頭に浮かべながらペダルを踏み込む。

 するとジェイカイザーの脚部バーニアが小さな火を吹き、その巨大な身体を後方へと持ち上げた。

 下がりつつ裕太はジェイブレードを腰部のハードポイントに装着し、代わりに右腕でショックライフルを手に取らせる。

 照準を〈ナイトメア〉に向け操縦レバーのボタンを押すと、電撃をまとった光の弾丸が敵へと向かって放たれていく。


 先ほど押され、体制を崩していた〈ナイトメア〉は銃口が光ると同時にその場で跳び上がり、ジェイカイザーの上空から左の腕の先に備え付けられた機関砲を放射した。


(あいつも飛び道具を持ってたか! だが……!)


 裕太は咄嗟に左腕でレバーを思いっきり引き、ジェイカイザーの手に持つ警察機用の盾を上方へと構える。

 放たれた機関砲の弾丸が盾に食い込む確かな感触をレバー越しに感じながらも、カウンターを狙うかのようにショックライフルを連射する。


 その刹那、〈ナイトメア〉は空中で素早くビームカタールを振り回し、飛んでくる電撃弾をビームの刃で弾き、切り払った。

 そのまま落下の勢いを乗せるように、突きの構えを取る〈ナイトメア〉の下からジェイカイザーが背部のバーニアを噴射させて前方へと回避行動を取る。


 回避がやや遅れたのか、弾痕が刻まれた盾にビームカタールの切っ先がかすり、溶断されて断面を赤熱させながら落下する。


 再びジェイブレードを構えるジェイカイザーと、ビームカタールを構える〈ナイトメア〉。

 時が止まったように静止する2機の巨人。

 次にどちらかが動いた時に戦況が動くということは、素人が見ても明らかだった。



    ───Eパートへ続く

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