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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第2話「教習! クロドーベル!」【Hパート 警部補、死す!?】

 【6】


「銀川!」


 警棒の刺さった〈アストロ〉が完全に動かなくなったのを確認した裕太は、急いでジェイカイザーのコックピットから飛び降りてエリィ達のもとへと駆け寄った。

 そこには、仰向けに倒れた大田原とそれを介抱するエリィの姿があった。


「笠本くん! あたしは大丈夫だけど……大田原さんが!」

「うう……ゲホゲホッ!」


 激しく咳き込む大田原に駆け寄り、彼の上半身をゆっくりと起こす裕太。

 大田原はうめき声をはさみながら、裕太の顔を真っ直ぐ見て、口を開き始めた。


「ボウズ……お前、よくやったな。邪魔は入ったが……これで試験は合格ってことにしといてやるよ……。無罪放免だ、おめでとさん……」

「そんなこと言ってる場合ですか! もう喋っちゃダメですよ!」

「へっ……ボウズの目、お前の母さんにそっくりだぜ……うっ! ゲホガハッ!」


 突然、大田原が胸のあたりを抑えながら激しく咳き込み、口から赤い液体を吐き出しうずくまった。

 腕にかかった赤い液体を見て、裕太とエリィは顔を青ざめる。


「大田原さん!?」

「もしかして、血……!?」

「へへ……ボウズがいれば世の中安泰だ……。あとは……頼んだ……ぜ……」


 そう言って、大田原の手は力なく下へと倒れた。


「大田原さーーーん!!」


 大田原との突然の別れに、裕太は絶叫した。



 ※ ※ ※



「ぐー……」

「……は?」

「え? 寝てる……?」


 穏やかな寝息を立てて上下する大田原の胸に、裕太とエリィは思わず目を点にした。

 ぽかんと口を開けて呆けるふたりの元へ、腕に包帯を巻いた照瀬と救急箱を持った富永が呆れたような表情をしながらゆっくりと歩いて来た。


「隊長、また外で寝ちまったのか。おい富永、後で運ぶの手伝えよ」

「はいであります!」

「寝たって……この赤いのは?」


 状況が飲み込めず困惑する裕太は、地面に広がった赤い液体を指差し説明を求める。

 すると富永が大田原の右肩を持ち上げながら自信満々に言った。


「大田原警部補はたんに悩んでいるのであります! 特濃トマトジュースが痰に絡んで血のような色になるのです」

「痰かよっ! 汚ったねえ!」

「いやぁん! さっき袖に引っかかったわよぉ!」


 赤い染みの着いた制服を慌てたように手でこするエリィをよそに、背後からクリアファイルを手に持ったトマスが裕太に近寄り、そのファイルから小さなカードを差し出した。


「合格おめでとう、笠本くん。ほら、これが免許証だよ」

「あ、ありがとう御座いますトマスさん……でしたっけ。って、もう一枚なにかあるみたいですけど……えーと、民間防衛隊証明証?」


 裕太が民間防衛隊証明証を指で摘んでピラピラと扇ぐようにして見せると、照瀬が包帯の巻かれた腕を抑えたまま説明を始めた。


「最近、さっきの『愛国社』のものを始めとしたフレーム犯罪が増えて来ていてな。情けないことに俺たち警察の部隊じゃ対応しきれてないんだ。そこで上層部が、民間のフレーム所有者にも協力してもらおうってのを決めてな。そいつはいわば、フレーム犯罪対応のためにジェイカイザーに乗って戦ってもいい証ってことだな」

「犯罪対応ねぇ……」


 裕太は振り返り、先程倒した〈アストロ〉の方へと視線を動かした。

 ちょうどコックピットハッチをこじ開けられ、操縦していた『愛国社』の構成員が警官たちによって、やや乱暴に連行されているところだった。

 照瀬もその様子を裕太の横で見て、ふぅと軽くため息を吐く。


「ったく、よりによって警察署に殴り込みをかけるとは舐められたもんだ。お前ほどの腕の者が味方になったら頼もしいんだがな」


 照瀬の言葉を聞いて、裕太は自分の母親について思い返していた。

 かつて大田原と共に肩を並べ、治安を守るために〈クロドーベル〉に乗り戦った母の姿。

 砂埃を受けて薄汚れた制服のエリィが裕太の横に立ち、心配そうな視線でじっと裕太の目を見つめる。


「……しょうがねえな。まあ、事件解決に貢献したら報奨金ももらえるらしいからやってやるよ。いいだろ、ジェイカイザー」

『もちろんだ、裕太! あのような悪がこの世に蔓延はびこっているのなら、この正義のマシン戦士、ジェイカイザーは平和のために戦うぞ!』


 携帯電話から響く嬉しそうなジェイカイザーの声に、裕太は自然と笑みが溢れた。

 それに釣られて、横に立っていた照瀬と富永も笑い声を漏らした。


「うふふ! ということはぁ、笠本くんったらあたしを守るために戦ってくれるのねぇ!」

「うーん、まあそうなるな。『愛国社』ってのはヘルヴァニア人を狙ってるらしいし」

「あたしも、キャリーフレームの知識を活かしてあなたのお手伝いをするわ!」

「ちょっ、抱きついて来るな! 離れろって!」


 裕太が突き飛ばすようにエリィを突き放すと、エリィが悲しそうな顔で裕太の顔に視線を合わせるので、裕太はムッとした顔でエリィの着ている制服を指差した。


「あのな銀川、お前自分の服がどうなってるのか忘れたのか?」

「あたしの服……? あっ!」


 エリィはそこでやっと、制服が大田原の痰まみれであることを思い出したようで、顔を手で抑えて顔を真っ赤にした。

 恥ずかしさに悶えるエリィの肩を、救急箱を持ったままの富永がポンと叩く。


「銀川さん、私の着替えでよかったらロッカーにしまってあるので、とりあえずそれを着るであります! 制服は洗濯してあげるであります!」


 富永にそう言われたエリィは黙って頷き、そのまま女同士で一緒に詰め所の方へと歩いていった。

 ぼーっとふたりを見送っていた裕太の首に、照瀬が馴れ馴れしい態度で腕を回す。


「いででっ、照瀬さん何するんですか」

「お前の制服も洗ってやろうと思ってな。お前こそ、自分の服の状態わかってないじゃないか」

「俺の服……? ああっ!」


 裕太はそこで初めて、先程エリィに抱きつかれた時に痰をなすりつけられたことに気づいた。

 真っ赤な痰がべっとりと張り付いた制服。

 ぞわっと、裕太の全身に鳥肌が立った。


『うわっ! ばっちいじゃないか、裕太!』

「銀川のヤロォ~~! 待ちやがれ!」

「あ、おい! 大田原のおっさんを運ぶのを手伝えよ!」


 警察署の敷地に、裕太と照瀬の叫び声がこだました。




─────────────────────────────────────────────────

登場マシン紹介No.2

【クロドーベル】

全高:8.0メートル

重量:5.6トン


 現在日本警察が制式採用している七菱製キャリーフレーム。

 全体的に細目のシルエットだが、肩や脚部などは大型になっている特徴的な体型をしている。

 採用当時は最新機ではあったが、民間機の性能向上に伴い数年で型落ちになってしまっている。

 近接戦においては腰部にマウントしている伸縮製の電磁警棒を用い、突き刺しからの放電で相手キャリーフレームを機能停止させる戦法をとる。

 パトカーのような白と黒の塗装が特徴的で、ひと目で警察の機体とわかるようになっている。

 【次回予告】


 裕太たちのクラスに、転校生がやってきた。

 その転校生は金髪の美少女、金海サツキ。

 念願のフリーの美少女へと裕太の親友・岸辺進次郎がアプローチをかける。

 しかし、サツキにはとんでもない秘密があった。


 次回、ロボもの世界の人々第3話「金色の転校生」


「フ、裕太よ。やっぱり僕は天才だ! 僕はやったぞ!」

「何だ? ついに新しい彼女ができたのか? 今度はどのゲームの何てキャラ?」

「あのな裕太……いくら僕が相手とはいえ少々酷くないか?」

「そうよぉ。岸辺くんだって……岸辺くんだって……やっぱりこないだの新作の娘?」

「いやいやいや、そういうことじゃあない!」

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