第16話「ライバル登場 鮮血の埠頭!」【Fパート 裕太の決意】
【6】
病院から出て、大田原の運転するパトカーに乗せられる裕太。
走り出したパトカーはいくつかの曲がり角を曲がると、やがて見慣れた道へと入り、警察署へと到着した。
パトカーを降りた大田原に案内されて格納庫のひとつに入った裕太は、そこに置かれているものを見て、驚愕した。
「ジェ……ジェイカイザー……!?」
そこにあったのは、片腕が失われ、コックピット部分に大穴が空いたボロボロのジェイカイザー。
裕太の脳裏に、あまりのショックに脳が封印していた光景がフラッシュバックする。
千切れるジェイカイザーの腕、貫かれるコックピット、破片で傷ついた額。
あの〈ナイトメア〉との戦いを思い出し、拳を震わせる裕太に、整備班長のトマスが申し訳無さそうな顔で携帯電話を手渡した。
「すみません、裕太くん。ジェイカイザーがですね……」
「ジェイカイザーがどうしたんですか!? 修理、できます……よね?」
不安な顔で裕太が尋ねると、トマスは悲しげな表情のまま首を横に振った。
「ここまで壊されてしまうと、研究所にあった予備パーツだけでは修復が不可能でして……。その、警察だけの力ではもう修理できないんです」
「そんな……」
予想していたこととはいえ、哀しい回答に裕太はガックリと肩を落とし、両膝をついた。
確かに今まで、警察……というよりは大田原の好意でジェイカイザーの整備・修理をやってもらっていた。
それができたのも、これまでの戦闘ではジェイカイザーは大した損傷を受けず、傷の修復や傷んだ細かいパーツの交換だけで済んでいたからだった。
中破……いや、見ようによっては大破とも言えるほど、損壊した状態での修理が望み薄なのは、頭では理解できていた。
しかし、ジェイカイザーがもう修理不可能という事実は、認めたくなかった。
『裕太……』
携帯電話の中から、ジェイカイザーの声が弱々しく響く。
今まで聞いたことのない相棒の気弱な声に、裕太は思わず涙が流れそうになる。
「おいジェイカイザー! お前が元気なくてどうするんだよ! お前が……!」
『裕太、すまない。私が古いマシーンなばっかりに……』
「……お前は確かに古い機体だったけど、今までやってきたじゃないか!」
『違うのだ。修理できない理由が……』
「……理由?」
一筋の理由が頭をよぎった裕太は、訴えるようにトマスを見つめた。
睨みつけるような視線に我慢できなかったのか、トマスは諦めたように大きくため息を吐く。
「ジェイカイザーが修理できない理由は、今まで作っていた古いパーツの換えがもう無くなってしまったからなんです。なにせ25年ほど前の骨董品パーツばかり使われていたもので、今手に入れるのは不可能に近いんです」
「ってことは、新しい部品に変えられないわけじゃないんですね……?」
「けれど、新しい部品だとお金が……」
お金、という言葉が出た瞬間、裕太は手持ちのカバンの中に手を突っ込んだ。
そして目的の物を取り出すと、見せつけるようにトマスに押し付ける。
「……これは、通帳?」
「ここに、今まで俺がジェイカイザーと稼いだ、500万円が入ってる。これでジェイカイザーを、俺の相棒を修理……いや、〈ナイトメア〉に負けないようにパワーアップしてやってくれ!!」
『しかし……それは裕太の貯金では!?』
「何言ってんだよ! お金ってのは使うために貯めてるんだよ! それが今だってだけだ!」
裕太の言葉を聞いたトマスは、その言葉を待っていましたというように裕太から通帳を受け取り、大きく頷いた。
「わかりました。ではジェイカイザーの修理は、我々におまかせください!」
「頼みますよ、トマスさん! 大田原さん!」
「おうよ、坊主。俺たちとしても、照瀬の敵討ちをしてもらわなきゃならんからな!」
「……あ、でもトマスさん。50万くらいは残していただけると。生活費無くなったら困るし入院費用も怖いので」
裕太の言葉に、トマスはその場でずっこけた。
───Gパートへ続く