第15話「裕太のいない日」【Fパート 熱い人々】
【8】
「ええっ! おね……サツキさんが宇宙人!?」
エリィからの説明を聞いて、綾香は両手を上げてオーバーに驚いた。
強盗を警察に引き渡したエリィたちは、再び喫茶店へと戻り綾香にサツキについての説明をすることにしたのだった。
「宇宙人というか、人じゃないというかぁ……」
「騙すつもりはなかったんです。この姿も、あなたのお姉さんの姿を元にしていて……」
「そ、そんな……!」
瞳を潤わせながら顔の前で合わせた手を震わせる綾香を見て、なんとも言えない空気に包まれるエリィ達。
姉とそっくりだった人物が人間でなく、更には姉の姿を借りた宇宙生命体だったのだから、無理はない。
……とエリィたちは思っていたのだが。
「そんな、宇宙生物が身近にいただなんて感激! 宇宙人ってヘルヴァニア人みたいな人だけじゃなかったんだ! 世界、いや宇宙って広いのね! あ、写真撮っていい!?」
感激した様子でサツキの手を握る綾香に、あっけにとられるエリィと進次郎。
そんな2人のことなど見向きもせずに、綾香はずいっとサツキに顔を近づける。
「今日一日一緒にいてわかったの。やっぱりサツキさんはお姉ちゃんとは違う人だって。でも、サツキさんと知り合えたのは私の人生にとってすごく大事な意味があると思うのよ! そう、これは神様がくれた未知を求める私への出会い!!」
「あ、綾香さんが燃えている……」
「決めた! 私本格的にオカルト部の活動を始める! この世の不思議を解き明かしてやるのよ! 頼もしいメンバーもできたし!」
そう言って、ぐるりとエリィ達に視線を送る綾香。
その目は「これからよろしくお願いしますね」と言葉を発さずともその意志を露わにしていた。
「あっ、いけない! 笠本くんのお夕飯作ってあげなきゃ! それじゃあね!」
「おい銀川さん! 僕らを見捨てる気か!」
「さあサツキさん、進次郎さん! この入部届にサインを……!!」
背後から聞こえる進次郎の悲鳴を背中に受けながら、エリィは逃げるように喫茶店を後にした。
※ ※ ※
「笠本くん、具合はどーお?」
エリィがそっと裕太の部屋の扉を開けると、裕太が咳き込みながらベッドから起き上がった。
顔は熱で赤くなり、彼の辛さが表情ににじみ出ている。
「ずっと横になってたんだけどまだ治らなくてな……」
「お薬もちゃんと飲んでるんだから、すぐに治るわよぉ。ほら、氷枕かえてあげるわね」
「サンキュー……」
裕太が起き上がっている間に、溶けてブヨブヨになった氷枕を冷凍庫から取り出したてのものに入れ替えてあげるエリィ。
そのまま先程キッチンでササッとつくったお粥を手渡し、次に飲む薬を机の上に並べた。
テキパキと看病するエリィの様子を見てか、ジェイカイザーが『ウム』と頷いたような声を上げる。
『なんだかエリィどのは、裕太の奥さんみたいだな!』
「やだぁ、もうジェイカイザーったらぁ何言ってるのよぉ! あたしと笠本くんが夫婦だなんてそんな……うふふ!」
「……言葉とは裏腹にすごく嬉しそうだな銀川」
『私は夫婦とまでは言っていないのだが』
クネクネと動きながら嬉しそうに頬を赤らめるエリィ。
裕太は看病してもらい感謝半分、このような態度を取られて恥ずかし半分といったような複雑な表情をしていた。
───Gパートへ続く