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第14話「メイド・イン・パニック」【Cパート 反ヘルヴァニア演説】

 【3】


 その日の夕方。

 学校を終えた裕太とエリィは、ジュンナを連れて進次郎の家までの道のりを歩いていた。

 泊まり込みでの特訓のために、全員一泊分の着替えを持参している。


『羨ましいぞ裕太。両手に花じゃないか』

「うるせぇ」

「それにしても、岸辺くんのお家って初めて行くわねぇ」

「銀川含め、俺んにはしょっちゅう遊びに来てたくせにな。……どうした、ジュンナ?」


 先程から黙って横をついてきているだけの、メイド服姿のジュンナに振り返りながら裕太が尋ねる。

 すると、ジュンナはショルダーバッグの中から大きめの水筒を取り出し、ふたりに見せつけるようにずいっと掲げた。


「このような場合、お土産を持っていくといいと聞いたので持ってきたのです。けれど、気に入ってもらえるでしょうか。このコールタール」

「……どっから仕入れたか知らんが、100%ありがたがられないから心配しなくていいぞ」

「そうですか……。では一服」


 そう言って、水筒の中身をゴクゴクと飲み始めるジュンナ。

 機械である彼女の動力は謎だが、有機物を分解してエネルギーにしているらしく普段は人間と同じ食事でエネルギーを補給している。

 しかし、このコールタール趣味はエネルギー補給とは関係ない行為のようで、数日前からタール特有の刺激臭に裕太は悩まされている。

 できれば控えてもらいたいのだが、ヘタに嗜好品を禁止して自爆されても厄介なのでやむなく許可しているのが現状だ。


『いよっ、いい飲みっぷり!』

「宴会のおっさんかお前は。だいたい、お前がはやし立てるからジュンナが調子に乗っているんじゃないのか?」

「ご心配なく、ご主人様。私はジェイカイザーのことなど眼中にありませんので」

『はうっ!?』


 ジュンナから辛辣な扱いを受けたジェイカイザーが勝手に落ち込んでいる間に、裕太は大通りを挟んだ反対側の歩道に人だかりができていることに気づいた。

 足を止め、ガードレールに足をかけながら向こう側を遠目にのぞき見てみる。

 群衆でほとんど隠れていて見えなかったが、キャリーフレームのような大型の機械の上で、男がメガホンを片手に何かを叫んでいた。


「どうしたの、笠本くん?」

「いや。向こうにキャリーフレームっぽいのがあってな。その上で誰かが叫んでるみたいだ」

「キャリーフレーム? 見たところあの形状から……あれはJIO社製の山岳調査用機体〈バルバロ〉ねぇ」

「……相変わらずよく分かるな。てっぺんしか見えてないじゃないか」

『あの男が何を話しているのか私が集音してみよう!』

「……毎回思うがお前、俺の携帯に機能を勝手に追加しすぎだろ」


 そうツッコミを入れながらも、裕太はジェイカイザーの入っている携帯電話をくだんの方向へと向けた。

 すると、ガヤガヤという観衆のざわめきまじりながらも、キャリーフレームの上に立っている男の声がにわかに聞こえてきた。


「諸君! この星におけるヘルヴァニア人の人口は増加の一途を辿っている! このままではやがて、地球そのものがヘルヴァニア人に支配されてしまう! 我々はその流れに一石を投じるべく──」


 そこまで聞いて、裕太はさっと携帯電話で大田原にメールを送り、そのままポケットにしまった。

 そして、首を傾げてハテナマークを浮かべるエリィの腕を掴み、引っ張るようにしてその場を去る。


「ちょっとぉ、笠本くん。何だったの?」

「愛国社の街頭デモだった。一応、大田原さんに連絡は入れたけど、銀川が見つかったら面倒なことになるし、さっさと進次郎の家に行くぞ」

「かしこまりました、ご主人様」



    ───Dパートへ続く

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