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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第1話「ジェイカイザー起動!」【Aパート プロローグ】


 【プロローグ】


 それは、突然の出来事であった。

 眼下には、モヤの掛かった薄茶色の球体にも見える木星と、その周辺にいくつかのスペースコロニーが浮かぶ宇宙空間。

 いつものようにコロニー周囲を巡回警備する……それだけで終わる任務のはずだった。


 激しい光とともに、突然前方を航行していた戦艦が1隻、左舷さげんから爆発を起こし、離れていく。


「状況を報告しろ!」


 宇宙戦艦〈ジュピターイレブン〉の艦長は艦長椅子から立ち上がり、ブリッジクルーの方へと上半身ごと顔を向け、つばが飛ぶのもためらわずに叫んだ。


「〈ジュピターテン〉、大破!」

「宇宙海賊の攻撃か!?」


 木星の周回軌道よりも内側ならば、宇宙海賊の悪行などは珍しいことでもない。

 艦長は、ヤンチャを起こした海賊の流れ弾が、偶然にも〈ジュピターテン〉に直撃した……などというありふれた報告であることを祈った。

 しかし、ブリッジクルーから返ってきたのは艦長が期待していた答えとは異なる「違います!」という言葉。


「明らかに我が方へ向け放たれた攻撃です!」


 艦長はゴクリと喉を鳴らし、ブリッジクルーの報告に全神経を集中させた。


「攻撃を仕掛けた敵機体の所属は不明! 戦闘機とおぼしき敵機体の外見は、今までのどのデータにも該当しません!」


 レーダーに増えていく光点を数えながら、索敵担当のブリッジクルーが艦長に叫ぶ。


「敵の数は10……20……まだ増えていきます!」


 ジュピターイレブンの艦長は、ただ唖然としながらモニターに写った『敵』を見つめた。

 それは、横にした黒く巨大な卵状の物体から、L字に折れ曲がったような形状の機銃が装備されている……。


「未知の……敵だというのか……!?」

「艦長! 指示を!」


 見たことのない敵の姿を見つめたまま、茫然自失しかけていた艦長は、ブリッジクルーの呼びかけで我に返った。

 そして艦長は、親指が反り返るほど通信スイッチを押し込み、そして叫び気味に指示を飛ばす。


「砲撃手、対空迎撃!! キャリーフレーム全機に次ぐ! 迎撃陣形を敷け! 繰り返す! 迎撃陣形を敷くんだ!!」


 ジュピターイレブンの周辺を飛行していた10機ほどのロボット兵器──8メートルほどの大きさの人型機動兵器・キャリーフレーム〈アドラー〉──は艦長の命令を受け、瞬く間に攻めこんでくる敵を迎え撃つのに適した編隊を組み、一機一機が手に持ったビームライフルを構えた。

 レーダーの光点を見るに、ジュピターテンを攻撃した『敵』はヒット・アンド・アウェイの手本を見せるかのように再びこの宙域へと接近してきている。


 艦長の手から、じっとりと汗が滲み出た。

 額から垂れる汗を周囲に気取られることの無いよう、目だけを動かしてあたりを見回し、緊張しているのは自分だけではないことに気づく。

 なにしろ、本格的な戦闘なんて、一度も経験したことがないのだ。

 30年も前に起こった地球軍とコロニー連合軍による宇宙大戦が終わってこの方、宇宙海賊との小競り合いを除いては、まともな戦闘は一度も起こっていない。

 自分にとっても彼らにとっても未知の敵とは、今までに相手をした名の有る宇宙海賊よりもずっと、ずっと恐ろしい相手であった。


 艦長と、クルーたちの強張った顔を照らすように、ジュピターテンの対空機関砲が弾丸を発射する光だけが、艦橋の外で点滅を繰り返していた。


「うわあああ!」


 突然、編隊を組んでいた1機の〈アドラー〉のパイロットから悲痛な叫びが、通信越しに聞こえてきた。

 その〈アドラー〉は大きな爆発を右腕から起こし、編隊を離れるように後ろへと下がる。


「う、撃て! 撃ち落とせ!! 主砲一斉射!」


 〈アドラー〉隊は艦長からの号令を受け、『敵』の方向へとビームライフルを発射した。

 それに続くように、〈ジュピターイレブン〉の艦首に装備された主砲が柱のような太いビームを放ち、発射の振動が艦橋ブリッジにも伝わってくる。


 『敵』へと放たれた無数のビーム弾は、数機の『敵』を巻き込み、爆発を起こした。

 その直後、『敵』はお返しと言わんばかりに彼らへ向けて容赦なく弾幕を浴びせてくる。

 次々と〈アドラー〉に『敵』の放った弾丸が命中し、爆発を起こし、1機、また1機と戦闘不能になっていった。


 ※ ※ ※


「キャリーフレーム隊、ぜ……全滅しました!!」


 脂汗を垂らしながら、ブリッジクルーが叫んだ。

 艦長は、未知の敵への苛立たしさをぶつけるがごとく艦長椅子の肘置きを殴りつけ、押し殺すように声を漏らす。


「一体……なんだというのだ……!?」


 そのとき、艦長の眼前にあるモニターが、ザザ……とノイズを発し、やがて見知らぬ男の顔を映し出した。


「我が名はヘルヴァニア銀河帝国・三軍将が一人……キーザ・ナヤッチャーである!! 辺境銀河に住む地球人よ、我々の前にひれ伏すがいい! フハハハハハ!」


 キーザ、と名乗りを終えた男の顔がモニターから消え、同時にジュピターテンのブリッジが大きな揺れを起こす。


「ヘルヴァニア……銀河帝国だと……!?」


 ジュピターテンの艦長は、航行不能になりつつある艦の中で、力なくぽつりと呟いた。


「なんで……日本語を話しているんだ……?」



挿絵(By みてみん)



    ───Bパートへ続く

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