『三題噺』 その二
女の子の男喋りが難しいです。
お題『門/ベーグルパン/残業』
ここは地獄へ通じる門。
私はそこで双子の弟と門番を勤める鬼──なのだが・・・・・・。
「あのバカはどこいったんだ? 大切なお勤めを放り出して」
弟は私と違い、仕事に誇りや責任感を持ち合わせていないようで、いつもフラフラしている。
今は恐らく、下界にいるのだろう。
ここ数十年で地上の食べ物が格段に美味しくなったと言っていたから。
「ねぇちゃーん。ただいま」
そうこうしてると、弟が帰ってきた。
鬼の角は上手く隠しているが、出で立ちは着流しに草履。
下界に行く時はもうそれじゃ目立つと行ってるのに。この弟は現代風の服は肌に合わないと、頑なに自分の服装を変えようとしない。
「こら! お前はまたサボって! いい加減門番としての自覚を──むぐっ!」
説教を使用としたら、急に口に柔らかくて、なんかモチモチしたものを突っ込まれた。
甘くてほんのり苦味のあるそれは、輪の形をしている。
一瞬、弟が以前買ってきたドーナツというものかと思ったが、それよりは太くて、食感も違う。
「もぐもぐ」
「美味しい?」
「美味しいけど、これ何?」
気になって訊ねると、弟はコンビニ袋からもうひとつ同じものを出した。
「ベーグルパンっていうんだって。コンビニで見つけて、美味しそうだから、買っちゃった。チーズとかレーズンとか色々あるけど、このチョコのが一番美味しいんだ」
「へぇー。って、そうじゃなくて! あのねぇ、別に下界に行くのはいいんだ! 今時誰でもいってるからね! 問題は勤務時間に行くことなんだよ!」
「いいじゃん。本能のままに生きてこその鬼じゃーん!」
どこまでも我が道を行く弟だった。
「良くない! おかげで私一人でこの門回さなきゃならないんだぞ! 地獄行きの魂なんて、割りと多いんだから!」
「じゃあ、今日も残業だねぇ。やだなぁ」
「お前が言うな────!!!」
ここは地獄の門。
双子の姉弟鬼が番人をしている。
仕事が遅いことで定評のあるここは、今日もかしましい。
門で思わず鬼門を思い浮かべた結果、鬼の話になりました。でも、需要ない。