第二話
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溢れる様に地上を流れる黒い雲の中に、ぽっかりと半球状に開いた空間があった。
道は、どうやらそこに繋がっているらしく、その中心に向かって伸びている。
「やっと着いたか。」
男は誰に言うでも無しにそう呟いた。
そして、その空間の真ん中に存在する"ホーム"であるはずの建物の在り様を見て、怪訝そうな顔をした。
「これが"ホーム"…か?どう見ても集団住居には見えないぞ。」
その建物は、家と呼ぶにもあまりにも小さなものだった。
後に付いてきた女も、それを見ると目をぱちくりさせた。
どうやら男と全く同じ印象を受けたようだ。
男は取り敢えず、それまで装備していた布製のマスクを顎の下まで下げ、その墓標の様な家のインターホンに手を伸ばした。
ボタンを押す。
…しかし、呼び鈴が鳴っている気配は無い。
男は苛立ちを露にし、背負っていた武器の大剣を 神経質に取り出しては眺め、しまい、しまっては取り出してまた眺めた。
女はその様子に危険を察知し、とにかく一旦ここを離れることを促そうとした
―その瞬間。
ガチャリという音を立てて扉が開いた。
そこには一人の老人の姿があった。
男は物騒な武器をしまうよりも先に、外してあったマスクを再び装着した。
明らかに不自然な動作だったにも拘わらず、老人は気にとめる様子も無く、
「お待たせしてしまって申し訳無い。何分、呼び鈴が故障しておったものでな。」
と、そう言って謝罪の意を表すかの様に ゆっくりと頭を下げた。
「いえ、驚きはしましたが…別段気にしてはいませんよ。出迎え、感謝します。」
男はそう言うと、老人に にっこりと微笑みかけた。
自分に向けられるのとは真逆の対応。
女はその様子を、少し悲しげに見つめている。
「リーフが貴方方の来訪に気づかなければ、とんだ失礼をしてしまうことになっていた。」
老人は先ほどと同じ調子で、ゆっくりとそう言った。
「なら、そのリーフという方に感謝ですね。」
男も相変わらず、愛想良く といった感じで接している。
すると不意に、老人の背後から緑色の影が飛び出し、女に近付いた。
男はとっさに持っていた武器を構える。
しかし、
「うわぁ!本当に女性の中間者さんだ!!」
という明るい声に、やがてゆっくりと武器を下ろした。
「リーフ。お客様に粗相をするでないぞ。」
老人がそう言うのと同じくして、男は
「精霊か…」
と鈍く低い声でそう呟いた。
リーフという名の精霊は、女の両手を握ってぶんぶんと振り回している。
「さぁさぁ!どうぞ中に入ってくださいよ!」
「あ…ありがとう。」
女は戸惑いながらも、リーフに手を引かれて家の中へと入って行った。
老人はその様子をにこやかに眺めていたが、やがて
「さぁ、貴方も中へ。」
と男に言い残し、自らも家の中へと入った。
一人残された男は手に持っていた武器を地面に勢い良く突き刺すと、
「ちっ」
と、大きく舌を鳴らした。
第二話はここで完結…でも切りが良いですよね?(自問自答)