第一話
当作品『Dawn of Dusk』に関する全ての権利は、作者である汞談にあります。
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一人でも多くの方に、この作品を楽しんで頂けたらと思います。
その為にも努力は惜しまないつもりですので、どうぞ応援宜しくお願い致します。
不気味に輝く茜空の下
地上を流れる黒雲の間から 一人の男が現れた
男は暫く歩を進めていたが、やがて道の分岐点に辿り着くと そこに設置される標識に虚ろげな眼差しを向けた。
「ふぅ、もうじきか。」
標識の下には丸い形をした計器がある。
男はその針が目まぐるしく動き回るのを見て、俄かにその表情を歪めた。
「ちっ…属性がころころ変わりやがる。」
そう言って立ち上がると、男は目線を変えずに再び口を開いた。
「おい、ノロマ。ちゃんと付いてきてるだろうな?」
その言葉に答えるかのように、男の背後から一人の女が現れた。
「もうすぐ着くの?」
男は再び歩き出した。
長い沈黙の後に男の口から出たのは、女への答ではなかった。
「とんだ場所にあったもんだなぁ…"ホーム"って場所はよ。ま、"形成"したお前に乗れりゃぁこんなにくたびれることも無かったんだがな。」
その言葉に、女は少し落ち着かない様子で
「ここはストリームが強すぎる。」
とだけ言った。
そして少し考え込む様な間を置いてから、再び言葉を繋げた。
「ここで"形成"すればすぐに消耗してしまうし、それに第一貴方は"精霊"を…」
「言い訳か?」
男はそう言って女の言葉を遮った。
「情け無ぇ。ほれ、あそこ見てみろよ。」
女は男が顎で指し示した方向を見た。
二人が進んだ道とは別の分かれ道の先の洞窟。
入口前には一人の人間と 女と同じ、"中間者"が居た。
その"中間者"は既に"形成"を終え、颯爽とした馬の姿をしている。
やがて人間と"中間者"は洞窟の奥へと消えて行った。
「このストリームの中でだって、ああやって形保ってたぜ?それに、お前の"型"なんかよりよっぽど強そうだったじゃねぇか。」
男の言葉に、女はただ押し黙ったまま"中間者"の消えていった先をぼんやりと見つめていた。
男も同じく"中間者"の消えた先を見つめていたが、女とは違い、その表情には嫌悪の様相が表れていた。
「フン…化け物め」
そう呟いて歩き出した男の後を、女も やがて追いかけ始めた。
一話目…と言うよりプロローグと表現した方が適切かもしれません。
この物語は私が見た夢が素になっています。
そして、このシーンはその夢の中で私が記憶している内の一番最初の部分。
物語の始まりとして、何かを暗示する。
それが達成出来ていればと思います。