第三話 出会い
主人公は2人です。
「君は日本って国からここに転移現象を起こして来たのか、ご苦労さまだね。」
「あっはい……そうです。」
今現在、彼の小屋の中に人が2人。そこで1人はベッドに腰を掛けて肘をついて、まるで呼吸をするかの様に決まった様なセリフを吐く。しかしその顔には悪という能面が付いてるかのような表情を浮かべている。
「それで、そこに戻るための手段を見つけるためにここに来た……か。そして餓死状態になりかかってる時にこの小屋を見つけたと……ご苦労さまだね。」
「あの……なんでさっきからニヤケてるんですか?」
髪と目が同じ黒色の少女は少し怯えながら、不気味な挙動をとる彼に質問をぶつける。その目には強い意思が宿っていた。
「あぁそうだね。初めて人に会ったものだから嬉しくて。」
そういいながらその口角は更に吊り上がる。然し身体は興味が無いような形のまま、全く動かない。
「初めて?それはどういう…っていうか貴方はそもそも何者ですか?」
彼は自分を助けてくれるのか、最も大事で聞き辛いことを彼女は問う。
その問いに返ってきた答えは彼女の求めていた答えではなかった。
彼は少し息を吸い込み、初めてその身体を動かす。膝についていた肘を上げ、人差し指を立てて。
「あぁそうだね。その問いに答えは無いよ。強いて言うなら僕にはそもそも存在が無い。」
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状況を少し戻すと。
「人間?」
彼は顎に手を当て再度自分に確認するために質問を放つ。その質問にはまだ意識がない彼女には答えることは出来なかったが。
「ど、どうしよう。これは緊急事態だ!!急いで助けないと!!」
彼女を担ぎ上げ彼の家に入り、ベッドに寝かせる。命はまだ手放してはいないようだが、事態はあんまり悠長してる場合ではない。
「餓死に…なりかかってるね。ご飯!!どんなのが好きなんだろ?」
その時の彼の顔には、一瞬表情が無かった。
そのまま少女の頭を見続け、あたかも探し物を見つけたような顔で彼はなるほど!っと手を叩く。
「日本から来たのか!!好きな食べ物は…オヤコドンか。まぁ創れるかな。」
その瞬間少女の目は見開く。とても華奢な身体からは想像もつかないスピードで上半身を起こすと叫んだ。
「親子丼が食べたいの!」
「……っぷっくっくっく。それなら少し話そうか。そこから降りてくれるかな?」
彼は少女を促すと、今までの立ち位置を入れ替え少女はベットの横の床の上に体育座り。彼はベッドに腰を掛けて肘をつきこう言った。
「君は日本って国からここに転移現象を起こして来たのか、ご苦労さまだね。」
世界を変えた1人の少女の話。