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ミカエルは、左右が違う慣れない翼の飛行に苦しんでいた。

容赦なく降り注ぐ雨はバランスを狂わせ、視界を狭める。

金の翼は徐々に零れて全体の3分の1が消え、気を抜くと落っこちそうだ。

だが、そんな事より彼はジェシカが心配だった。早く彼女を見つけなければ・・・

「!!」

いた!赤い屋根の家がそうだ。恐怖の波動がここまで届く。

あまりの負の波動に体がバラバラになりそうだった。それだけ彼女が怯えているという事だ。

ミカエルは降り立つと急いで中に入った。部屋は水に浸かり家具が浮いていた。

ジェシカは?

見渡すと、屋根裏へ行く梯子が降りている。

そうか、屋根裏か。急いで登るとジェシカは隅で震えていた。

もしかすると、ここも危ないかもしれない。水はもうそこまで迫っている。

ミカエルの声は聞こえない。だが集中すれば潜在意識に語ることはできる。

“狭い屋根裏から、屋根の上に”

何度か繰り返すうちに届いたようだ。そう、ゆっくり出ておいで。

ジェシカは雨に打たれブルブル震えた。手はかじかみ、屋根に捕まっているのに必死だった。

「怖い。」

ジェシカは今にも泣きそうだ。

「誰か、助けて」

震える声が雨に消される。

“君は助かる”

ミカエルは励ました。確信はない。でも心を挫いてはすべて終わりだ。

「助けて・・・」

“助かる!”

「お父さん・・・お母さん・・・助けて」

“助かる!君は助かるから!・・・だから信じて・・・希望を信じて・・・”

「会いたい」

“会えるさ”

ミカエルは、両方の翼で彼女を抱きしめるように包み込んだ。

“会えるさ・・・絶対。”

ジェシカは唇が紫色に変わってきている。体温が奪われて、もう気力の勝負だ。

“知ってるか?ジェシカ・・・奇跡は諦めない人だけが起すことができるんだよ”

優しく微笑むミカエル。もちろん、ジェシカからは姿も声も聞こえない。

その時だった。爆音がし、チカチカと光が差した。どうやらようやくレスキューのヘリが来たようだ。

“ようやくか・・・”ミカエルはほっと、一息ついた。

その瞬間、気が緩んだのか、体がバランスを崩しミカエルは濁流の中に落ちてしまった。

金の翼はもうほとんど無くなり、羽ばたく事が出来ない。それどころか、流れが速すぎて溺れそうだ。

ミカエルは何か怪しいと感じだ。普段なら流れに逆らわずに身を委ねるとここまでは沈まない。

川底に水様性の魔物が潜んでいた。

ミカエルの手や足や翼を水の糸で絡めとる。

く・・・苦しい・・。

ミカエルは水中でもがいた。

「お前のような下っ端天使は私が食ってやる。」

魔物は、ミカエルが弱り沈んでくるのを待っている。

もう・・・だめなのかな・・・。

残っていた金の羽の一部が溶けてミカエルを包んだ。


ジェシカの顔が浮かんだ。

今の僕は数分前のジェシカだ。

「助けて」

その声に僕はなんと答えた?

そう、“助かる。”


ー・・・希望を・・・信じて・・・ー


だったよな。自分で言って忘れるなっての。

ミカエルは目を見開いた。気力を貯めると一気に縛を解く。

上へ・・・上へ!!

「逃がしはしないよ!」

魔物は、再び水の糸をミカエルへ巻きつけようとした。

水面が見え、片方の手が水上の空を切る。

その手をガシッと何者かに摑まれた。

そして勢いよくミカエルを水面の上へ引っ張り上げた。

「げほっ、げほっ」

「大丈夫か?片翼君!」

見上げると大天使が腕を掴んでくれていた。

「水中・・・げっほ。何か・・・いるみたいです・・・」

大天使は目を細めるとうむ、と頷いた。

その顔は今まで見たことがないくらい怖かった。

大天使は息を吸い込むと、

「はぁぁぁぁぁ!」

気合一発、水中にめがけ光弾をぶつける。

魔物は断末魔の声を残し光に浄化された。

雨は止んだ。

「水魔の仕業だったんですね。」

片翼に戻ったミカエルは呟いた。

「そのようだね。」

大天使は朝日を浴び一夜明けた街を見つめる。

「そういえば、どうして僕の状況がわかったんです?」

「あぁ。」

大天使は、花のようにふんわり笑った。

天界の雲の上では、ゲートキーパーは葉巻をふかしながら呟いた。

「間一髪に合ったか、俺に感謝しろよ。片翼。」



おわーっっ

終らなかった・・・。終わる終わる詐欺だよ!こりゃ・・・

次こそ、終わるハズ?


癒し系マイクの出番なかった・・・

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