命連寺再建作業
またもや最後の方が無理矢理です。
学習しないね(笑)
少しでも楽しんでいただければと思います。
「・・・なんじゃあこりゃあ」
どこかの刑事が彷彿とされる台詞を言いながら、小さな賢将ナズーリンは目の前に広がる光景に呆然としていた。
彼女から少し離れたところでうんうん唸っている入道使い、雲居一輪と正体不明の具現、封獣ぬえ。
魂が抜けたようになっている、毘沙門天(の弟子)寅丸星と突っ伏している船幽霊、村紗水蜜。
更に、1人すやすやと眠り続けている、人妖平等主義の僧侶、聖白蓮。
そして。
柱は折れ、屋根に穴が開き、床が黒コゲになっている、完全に崩落した命蓮寺。
もう一度全てを見直したナズーリンは、再び
「なんじゃあこりゃあ・・・」
そう呟かざるを得なかった。
「なるほど・・・あいわかった」
「あの・・・判ったのだったら頭にダウジングロッド当てるのやめてくれませんでしょうか二日酔いの頭に響きますみませんいたいいたいたい」
「元はといえばご主人のミスのせいなのだろう?ならば多少は痛い目にね」
「すみませんごめんなさい許してくださいなんでもしますから!」
「ん?今なんでも」
「やめんかい」
危ういところでなんとか復活した水蜜がナズーリンの後頭部にチョップをかます。
ナズーリンは「うぎゃ」と言いながら思わずロッドを持つ手に力を込めてしまったので、星が更に苦しい目にあったのは気付いていないようだが。
「痛いなぁ・・・」
「私のほうが」
「話しややこしくなるから星は黙ってて」
ぴしゃり、と言われ星は痛む頭を押さえながら縮こまってしまった。
そんな彼女を余所に、ナズーリンは別の意味で痛む頭を押さえため息を零す。
「それにしても・・・まさか聖が酒を呑むとこうなるとは」
「うん。わたしもまさかこうなるとは思ってなかった」
そう言って、2人は再び目の前に広がるズタボロの命蓮寺を見る。
何故命連寺がここまでボロボロになってしまったのか。
それは、白蓮の弟子の妖怪がこっそり持ってきた酒が元凶であった。
その弟子は夜、白蓮たちに隠れてあろうことか命連寺で酒を呑んでいたのだが、その場面をたまたま星が発見。
すぐに酒を取り上げ弟子に厳しく言いつけた、までは良かったのだが。
その弟子が呑みかけの酒を台所に置いてから説教をしていたところ、たまさか白蓮がそれを発見。
そのままその酒を処分したかと思いきや、白蓮はその呑みかけの酒を間違えて呑んでしまったというのだ。
弟子は万が一見つかっても別の飲み物と言い張るために、一升瓶からはラベルを剥がし、中身も透明な酒にしていた。
それが仇となってしまった。
酒を呑んだことのない、というより宗教の関係上酒を絶対呑まない白蓮はそれが酒だとも気付かず、どんどんと呑み進め。
すぐに酔っ払い、もの凄い絡み酒になってしまって。
「あとはどこからか取り出した酒をみんなに呑ませ呑みまくって、大暴れしてこうなった、って感じ」
「あぁ・・・うん。それは災難だったな・・・」
目から光沢が消えた2人が乾いた笑いを零していると。
「あーいてー・・・ってかさ、これ、どうすんの?」
グロッキー状態だったぬえが復活したらしく、疑問をぶつけてくる。
「これ・・・?」
「いや、命連寺の片付け」
「・・・・・・その現実から目を背けていたんだ。頼む、現実に戻さないでくれ・・・!」
「あ・・・うん。ごめん」
ナズーリンの本気の目に気おされ、ぬえは思わず謝ってしまった。
まぁ現実から目を逸らしたくもなるわなー、と水蜜はこっそり同意しているのは誰にも気付けなかったようだが。
いい加減このままというわけにもいくまい、とようやく復活した一輪に言われ、全員は片付け作業に入った。
だが最初に行ったのは、命蓮寺の完全な解体。
大黒柱も傷つき、屋根もほとんど落ちている以上、修復ではなく再建のほうが手っ取り早いと結論付けた結果である。
弾幕と拳で命連寺を完全に壊し、瓦礫を退けてサラ地にする。
ここまで三時間。
「ぐ・・・僅か五人では時間がかかりすぎる・・・」
「というか聖はいつまで寝てるのよ!?」
未だ目を覚まさず幸せそうな顔をして眠っている白蓮に対して、一輪が思わずぼやく。
だがそれはナズーリンも同様で、いっそ白蓮を蹴り起こそうか、とまで思ったほどである。
そんなことをすれば後が怖いのでやらないが。
「うぅ・・・頭痛い・・・」
「頭がー割れるー」
「なら静かに作業しないか?」
ぐちぐち言いながら作業をしている星とぬえに、ナズーリンは苛立ちを隠さずに言い放った。
2人はむっとしながらも言われたとおり黙って作業を続ける。
更に二時間後、ようやっと瓦礫を取り除き終え、次は。
「・・・次、どうすればいいんだろ?」
ぬえのこの一言で。
彼女らの作業は終わってしまった。
「・・・どうしたものか」
「とりあえず測量して木材集めて家具買い揃えて・・・とても一日じゃ無理」
「お手上げね」
一輪が手を上げ、水蜜は頭を抱える。
星は昼を過ぎても寝ている白蓮になんとか見つけた無傷の毛布をかけた後襲ってきた口からハウアーユー感と格闘中。
ぬえもダメージが抜けきっておらずナズーリンの隣でスカートであることを気にせず膝を立てて寝転がっている。
「ネズミたちを使っても・・・一日じゃとてもじゃないが不可能だね」
ナズーリンは自分の意のままにネズミを操る事が出来る。
がしかし、それをもってしても一日で全てのことを終えるのはどう頑張っても不可能。
それだけははっきりしていた。
「てか、無理に今日中にどうにかする必要は無いんじゃない?」
一輪が前向きな発言をするが。
「聖がこの状況を知ったら・・・自害で済めばいいけど」
「それは済んでるって言わないよね!?」
水蜜が後ろ向きな発言をして、雰囲気はますます悪くなる一方だった。
ナズーリンは首にかけてあったペンデュラムを右手で弄りながら現実逃避をしていた。
(万事休す、か。せめて誰か来てくれれば少しは・・・いや、無いか)
心の中でそうあって欲しいことを思って、しかしすぐにそれを否定する。
でも。
まさかその願望が現実になるとは、流石に思っていなかった。
「なんか変だと思ったら、寺無くなってるわね」
「なんだ?龍でも出て暴れたのか?」
「人里でなんか噂されていたから来てみたら・・・これは酷い」
「巫女に魔法使いに・・・庭師か」
「その扱いぞんざい過ぎませんかねぇ?」
突如空からやってきた三人の少女、博麗霊夢、霧雨魔理沙、そして魂魄妖夢。
予想外の来客に命蓮寺勢は驚いていたが、ナズーリンはそんなことをおくびにも出さず来客者に声をかける。
「どうしたんだい?見ての通りの有様だからお茶も出せないのだけど」
「いや、妖夢が言ったとおり人里で噂になってたから見に来たんだけど」
どうやら人里で噂になっているらしい。
それもそうか、と内心納得していると魔理沙が急に話に割り込んできた。
「それで、どうしてこうなったんだ?」
「それはね・・・」
かくかくしかじかいあいあくとぅるふ
「何だ今のは・・・?」
「何言ってるんですか?」
妖夢が何か言ってきたがとりあえずスルーする。
「ふーん・・・あの僧侶がねぇ」
「全く困ったものだよ」
ははは、と苦笑するナズーリンに、霊夢がいきなり言った。
「ねぇ。片付けとか手伝おっか?」
「!?」
その場に居た全員がその言葉に驚愕した。
あの博麗霊夢が。面倒臭がり巫女が。妖怪退治に快感を感じている暴力巫女が。
まさか妖怪寺と呼ばれている命連寺の修繕に手を貸すなどと、自ら言うなど、誰も予測していなかった。
「どうしたんだ霊夢!?なんか変な雑草でも食ったのか!?」
「そうですよ霊夢さん!あ、もしかして前食べたあのキノコのせいでは!?」
「何を見返りに要求するつもりなの!?金か!?金なのか!?」
「ありえん・・・あの巫女が・・・」
「ちょ、巫女どうしたのよ!?ハッ、まさか偽者!?」
「えぇい全員そこに直れぃ!!」
ピチューン
「すみませんでした。是非ご尽力お願いいたします」
深々と土下座しながら霊夢に助力を請う命連寺勢がそこに出来上がった。
その後、霊夢は魔理沙を連れて飛び去っていった。
別に帰ったわけではなく、色んなところに助力を求めに(もとい脅迫しに)行ったのである。
その行為が功を制し、紅魔館や妖怪の山などから人員がやってきた。
更には鬼の伊吹萃香も連れてこられ、力仕事をやらされるはめに。
そんなこんなで気が付けば天狗や河童、人里からの人間などを含め百人近くが命連寺に集結していた。
「ちょっと巫女が動けばこうなるのか・・・」
思わず、といった感じに呟く。
そのまま、霊夢とナズーリンの指示のもと、総出で命連寺再建作業が開始された。
天狗たちが測量をし、妖夢が木材を切り、萃香が分裂して材料を運び、人間と河童が建設をする。
総勢百名、しかも技術屋河童集団が十三名も居るおかげで、とんとん拍子に再建が進み。
最初に片づけを始めてから十二時間後。
夜も大分更けて、遂に、新命蓮寺が完成したのである。
「はー、疲れた・・・」
「酒~」
「それじゃ皆さん、今度取材引き受けてくださいね!」
「それじゃお邪魔しましたー」
ぞろぞろと作業に携わった人妖が帰路につく。
ナズーリンと水蜜は彼女らを見送っていた。
やがて彼女らの姿が見えなくなったところで、ふと水蜜が呟いた。
「なんか、さっきの作業の時さ」
「うん」
「人と妖怪が手を取り合ってたじゃん?」
「うん」
「・・・あんな形だったけどさ、人と妖怪ってやっぱ仲良く出来るんだね」
「・・・そうだな。うん。仲良くできるはずだよ。だって聖が、みんなが頑張っているんだからな」
そう言って、ナズーリンは新しくなった命連寺に向かって歩き始めた。
水蜜は少し遅れてナズーリンの跡について行った。
やっと元気になった星やぬえ、一輪が、そんな2人を出迎える。
「さぁ、お腹空きましたし、晩御飯にしましょう」
「お風呂も沸かしたよ」
「へっへー、今日は珍しく家事手伝ったんだー」
一度は関係が悪くなっていたのに、すぐにこれだ。
やっぱり、人と妖怪は共存できる。
ナズーリンは、そう確信した。
おまけ。
白蓮「ふあーあ・・・あれ?今何時?」
みんな「やっと起きたんかい!!」
はいどうも。もやしです。
次はもっと時間に余裕があるときに書こうと思います。
今回は命連寺メンバーでした。
最初はにこやかに笑いながら後ろに修羅が見えるナズーリンさんとかも描写したかったんですが、何時の間にか消滅していたという・・・
THE☆無計画、がバレバレですなwww
それではまた次回です。