ミスティアの屋台
一回別の話を書いていたのを、どうにも書けなかったので全部消した後に生まれた話です。
あいもかわらずgdgd。しかもあんまふざけられなかった。反省。
それでもよければ、お楽しみくださいませ。
ミスティア・ローレライの屋台というものを知っているだろうか。
夜雀の妖怪である彼女が経営する屋台は、彼女自身人間との友好度が低いせいで一般人には近寄りがたい(道中で自分が妖怪の料理にされる覚悟がある人や強い人は別)店なのだが・・・
「あっはははははは!」
「おう女将さん!酒、追加たのめっか!?」
「はい、承りました!」
聞こえる声は、何故か一般人のもの。
確かに客の中にはそれなりにガタイのいい中年が居るが、それだけでこの屋台を訪れよう、なんてことにはならないはずである。
しかも、体格がひょろひょろなのが居ればなおさらである。
それでも、今日は普通の人間がこの屋台に来ているのである。
その理由は―――
「あーくっそ、うまそーに呑みやがって・・・」
「仕方ないだろう。ここから見て美味そうに見える料理と酒だ、堪能するなという方が不可能だろうよ」
白髪赤眼の少女、藤原妹紅と、銀髪赤眼の少女、上白沢慧音。
彼女ら二人が、かなり人里に近づけた屋台と人里の間の僅かな道を警備しているからである。
そもそも、なぜこのようなことになったのだろうか。
言いだしっぺは、意外にも慧音であった。
ある日、人里に買い物に来ていた魔理沙と会った慧音は、魔理沙からミスティアの屋台のことを聞いたのである。
その話を聞いて、その旨い酒と料理をどうにも味わいたくなってしまった慧音は、運良く人里から近くの道を屋台を牽いて歩いていたミスティアを発見。
早速食事を、と思ったのだが。
「あー、今はどこで営業するか場所を探してるからちょっと無理かなー。まだ仕込みも万全じゃないしねー」
とのことで、まずお預けの苦々しさを味わう羽目になった。
しかしどうしても諦めきれない慧音は、そこでミスティアに交渉することに決めた。
内容は、屋台をやる場所を提供する代わりに自分の分を残しておいてもらう、というもの。
これにミスティアは迷うことなく了解した。
内心、「よっしゃあああああひひひひ!」とトチ狂った慧音であった。
が。世の中そう上手くいくことなんてそうそうないので。
まず、人里の中で屋台を開くのは不可能。これは、ミスティアが人間との友好度が低い(とされている)妖怪であること、そして他の店の営業妨害になりかねないという理由である。
場所については、人里に出来るだけ近く、それで屋台を開けるだけのスペースがある場所を見つけることでクリアした。営業云々は、毎日ではなく週1で話をつけた(ここまで決めるのに約3時間)。
次に、屋台から人里までの安全確保の問題。
今回の件で、今までミスティアの屋台に行ってみたかったが行く事のできなかった人たちがこぞって行こうとしているのが判ったのだが、極力近づけたとはいえ人里と屋台の間は数百メートル離れている。
その距離を移動中に、いきなり妖怪に襲われるなんてことが、無いとは言い切れないのだ。
しかしこの問題は、慧音が自らその道を見張ることで解決と「した」(半ば無理矢理である。ここまで約3時間2分)
更に、ちょうど暇していた妹紅も巻き込み、なんやかんやでミスティアの屋台に人間が訪れられるようになったのである(全部決まるのに計3時間10分。頭突き回数12回)。
そして夜。
仕込みも終わり、開店準備万端となったミスティアからの合図と共に、慧音と妹紅の仕事が始まったのである。
時は流れて、午後9時。
大分人間の客が減り、いまや二人の中年が爆笑しながら酒を呑んでいるばかりである。
そろそろ自分たちもご相伴に預かろうか、と思ったときだった。
「あら?今日はこんなところで屋台をやっているのね」
突然の来客。それは、紅魔館の主である吸血鬼のレミリア・スカーレットだった。
彼女の後ろにはメイドの十六夜咲夜、さらに珍しく、紅魔館の門番である紅美鈴も居た。
意外な面子が客として来たものだ、と慧音はそれだけ思ったのだが、中年二人はそうもいかなかったようで。
そそくさと勘定を支払って、人里へ帰っていった。
中年が無事に帰れたのを確認して、慧音と妹紅は紅魔館勢と共に屋台の椅子に座る。
「珍しいな。君がこんなところまで来るなんて」
「ちょっと慧音さん、こんなところってどういうことでしょうか」
ミスティアが突っ込むが、それを無視してレミリアが話を続ける。
「あら、私はここの常連客よ?まぁ確かに人里近くまでくることはそうそう無いけどね」
「そうそうあってたまるかい」
妹紅がお通しで出されたいんげんのゴマ和えを食べながらレミリアに突っ込む。
確かにレミリアのような大妖怪が頻繁に人里に近付かれるのはたまったものではない(レミリアが害を与えるつもりが無くても)が、あまり口にすることでもないだろう。
と、慧音が妹紅に注意する。妹紅は「へーへー」と反省するそぶりも無く和え物を食べ続けるので、合計13回目の頭突きをかましておいた。
「・・・相変わらず、仲がよろしいのですね」
その様子を見ていた咲夜が、軽く笑いながらそう言う。
慧音は苦笑いしながら
「まぁ確かに、仲はいい方だな」
とだけ言った。
実際は仲がいい、という単純な理由だけでは無いので、慧音と妹紅は黙ってしまう。
それで両陣営の会話が途切れてしまったので若干居辛い雰囲気が漂ったが、ちょうど良いタイミングでミスティアが料理を出した。
「お待ちどうさまでーす。はい、八目鰻の蒲焼人数分!召し上がれ~」
順番に出される八目鰻を受け取り、早速食べてみる。
一般的に食されている鰻と違いその身は固めであるが、その分旨味が噛めば噛むほど溢れてくるようだ。
八目鰻本来の旨味に、更に特性のたれの甘辛い味が絶妙にマッチし、慧音はその美味さに思わず「ん~~~!」とうなった。
それは美鈴も同様のようで、「凄く美味しいですね、これ!」と、八目鰻にかぶりつきながら発言する。
食べなれているのかレミリアと咲夜、妹紅は大きく反応しないが、美味いと感じているのは変わりなく、レミリアにいたっては顔がとろけきっている(そしてそれを見た咲夜が鼻血を垂らすのである)。
それぞれの反応に喜ぶミスティアは、「サービスですよ~!」と八目鰻のから揚げや川魚の刺身などを次々と出してくる。
それと共に、全員分のコップを出し、そこに酒を注いでいく。
全員のコップに酒がなみなみ注がれたところで、おもむろにレミリアがコップを掲げる。
「ふふ、今日は楽しい宴会になりそうね。ここは乾杯の一つでも、しましょうか」
その台詞に、慧音たちも賛同し、全員コップを手に持つ。
そしてレミリアが。
「それじゃ、誰か音頭よろしく」
全員酒を零しかけた。
「言いだしっぺがそこは音頭をとるべきだろう!?」
「しょ、しょーがないでしょ!咄嗟になんて言えばいいのか判んなかったし!」
「おまーなー・・・」
「(まぁまぁ、いいではないですか。それも醍醐味です)お嬢様とても可愛らしいですわhshsprpr」
「咲夜さん、逆です」
「・・・・・・・」
「なぜメイド長(笑)は」
「・・・それくらいにしてやってあげて」
(主に咲夜の様子を)見るに耐えかねたレミリアが助け舟を出したところで、新たにコップを取り出したミスティアがそこに酒を注ぎ、掲げる。
「それでは僭越ながら私が音頭を取らさせてもらいますね」
全員の視線がミスティアに向けられる。
ミスティアは照れくさそうに頬をかきながら、口を開いた。
「今日、こうして多くの人に楽しんでいただけたのも、ここにいる慧音さんが八方手を尽くしてくれたおかげです。本当にありがとうございました。またこのような集まりが出来ることを願いまして・・・」
一旦間をとって。
「乾杯!」
ミスティアのそれに一拍遅れて、全員の声が揃う。
「「「「「乾杯!!」」」」」
カチン、と。
グラスのぶつかる小気味いい音が、響き渡った。
おまけ
レミリア「それにしても、あなたが色々、ねぇ」
慧音「・・・割とあの音頭は恥ずかしかった。というか、私はあの料理の味を堪能したかっただけでな」
妹紅「つまり全部慧音のわがまま」
慧音「妹紅、寺子屋裏」
妹紅「え、ちょ、ま、やめ慧n」
合計頭突き回数、14回に。
そういえば最近感想がかかれました。とんでもなく嬉しかったです。
ほんとうにありがとうございます。
原作だと人間友好度:悪なミスティアさんですが、屋台やってるときだけは友好度:最高です。お客様第一ですからw
これをきっかけに少しずつ友好度が上がっていくといいですねぇ。
今回の話で屋台の場所が決まったので、もしかしたらそのうちこの続きみたいな話を書くかもです。未定ですが(笑)
いつになったら妖夢の話が思い浮かぶのだろうかw
といったところで、また次回。
感想などお待ちしております。荒らしでなければどんなのでも大歓喜しますのでw