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私、緋想の剣を無くしました

思ったより早く第2話アップです。

今回は天子のお話。

相変わらずその場その場で書いているので色々gdgdですが、まあご容赦を。


それでは、第2話、お楽しみいただければと思います。

比那名居天子は慌てていた。

どれほどかといえば、普段は被るのを忘れない桃のついた帽子を被り忘れて、髪がぼさぼさなのも気にしないほどだ。

彼女に普段から付き従う竜宮の使い、永江衣玖が、今までに一度も見た事が無いというくらいなのだから、相当のものである。

では、何故天子はここまで慌てているのだろうか。

その答えは―――


「緋想の剣、どこいったのよーーー!!」



緋想の剣。

天人の至宝であり、「気質を見極める程度の能力」を持った特別な剣である。

その性質上、使いこなせば常に相手の弱点属性を衝ける他、気の塊である幽霊がこの剣に斬られれば即消滅するような、かなり危険でかなり強力な武器である。

今現在、天子が勝手に持ち出して私物化している為、あまりそういった話は聞かないのだが、ある程度知識がある者はそのことを知っている。

つまり、知識のある者がこの剣を手に入れたら、何が起こるか判らないのである。最も、持つだけならまだしも能力を使うなんてことは天人にしか出来ないのでその辺は余り心配しなくて良いだろう。

もちろん、天子もそこを心配しているのではなく。


「あああ、あんなレアもん誰かにかっぱらわれたらどうしよう~!?勿体無いよ~!!」


所詮こんなもんである。

天界の至宝=レアもん、些か、いや、かなり、軽く見すぎである。


「というか、無くしたなんてことが御館様に知られたら、お説教では済まないと思いますが」


「・・・・・(顔面蒼白」


一気に顔色が変わる。

そう、天子の親、現代比那名居家当主は、「天人くずれ」と蔑称される比那名居家でありながら相当の影響力と戦闘力を持っているのだ。

無論厳格でもあり、流石の天子もこの親の前ではとてもしおらしくなるという。

結果そこでの鬱憤を晴らすために今の性格が出来てしまったのだが。

さて、そんな親に、至宝たる緋想の剣をなくしたという事がバレたとしたら。


「・・・どんなに運がよくても、半殺しは免れない、わね・・・」


天子の顔から汗が滝のように流れる。

流石に気の毒に思ったのだろうか、衣玖が天子に助言をする。


「とりあえず、屋敷などには無かったようですし、もしかしたら下界に落ちたのかもしれません。一度探しに行きませんか?」


もちろん、天子がこれを断る理由なんて、無かった。



******


とりあえず幻想郷にやってきた二人だが。


「・・・どこから探す?」


「・・・どうしましょうか」


そも、幻想郷の何処かに落ちたかどうかも判らないので、探すあてなんてものも無く。

どこに行けばいいのかも判らないので・・・


「それで、どうしてうちに来るのかしら」


「いやー、博麗の巫女なら何か判るんじゃないかなー、なんて」


「いくらなんでも判るか!」


とりあえず博麗神社に寄ってみたものの、見事に玉砕である。

ちなみに博麗神社の隅から隅まで探してみたが緋想の剣は見つからなかった。

というか見つかっていたらすぐ霊夢が渡すだろう。賽銭を要求される可能性はかなり高いが。


「むー・・・」


「てか、そんな大事なもんならもっとちゃんと扱いなさいよ」


「いや、確かにレアアイテムだけどそんなたいそうなもんじゃ」


「総領娘様、御館様に怒られますよ」


「・・・ごめんなさい」


素直に謝る天子。どれだけ影響力あるのだろうか当代当主は。

その態度の急変様に流石に驚いた霊夢は、額に手を当てながらこう言った。


「とりあえず、紫に聞いてみたら?」


「今ここに居ないどころか、普段どこにいるか判らないような奴にどう聞けってのよ・・・」


天子がそう言うと、霊夢は「しょうがないわねぇ・・・」と愚痴をこぼしながら軽く咳払いをし。


「あー、なんか汗掻いたなー。お風呂はいろっかなー。でも一人ってのもつまらないしなー。誰か一緒に」


「入る入るー♪」


「捕獲」


「え、ちょ!?」


紫がスキマから現れた瞬間に首根っこを掴む霊夢の早業を見て、天子は思わず関心のため息を零してしまうのだった。




「・・・なるほど、判りましたわ」


それから、紫に事情を話す(プラスで霊夢との混浴を無しにする説得「物理」)こと30分。

ようやく落ち着いた紫は事情を聞き終わると同時、両手を挙げた。


「残念ながら、私もその在り処は知りません」


「え、ちょ、マジデ!?」


「マジです。確かにあの剣は特殊な剣ではありますが、いつもその剣を見張るほど危険なものでもないですし、まさか天界から落ちてくるなんてことも想像がつきませんでしたから」


どうやら、頼みの綱は切れてしまったようである。

天子はがっくりと頭を揺らし、衣玖も困ったような顔をしている。

しかしこれ以上頼れるアテは、二人にはなかった。


「あああああどうしようどうしよう・・・」


「ですが、私たちにはもう頼れるアテがありません。かといって幻想郷中をぶらぶら歩き回るなんてことも無意味極まりないですし」


どうしようも無くなった天子と衣玖だが、まだこの場に「二人」、様々なアテがある人物が居るのだ。


「そうですわね。それでは私、ちょっと妖夢のところに行くとしましょう。剣といえばあの子ですし」


「じゃあ私は文のところ行ってくるわ。あぁ、椛に頼んで幻想郷中見てもらおうかしら」


「それはいい考えね。そしたら私は・・・」


「・・・・」


「ん?どうしたのよ天子。そんな呆けた顔しちゃって」


「・・・え、二人とも、判らないんじゃ」


「判らないわよ。だから色んなところに聞きに行くんでしょ?」


さも当然のように、天子に向かって言い放つ霊夢。

逆に天子の方は、更に困惑の表情を浮かべてしまう。


「何で・・・何でそこまで手伝ってくれるの?」


そんなに親しいわけでは無い。それどころか、過去には神社を倒壊させた犯人である自分に、どうしてここまで優しくしてくれるのか。

それを聞こうとしたが、それは出来なかった。

なぜなら。


「はぁ?困ってるやつ助けるのに、なんか理由要るの?」


しれっと、さも当然のように霊夢が言い返したことを。

天子は、まるで初めて聞いたことかのように、驚く。


そんな天子をよそに、霊夢は妖怪の山に向けて出発しようとし、紫は既にスキマの中に潜ってしまったようだ。


だから。


「・・・・と」


「んあ?なんか言った?」


「何でもない!ほら行くわよ衣玖!私たちも少しは歩き回るの!」


「・・・はいはい」


霊夢と紫には、天子の言った言葉が、聞こえなかったようだ。




******


それから。

白玉楼や紅魔館、命蓮寺の方を回った紫の方ははずれだった。

しかし、妖怪の山へ向かった霊夢が、「千里を見渡す程度の能力」を持った椛に協力を要請し、快く引き受けてくれた彼女の力によって、どうやら緋想の剣は、博麗神社の裏手の奥に生えている巨木――三月精の住処の根元に突き刺さっているのが発見された。

それを聞いた天子たちはすぐにその巨木の元へ向かい、剣を発見する。


無論。

「これを拾ったのは私たちだから、これは私たちのもんよ!」

と、三月精の事実上リーダー、サニーミルクがぬかしたが、霊夢の実力行使で奪取に成功。

無事に、緋想の剣は天子の下に戻ってきたのである。


「はぁ・・・疲れたわね」


肩を揉み解しながらくるくる回す霊夢。


「ご迷惑をおかけしました。もうこのような事が無いように、しっかりと言い聞かせておきますので」


「・・・それ、本人が目の前に居るのに言う?普通」


天子の言うことも最もであるが、それを無視する衣玖。

何時の間にあんなところに剣を落としたのか判らないが、どうあれ落としたことに変わりはないので天子にとやかく言う権利は無いのである。


「全く・・・まぁでも、ちょっと珍しいもの見れたし、報酬はそれでいいわ」


「そうね。まさか貴女が妖精相手に、ねぇ」


「・・・うるさい」


顔を赤らめ頬を膨らませながら、そっぽを向く天子を、にやにやしながら見る霊夢と紫。


そう。天子は、霊夢が三月精から緋想の剣を取り返した(もとい、暴力的に奪い取った)後、なんと三月精に頭を下げたのである。

そのまま、剣を拾ったこと、剣を売ったりしなかったことにお礼を言い、また、霊夢が傍若無人な振る舞いで剣を奪ったこと、そもそも剣を落としてしまったことを謝ったのである。

これには、三月精も、霊夢も紫も、大層驚くことになった。

一番驚いたのは、言うまでも無く衣玖である。


「・・・別に、『当然のことをした』までよ」


「・・・ふぅん。ま、いいわ」


それを聞くと、霊夢はすたすたと早足で神社に向かって歩く。

これ以上はもうどうでもいいようだ。

紫もそのようで、霊夢の後に付いていく。


びゅっ、と、一陣の風が吹く。


「―――あ、ありがと」


風に乗ったその一言は、聞き間違いなんかではなく。

だけど、今回はちゃんと聞こえなかったことにしておいてやろう。

そう思って、霊夢と紫は、返事を片手を振る挨拶だけにとどめておいた。




「・・・帰りましょうか」


「――そうね。帰りましょう」


片手を軽く振りながら去っていく二人を見送り、天子と衣玖もまた、天界へ帰ることにした。

こうして、天子と衣玖の、緋想の剣探しの短い旅は終わる。

だが、その短い旅の中で、天子は何か大切なことを学んだようだ。

それに気付いた衣玖は、天子に見えない角度で、とても優しい笑みを浮かべたのだった。




ちなみに、緋想の剣は天子が落としたのではなく、こっそり遊びに来ていた鬼の伊吹萃香が、酔っ払った弾みに持ち出していたらしく。

天界から幻想郷へ戻る最中に落っことしたのを、「まあいっか」と放置していった、というのが真相であったりする。

それを後々射命丸文から聞いた天子は、しばらくの間萃香のことを追い掛け回したそうだが、それはまた別のお話である。

なんか天子の性格が思いっきり変わってるような。

高飛車の自己中なはずが、どうしてこうなった。


まぁ自分がこんな感じの天子が好きだから、という理由で終わりそうなのですが。

でも一番好きなのは妖夢です。これは永遠に変わりません。ええ。


いずれ妖夢の話も書きたいものですが、果たしていつになることやら・・・

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