紅魔館奪還作戦【後】
お待たせしました。
やっとこさ書き終わったので送信~
それでは後編、お楽しみください。
前回までのあらすじ。
紅魔館にモンスターが大量に現れたのでこれから退治に行きます。
以上。
門を開き、紅魔館中庭に突入する。
先頭は美鈴。次いで魔理沙、レミリア、咲夜、殿にパチュリー。
先頭の美鈴は左右の茂みなどに警戒しながらすぐに紅魔館入り口まで走る。
少し遅れて魔理沙達が美鈴以上に左右を警戒しながら突き進んで行く。
しかし、最後尾でヒーヒー言っているパチュリーが無事に入り口前までたどり着いても、何も現れなかった。
「とりあえず外には出ていないようですね」
咲夜がパチュリーの汗を拭きながら言う。
パチュリーはされるがままになりながら息を整えようとしている。
「まぁとりあえず第一関門突破ってところだな。とはいえこれからは休憩の暇があるかはわからないけどな」
そういう魔理沙は息を全く切らしていない。門からここまで約500mはあり、そこをかなりの全力で走ったのだから少しは息が切れていてもいいのだが。
そうこうしているうちにパチュリーが回復し、突入可能になる。
すぐに美鈴が扉に手をかけ、開ける。
かなり大きな扉なので、開けるのに美鈴でも数秒かかるのでとっとと開けようとしたのだろう。
しかし。
「・・・あれ?」
疑問の声を上げながらも、美鈴はもう一度扉を押す手に力を籠める。
それでも、門はびくともしなかった。
「おかしーなー、この扉って押す扉ですよねー?」
まさか度忘れしてしまったのだろうか、と不安に駆られた美鈴は振り返ってレミリアらに確認をとる。
勿論。
「や、押しても引いても開く扉だけど」
「あ、引いても開くんですね」
「知らんかったんかい」
仮にも自分が住んでいる家のことで知らないことがあろうとは、その場に居た全員は思わず呆れ返ったが美鈴は気にすることもなく扉を引いた。
今度は開いていく。
少し出鼻を挫かれたが、これからが本番だ。
とりあえずレミリアはどうやってモンスターをボコボコにするか頭の中で考えていた。
門がある程度開いて、一番最初に見えたのが口だったのですぐに思考がフリーズしたが。
ばたん。
「・・・何か見えました?」
「・・・里に戻りましょう」
全員、踵を返して門に向かってダッシュする。
そのわずか2秒後、玄関扉をぶち壊して、さっきの口が飛び出してきた。
―ウリーーーーーーーーー!
「とりあえずその鳴き声をやめろーーーーー!!」
うわあああ、とか、キモいいいい、とか言う前にそのツッコミが出てきたのはある意味流石といえるかもしれない。
そのまま、その口のような何かはレミリアのスピア・ザ・グングニルによって粉微塵になった。
「あ、本にさっきのやつの挿絵が戻ってる」
口のような化け物を一発で蒸発させたのち、砕かれた意思を立て直すためにもう一回休憩していたときに、パチュリーが魔導書を読んで気がついた。
「本当か?・・・うわ、絵になると余計気持ち悪いな」
パチュリーに釣られ魔導書を覗き込んだ魔理沙は思わず顔を顰めた。
レミリアらも見てみると、なるほど絵のほうが数段気味悪く描かれている。
特に口の中身(口しかないのだが)が無駄にリアルである。
挿絵の下には何行か文字が書かれている。この場だとパチュリー以外は読むことが出来ないのだが。
「うーんと・・・クチイガイカオナシ、らしいわよ」
「まんますぎだろ」
この魔導書を作ったやつはセンスが無いに違いない。
(調子狂うなぁ・・・)
思わず心の中でぼやいたレミリア。
といってもこの後、もっと大変な目にあうのだが。
ここで彼女達は気付くべきだったのだ。
この魔導書の中に書かれているモンスターが、彼女らの想像するモンスターとは三味くらい違うということを。
そして気付かなかったが故に、大変な目に遭うのだった。
~ダイジェスト~
「・・・なんか変な草がたくさん生えてるんだけど」
「しかも蔓が延びてきてますよ!?」
「・・・これはたぶん『チラミソウ』ね。蔓の先には動物で言う目が有って、スカートを履いた女性を見ると」
「オーケー、咲夜、刈れ」
「ぎゃああああああああ虫いいいいいいいい!!」
「なんだあのピンクの飛んでるのは!?」
「えーと・・・おそらく『ピンクハエ』、ピンク色のハエ、数十匹で固まって行動する、キモい、以上」
「それだけですか!?」
「ええい、お嬢様によるんじゃないわよ!」
「ふん、こんなたかが足が多いだけの馬にやられる私じゃないわ」
デローン
「ってなんか上からかかって来たああああああああ!!」
「あれは・・・スライム?はっ、このままではお嬢様の服が大変なことに!!」
「とりあえず咲夜、鼻血拭け」
「スライム!?気をつけてレミィ!」
「ぎゃあああああああ肩から離れないいいいいい溶かされるー服も肉も溶かされるー!」
「いいえレミィ、そいつはきっと『キューティクスライム』!そいつなら肉も服も溶かさないわ!」
「多分な点が怖い!!でもマジで!?」
「その代わり髪の毛を溶かすわ!」
「ヤメローーーー!ハゲタクナーーーーイ!!早く助けてええええええええええ!!」
「あばばばっばばばばあばっばばばあば」
「ちょ、先導していた美鈴が壊れ・・・た・・・」
「「ぎゃああああああああああああああああああ!!」」
「魔理沙、美鈴!どうし・・・た・・・」
「うわああああああああああ!!」
「いやああああああああああ!!」
「何よその後ろから走ってくる蟻と動物足して2で割ったような奴は!?てかこっちくんな!」
「・・・あれはきっと『オオアリクイクイアリクイクイアリクイクイ』」
「なっげぇよ!!!!」
「というかどっちなのですか!?」
「・・・これがあと数行続いて最後に『アリクイクイアリ(以下略』って」
「「「「どっちか判ってないのかよおおおおおおおおおおお!!」」」」
その後も散々変なモンスターに追い掛け回され。
毛むくじゃら――『ケダマムカデ』だろうと推測される気持ち悪いの――に追いかけられ、現在に至る。
「ぱ、パチュリー、あと、あと何体だ・・・?」
ぜひー、ぜひーと息を切らしながら魔理沙がパチュリーに問いかける。
しかし返事なし。咲夜が近寄って見てみれば魔理沙以上に酸素が足りていないようである。指一本動かせていない。
これは答えが返ってこないな、と諦めた魔理沙は横になりながら首だけ動かして周りの様子を見る。
レミリアと美鈴もまたぐったりしている以外は異常はなさそうである。
実際ここまで約6時間、そろそろ解決とまでは行かなくとも終着点が見えておかしくない頃である。
普通なら。
――シュルルルル・・・!
遠くの曲がり角から、蛇と思しきモンスターが顔を出す。
それはこちらを発見すると、ゆったりとこちらに向かってきた。
「・・・少しは休ませてくれよー」
ぼやきながら魔理沙は立ち上がり、服のポケットから愛用のミニ八卦炉を取り出そうとして・・・
「・・・・・・」
「・・・魔理沙さん?」
急に固まった魔理沙に美鈴が声をかける。
だが美鈴の声に一切反応せず、魔理沙は自分らに迫ってくる、やけの胴の太い茶色の蛇を凝視し続けている。
このままではまずい、と美鈴と咲夜が魔理沙の前に立ち塞がる。
しかし、魔理沙は。
「・・・つ、ツチノコ・・・」
「は?」
「あいつは、ツチノコじゃないか!!」
突然大声を上げたかと思えば、あろうことかその巨大ツチノコに向かって走り出してしまったのだ。
美鈴が「なっちょっ!?」と慌てて止めようとするが止めきれず、魔理沙は巨大ツチノコに触れる。
「すまないみんな、私にはこいつを倒せないぜ。何せ私の飼ってるあいつにあまりにもそっくりむぎゃっ!?」
「ちょ、魔理沙ーーーーー!!」
触れ、親心を展開したところで、魔理沙は頭から丸呑みにされた。
「今日でツチノコへの株が暴落した」
「あれとあんたんちのツチノコとを一緒くたにするのがいけないのよ。全く、べとべとになっちゃって・・・」
結局美鈴の拳一撃で巨大ツチノコは魔理沙を吐き出しながら沈み、そのまま魔導書に戻っていった。
丸呑みされた魔理沙はツチノコの唾液まみれになっており、咲夜と美鈴がそれをタオルで拭いてやっていた。
そんな三人を他所に、復活したレミリアとパチュリーは、魔導書を開いて、現在どれほど魔導書にモンスターを戻したかを確認している。
ぺら、ぺら、とページを捲る二人の表情は割と明るいが、それ以上にまだ重かった。
「・・・どうなんだ?残りは?」
ページを捲る音以外は唾液が滴り落ちる音しかしていないのが気に食わないのか、魔理沙がパチュリーたちに問いかける。
問いかけられたパチュリーはひとつため息をつくと顔を上げ、魔理沙の方を向く。
「良い情報と悪い情報、どっちから聞きたい?」
「決まってるぜ、いい方からだ」
間髪いれずに返答。もうひとつため息をついて、口を開く。
「じゃあいい方から。あと1ページを残してすべてのモンスターを倒し終わったわ」
「待て、それ良い情報と悪い情報一緒に言ってないか?なぁ?」
疑問を突っ込んでくる魔理沙を完全に無視してパチュリーは続ける。
「悪いほうとしては、その残り1ページのモンスターの情報が<controler(管理者)>という名称であることだけ。特徴も何も載っていないの」
「いやいや、そんなのどうせ見ただけで判るような奴だろうぜ。問題ないだろ」
「大有りよ」
言って、パチュリーは魔理沙にずいと近寄り、指を魔理沙に向ける。
「名前しかわからないのよ?形も、色も、大きさも、何もかも不明。もしかしたら外見はただのネズミかもしれないし、超極細生物かもしれない。そんな奴を、名前だけで見つけて、どう倒せと?」
ぐ、と魔理沙が言葉を詰まらせる。
反論のしようがないからだ。パチュリーの言うことは完全に正論である。
姿がわからない。色もわからない。大きさもわからない。
そんな奴の、確実に真名ではない名前だけ判っていてもどうしようもないのだから。
「・・・でもどうするの?あと一体、そいつを倒さなきゃ、その魔導書は戻らないし、紅魔館も常に危険だわ」
レミリアが腕を組んでそう言った。
「・・・とりあえずあても無いけど探し回るかもしれないわね。もしかしたら魔理沙の言うとおり一瞬で判る奴かもしれないし」
そう言って、パチュリーが踵を返した瞬間であった。
「ただいま帰りましたー。いやー、地底って初めて行きましたけどなかなか楽しいところですねー」
地霊殿にお使いに行っていたパチュリーの使い魔である小悪魔が帰ってきた。
小悪魔はへらへらと笑いながらパチュリーの元に寄って来る。
「あら、お帰りなさい小悪魔」
「ただいまですー。ちゃんとお届けものを・・・あれ?パチュリー様、その本・・・」
業務報告をしている途中、小悪魔はパチュリーが抱えている本に気づいて興味を示した。
パチュリーは、最後の一体を探す労働力は少しでも多いほうがいいかな、と一瞬で考え、今までの経緯を話そうと
「あぁ、実は」
「私の管理していた魔導書じゃないですかー!あれ、見つけてくれたんですか?」
・・・・・・
「「「「「おい、今何てった?」」」」」
小悪魔以外の声がハモる。
対して小悪魔はキョトンとしながら答えた。
「いえ、だからこれは、私が管理者として登録してある奇妙な生命体の書かれた魔導書で」
「「「「「管理者はお前かあああああああああああああ!!!」」」」」
「ひえぇっ!?あの、どうしたんですか急に!まぁ確かにちょっと前にこの魔導書見つけて開いたら勝手に管理者登録されてちょっと困ってたんですけどって痛い痛い痛い皆さん痛いですぐりぐりやめて下さいーーーー!!」
小悪魔の悲鳴も関係なく、全員で小悪魔をボコボコにしたのはもはや言うまでもない。
こうして、住人一人がタコ殴りにあったものの、紅魔館の奪還と魔導書の再生は完了したのであった。
ちなみにこの時フランは地霊殿でこいしと大暴れしてさとりを半泣きにさせていたそうな。
お待たせしました。
すぐに後編投稿とか言っておきながらこの様でした。
反省反省。
ちなみに次に書こうかなと思っているのは
・フランとこいしの大暴れ(最後のアレです。ギャグ)
・青娥と芳香過去話(岸田とTaNaBaTaのデザイアドライブアレンジ聞いていてふと思いついたの。シリアス)
どっちかを考えております。
どっちがいいですかね?
次回はまた遅くなるかなぁ・・・