おかえりなさい
小鳥のさえずりが、歌のように響いてくる。
ここは森。
降りそそぐ日差しが、芽吹きを待つ枝を照らす。
私はそこで、彼らの帰りを待っている。
漕ぎ手のないブランコが、風と戯れている。
ここは公園。
蒲公英が、懸命に根を張って息をする。
私はそこで、彼らの帰りを待っている。
早起きの働き者達が、挨拶を交わしている。
ここは港。
さざ波に揺られ、今日も漁船が海へ行く。
私はそこで、君の帰りを待っている。
「おかえりなさい」
その一言を言うために、私たちはここにいる。
震災から一年。何か作品を残したいという気持ちに駆られ、書き上げました。
誰にでも帰る場所があると、私は信じています。自然も土地も人も、あなたの帰りを待っています。
いつか被災地に笑顔が戻る日が来ることを願って。