世界に抗う力
グルァァ!熊の咆哮が木霊すると同時に熊の反撃が始まった
熊は美雨姉さんと明美姉さんの止めの一撃を軽く受け流し、鎖で攻撃した美雨姉さんを地面に叩きつけた
「美雨姉さん!」
俺は美雨姉さんに駆け寄ろうとしたとき
「キャァァ!」
明美姉さんも熊の腕で吹き飛ばされる
「二人とも!!」
俺は二人に駆け寄る
「来ちゃダメ!」
明美姉さんに制止させられる
「(どうして、二人が!?)」
県内でもトップ10の二人が熊の異獣に劣勢を強いられている、普段なら普通に最後の止めで終わったいたはずなのだが今回はなぜか違う
「まさか、上位異獣!?」
頭のなかで浮かぶのはその言葉、しかも、その意味は、異獣より強い異獣・・・それは何かの影響を受けて生まれるはず、つい先日もそのことがニュースで取り上げられてたと記憶をさぐる、勝てるとしたら、姉貴たちで精一杯のはずだが何かが違う
刻一刻と上位異獣の熊にやられていく二人
しかし、現状太刀打ちできるとしたら、今俺がここで夜姫の力を借りて戦うしかない、しかもそれが太刀打ちできるかどうかすらもわからない
(こんな負け方ってありかよ……! 何されたかも分からないで、負けるなんて……!)
滲んだ視界の中で何条もの閃光が交錯する。
(何で、何で俺はこんなに弱い……!)
『ねぇ?ヒロ』
「なんだよヒメ?」
『私を誰だと思っているんだね?』
「ヒメだろ?」
『そうね~というか、わかってるでしょ?』
「デメリットが大きすぎやしねぇか?」
『大丈夫よ、なんとかなるさ、それにあなたには資質があるのよ』
「資質?」
『あんまり込み入った話は出来ないけどあなたの体の中には私の破片が入ってるから問題ないよ』
「あの時のか?」
『そゆこと、安定してるしいつでも行けるわよ』
「・・・・・・面白い。愉快に素敵にビビらせてやろうかな」
俺はできるだけ波長を合わせるため、何も考えないようにする、その隙をねらった熊が俺に攻撃を仕掛けて地響きを立てながら猛烈なスピードで走ってくる
「「逃げてぇぇ!」」
くまの攻撃が俺に当たる直前、爆発的な紅い光が放たれた。人どころか、一般家屋程度なら軽く飲み込みそうな大きさの閃光、空に禍々しくも華がある赤い柱が貫き、その経過は、夜姫との共鳴融合を意味していた
自分の中から現れた荒れ狂った霊力の流れは焔のように燃え上がり、自分を取り巻いた。莫大な怨念を伴った光が地表を走り、宙に跳ね上がって空にさらなる光条を生んだ
現実が壊れていく感覚がする、人が人ならざるものの力を手に入れたように
『全テノ存在ヲ喰ラエ!』
脳内に再生されるのは人々の怨嗟に満ちた叫び声、それは夜姫が過去に言われてきた言葉の数々
その言葉と共に、一気にどこかに飛ばされた
その中から、現れたのは漆黒の長いロングヘアー、大きな真紅色の瞳が神々しい光りを放ち、小ぶりだがスッと通った鼻筋の下で、桜色の唇が鮮やかな彩りを添え、スラリとした体を上は黒を下は灰色を基調とした和服風戦闘服姿になった。
「いくら、その状態のヒロちゃんでも無理よ!」
「精々、時間を稼いでくれればその間に回復して、私たちが倒すんだから」
「ああ。時間を稼ぐのはいいが―別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」
「いつからたくましくなったのよ?」
「さぁな・・・守るもんができたからじゃね?」
「背伸びしないの」
「あぁ、まぁ、自分の中の期待に答えるとしようかな」
「#%!&$'()U"=(#'HJKHUIODL+`{}+}>`{(')("#("=」
この世界の人間が認識できない言語で何かを唱える
右手を広げ前に突き出す
「――勝てばいいんだろ・・いや、殺せか――」
少年は、内なる何かに全てを任せ、一気に足にどこの流派にも見ない術式を展開する
「厄災術式」
足の加速術式が唸りを上げる
「―通常参之型―翔罰!」
前に倒れ込むように右足で地面を蹴飛ばし、しかし弾かれた様に全身を蹴ばした。
禍々しい紋章の浮いた拳を一気に上位異獣にぶつける、しかしそれを受け止め
やや据えた目で表情で責めていく、踏んだ右足を軸に、体を左から右前へとまわし、拳を異獣にぶち込む
漆黒の長い髪を靡かせながら、殺戮の焔を全身に纏いながら敵を追い詰めていく
右後に傾けた体を利用し、右足を外に、左足を前に踏み込む
グルァァ!無鉄砲に異獣が突っ込んんでくる
「歯を食いしばれよ、熊やろう!――――――」
「――――――俺の拳は、ちっとばっか痛いぜぇ!」
まずは一発、熊の腹部に命中する
自らの拳撃と異獣の拳撃がぶつかり合い音楽のように奏でていく
なぜかわからないが、反射的に自分の身体をどう犠牲にするかのダメージコントロールが判断できる
連動による高速攻撃に頼ることはできるが、防御に頼ることはできないため
「弐之型―障防」
瞬間的に、先程の術式と同系統の防御術式を展開する
熊が怯んだ隙を逃さず、高速移動と拳撃の攻撃を繰り返す
「さて、終了だ―術式―――――」
何の型なのか、技の名前も告げず、熊の地中からエネルギーの柱が熊を焼きころした
そんな中、ひとひらの木の葉が地面に落ちたことを俺は逃さなかった