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30XX年

掲載日:2026/03/15

短編です

 35番。

 ソレが俺の番号であり識別ネーム。正式名称はK30-35。

 その昔、人間には、苗字と名前、人によってはミドルネームというものがあったらしい。俺たちにとってはK30が苗字で35が名前になる。

 なんでもその昔、少子高齢化が世界規模で進み、世界的に人間の数が激減。その代わり世界には植物がはびこり、数えきれないほどの新種が生まれ、動物たちはその数を減らして行った。おかげで人間も住む場所が減っていき、今の形に落ち着いたらしい。

 俺たちは生まれた年号と順番を名前として与えられる。俺たちの生みの親はAIだ。培養液の成分や個体の形成にAIが使われている。俺たちはそれをマザーと呼ばされている。

 マザー、という言葉は、母親という意味らしい。俺たちの祖先は、男と女が交配してその数を増やしたらしいけど、いつの頃からか、人間は交配をしなくなったらしい。なんでかなんて、今の俺たちにはわからない。知識として与えられる、記憶の中の人間たちは、もはや歴史の中にしかいない。

 俺たちは生まれた時から大人というくくりの中に放り込まれる。昔は子供という時期があったらしいけど、俺たちにはそんなもの関係ない。培養液の中で成長し、気が付いたころには大人の姿で外に出る。知識は培養液の中で脳に刻まれる、らしい。

 正直俺たちは、ただ、コロニーの修復や拡大のための力として生み出されるから、自分たちの出生の秘密なんかに興味はない。

 知識としては知っているけど、俺たちには生殖能力がない。

 マザーがその方が良いと判断したんだとか。

 時々、俺たちは何のために生まれたんだろう、なんて考えるやつがいたけど、そいつはいつの間にか姿を消していた。まぁ、俺には何の興味もない。考えたって答えは出ない。歴史の中の人間たちに、答えを聞くこともできない。そもそも答えなんてものは無いのかもしれない。

 ブザーが鳴った、今日の仕事は終了だ。各自部屋の前でマザーと面会をする。面会と言っても、マザーは触手を俺たちに伸ばして、今日の記憶を探るだけ。マザーに俺たちが会えるわけじゃない。

 頭上から降りてくる触手に身を委ねる。頭に触れた触手が俺の思考を読み取る、らしい。

「「35番、お疲れ様でした」」

 マザーにそう言われたら自室に入って、出てきた飯を食って、就寝だ。今日も一日が終わった。

 就寝時間は8時間。起きたらまた仕事だ。


 布団に入ったのに、今日はなんだか目が冴えてしまって寝られない。こんなことは初めてだ。部屋の中で体を動かしてみるけど、目が冴えるだけ。困った。寝られないとマザーに気づかれてしまう。

 マザーに気づかれると、どうなるんだろう。あれ、そういえば、俺たちはなぜこんな場所で生きているんだろう、どうして生まれたんだろう。

 おなじことを考えたやつは、どこへ行ったんだろう。不思議だ、眠れないとずっと色々なことを考えてしまう。



——「「34番の次は、35番です」」——

順番が来たようです。

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