30XX年
短編です
35番。
ソレが俺の番号であり識別ネーム。正式名称はK30-35。
その昔、人間には、苗字と名前、人によってはミドルネームというものがあったらしい。俺たちにとってはK30が苗字で35が名前になる。
なんでもその昔、少子高齢化が世界規模で進み、世界的に人間の数が激減。その代わり世界には植物がはびこり、数えきれないほどの新種が生まれ、動物たちはその数を減らして行った。おかげで人間も住む場所が減っていき、今の形に落ち着いたらしい。
俺たちは生まれた年号と順番を名前として与えられる。俺たちの生みの親はAIだ。培養液の成分や個体の形成にAIが使われている。俺たちはそれをマザーと呼ばされている。
マザー、という言葉は、母親という意味らしい。俺たちの祖先は、男と女が交配してその数を増やしたらしいけど、いつの頃からか、人間は交配をしなくなったらしい。なんでかなんて、今の俺たちにはわからない。知識として与えられる、記憶の中の人間たちは、もはや歴史の中にしかいない。
俺たちは生まれた時から大人というくくりの中に放り込まれる。昔は子供という時期があったらしいけど、俺たちにはそんなもの関係ない。培養液の中で成長し、気が付いたころには大人の姿で外に出る。知識は培養液の中で脳に刻まれる、らしい。
正直俺たちは、ただ、コロニーの修復や拡大のための力として生み出されるから、自分たちの出生の秘密なんかに興味はない。
知識としては知っているけど、俺たちには生殖能力がない。
マザーがその方が良いと判断したんだとか。
時々、俺たちは何のために生まれたんだろう、なんて考えるやつがいたけど、そいつはいつの間にか姿を消していた。まぁ、俺には何の興味もない。考えたって答えは出ない。歴史の中の人間たちに、答えを聞くこともできない。そもそも答えなんてものは無いのかもしれない。
ブザーが鳴った、今日の仕事は終了だ。各自部屋の前でマザーと面会をする。面会と言っても、マザーは触手を俺たちに伸ばして、今日の記憶を探るだけ。マザーに俺たちが会えるわけじゃない。
頭上から降りてくる触手に身を委ねる。頭に触れた触手が俺の思考を読み取る、らしい。
「「35番、お疲れ様でした」」
マザーにそう言われたら自室に入って、出てきた飯を食って、就寝だ。今日も一日が終わった。
就寝時間は8時間。起きたらまた仕事だ。
布団に入ったのに、今日はなんだか目が冴えてしまって寝られない。こんなことは初めてだ。部屋の中で体を動かしてみるけど、目が冴えるだけ。困った。寝られないとマザーに気づかれてしまう。
マザーに気づかれると、どうなるんだろう。あれ、そういえば、俺たちはなぜこんな場所で生きているんだろう、どうして生まれたんだろう。
おなじことを考えたやつは、どこへ行ったんだろう。不思議だ、眠れないとずっと色々なことを考えてしまう。
——「「34番の次は、35番です」」——
順番が来たようです。




