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視線を上げて

作者: chui
掲載日:2026/02/02

今日もよく冷えている。

新年を迎えて半月しか経っていない事もあり、駅のホームは寒かった。

今日も1日が始まる。

ふと視線を上げると、ピンク色の空が広がっている。

綺麗な色だった。

早朝、限られた時間にしか見られない貴重な空。


小学5年生の頃だった。

夕方、母親に陣痛が始まり、夜通しの出産になるといわれた父親が、友達のららちゃんのお家に私をあずけて行った。

都会ではわからないけれど、田舎ではご近所との距離が近いので、子供を預けるなんてことは、そう珍しいことではなかった。


ららちゃんは私の一番の友達。

小学生になった初日にできた友達で、私は学校帰りに彼女の家に行った。

なかなか家に帰ってこない私を、母親は迷子扱いした。

「連絡ありがとうございます。自分の家がわからなくなったみたいで」

私を迎えに来た母親が、ららちゃんのお母さんに、そう言ったのが引っかかった。

だって私は迷子じゃない。

ららちゃんと一緒にいたかったから、帰らなかっただけなのに。


「女の子と男の子どっちがいい?」

ららちゃんの綺麗な目が、私を見ている。

女の子だったら三つ編みを作ってあげたり、お気に入りのリボンを貸してあげてもいい。

男の子だったら…どうすればいいんだろう。

「いもうとが、ほしい」

ララちゃんの顔から光がこぼれる。

「じゃあ、いっしょにカワイくしちゃおう」

うん。

ララちゃんからこぼれた光につられて、私も笑顔になってそう答えた。


布団に入っても、話は続いた

赤ちゃんの名前をいいあいながら、自分たちが母親になる時に、子供が何欲しいかといった話。誰と結婚するんだろう という話。幼稚園の頃のなんとかちゃんは、誰々君が好きなんだよといった恋バナ、それは永遠と続いた。


目を開けると、ららちゃんの寝顔が目の前にあった。

いつの間にか寝てしまったらしい。

お家にいる時なら、早く寝なさいと 母親に怒られながら眠るのに、ららちゃんのお家では、そういうことを言われてなかったのを羨ましく思った。


その時、生まれてくる妹だか弟のことを思い出した。

私は、ららちゃんの寝息を聞きながら、布団を抜け出した。


人様の玄関というのは、それだけで 異空間だ。

そこに見慣れた 自分の靴がある。

靴下を履いていないせいか、靴が予想以上に冷たい。

外に出ると、遠くの方でトラックの走る音が聞こえたようだった。

外の空気が寝ぼけていた私の頭を、はっきりとさせてくれる。

父親からの連絡があれば、ララちゃんのお父さんたちが私に教えてくれるはず。

それがないってことは、まだ生まれてない。

身を縮めながら、私は待っていた。

「楽しみだね」

後ろから優しい声が聞こえる。

「うん」

ららちゃんが肩を寄せてくれた。

触れたところから、暖かさが全身に広がるようで私は嬉しかった。

どれくらいそうしていたのか、わからない。

今、私たちの前を誰かが通ったら、子供2人で何をしてるんだろうと思うことだろう。

穏やかな空気だけが2人を包んでいた。


「あ…」

ふと視線を上げると、空がピンク色になっていて、どちらともなく声を上げた。

お互いの目を見つめて、私たちは微笑んだ。

日の光の入ってきた空は変化が早い。

ピンク色になった空の端から、オレンジ色が迫っている。

それが私たちの頬を赤く染めて暖かみを増してゆく。


「まもなく1番線に…」

電車の到着を告げる アナウンスが流れた。

今日も満員電車だろう。

ハードな仕事も待っている。

家に帰ったら家事もある。

でも、いいことがありそう。

私は顔をあげた。





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