表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界への片道切符  作者: ぼんじり
2/2

第2話

草原を歩き始めてしばらくすると、のどが渇いてきた。だが、水の気配はない。辺りは見渡す限り草と小さな丘ばかり。遠くに見えた城も、思ったより距離があるようだ。


「とりあえず、あそこを目指すしかないか……」


現実では考えられないほど軽い足取りで歩き続ける。異世界だからなのか、それとも冒険者の身体になったからかはわからない。ただ、妙に身体が動く。


やがて、丘を越えた先で異様な気配を感じた。


――ガサッ。


振り返ると、草むらから一匹の獣が姿を現した。狼よりも大きく、体毛は黒く濁っている。目は血のように赤い。


「……魔物?」


狼のような姿をしているが、背中にはトゲのようなものが生えている。普通の生き物ではない。


獣は唸り声を上げると、一気に飛びかかってきた。

反射的に腰の短剣を抜いたが、手が震える。武器なんて持ったことがない。それでも逃げるわけにはいかない。


「くそっ……!」


獣の爪が振り下ろされる。その瞬間――視界が一閃した。

右肩に激痛が走り、血が飛び散る。叫ぶ間もなく、体が吹き飛ばされる。背中から地面に叩きつけられ、息が詰まる。


「……ぐ、あぁ……」


何とか立ち上がろうとするが、足に力が入らない。獣はゆっくりと近づいてくる。その牙にはさっき自分の血がこびりついていた。


――死ぬ。


そう思った瞬間、獣が飛びかかってきた。


ガブッ!

鋭い牙が胸を貫く。熱い血が溢れ、意識が遠のいていく。


……だが次の瞬間、ふっと身体が軽くなった。


気づけば、自分の部屋にいた。

汗でシャツがべったりと貼りつき、心臓が激しく打ちつける。だが、肩には傷一つ残っていない。胸の痛みもない。


「……戻った、のか?」


机の上には、あの切符が何枚かあった。


「……次は、負けない」


もう一度、切符に触れた。世界が反転し、再び異世界へと吸い込まれていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ