シーン7.いじめじめじめなんとなく…
「ハル君。皆がシアちゃんのこといじめるの」
「へぇ?」
なにやらかしこまった様子で行き成り俺にそう相談してきたのは毎度御馴染みマイシスター
「シアちゃんってアレだろ?誕生日にかつおぶしと漬物の高級セット送った愉快な女の子」
「うん。それであまりにも哀れだから友達になってあげてる子」
我が妹ながらドライな切り替えしだ
「でね。ほんっとその子静かでね。街の公園でもいつも浮いて溶け込んでないの」
ああ、なるほど
フユくらいの年齢なら基本的に元気の塊だ。運動が出来るだけでモテる年頃と言われるほど活発な子が多いと思うし。
その中で静かな性格の女の子は友達が出来にくかったりするのだ
もちろんそんなこと気にせず無邪気に付き合えるのが子供の利点だが・・・逆も言える
「それでね、私と喋ってきたらね。ほかの男子がシアちゃんに『お前喋るな』とか『うざいからあっちいけ』とか言ってきて」
「へぇ・・・それ言ったの元々お前と仲良かった男子だろ?」
「仲がいいとは言わないけど。それなりに遊んでいたかなぁ?」
ほんっと、ドライだなコイツ
「で、そのあとお前『そんなヤツ放っといて遊ぼうぜ』とか言われたんだろ」
「・・・・・・エスパー伊O」
「O藤をつけるな」
なんにせよ子供なら良くある話ではある
「元々他の子達にもいじめられてたみたいでね。声が小さくて聞こえないからって皆で無視したり。ほんとに声は小さくて、たまに何言ってるかわからないんだけどさ。でも聞き返せば何度でも言ってくれるのに・・・」
「・・・・・・ほぉ」
フユは気付いて無いみたいだけど、何度も聞き返してくれるってのはその子にとってはすごく嬉しいことなのだろう
話を聞いてくれる人がいる。それは当たり前のようでとても大切なことだ
大人にとっても・・・ね
「なのに。みんな『口も聞けないやつと喋っても意味ない』とか言ってさぁ・・・」
子供は純粋で、純粋すぎて時に残酷だ
無邪気。
この言葉は果たしていい意味なのだろうか?
邪気が無い。
悪気が無い
だからこそ、自分が悪いことをしているのかわからないし気付けない
いじめなんてずっと昔からあった習慣だ
問題だ問題だと騒がれたところで一向になくならない
ソレは学校の教師の責任だと言われても、育てた親の責任だと言われてもどうしようもないのだ
相手は子供。無邪気の塊でもある
理解出来ないものは出来ない。大人がなんと言おうと、理由の無い無邪気な悪意に"なんとなく"で従っている子供にはわからないのだ。
自分で痛い目に合わない限り、相手の痛みを考えることなんて出来ない
そんなものを大人にどうしろと
「それで、そんなこと言われているシアちゃんを前にフユはどうしたんだ?」
「うん。"なんとなく"男子たちを殴って追っ払っといた」
「・・・・・そっ、か・・・」
「うん。でも、これでよかったのかな・・・?」
「ん、お前は正しい。色々大変だろうけど頑張ってみな」
「・・・・うん!」
それを確認しにきただけなのだろうか、シアは元気よく頷いて部屋を出て行った
「なるほどね・・・無邪気な悪意に勝てるのは無邪気な善意だけ・・・・・か」
"なんとなく"いじめる子供がいれば
"なんとなく"それを助ける子供もいるのだ。
大人のようにうだうだ考え無いからこそ、臆病もなくそれが出来る
なら、大人のすることは無邪気な善意を持つ子供を育てること・・・・
「ったく・・・一体全体そんなのどうすりゃいいんだって・・・・」
俺は自問しながらベットに寝転がる
大体うちは大人と言える大人は俺とアキ姉だけで大層な教育なんぞしてない。
ただ適当に、色々考えすぎずに"なんとなく"楽しく過ぎしてきただけだ
「なんとなく・・・・ね。無邪気な子供には無邪気な愛情をってか?」
ちょっとだけ自分の台詞に恥ずかしがりながら
もしかしたらいるかもしれない未来の我が子を想ってみた