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世界で一番可愛い女の子、僕の一番大事な大切な花梨ちゃん。僕と彼女は幸運にもお隣さんと言うやつだった。大好きな花梨ちゃんと一緒に育つ幸せったら!
まあ花梨ちゃんからは毎日ボロクソに言われるんだけどね、分かってます、君の気持ちなんてお見通しだよ分かってる。
「いいからはよレベル上げ」
「はーい」
僕の任務は花梨ちゃんのためにキャラクターのレベルを上げ、ストーリーをいい感じに進めること。フルボイスのストーリーはいいね、可愛い花梨ちゃんがふんふん満足そうに聞いてくれるから。
「花梨ちゃん、コラボカフェの写真、ほらコースター、ネロのやつ」
「缶バッジは?」
「さすがに無理だよー、交換してくださいって聞いてるけど全然。ネロそんなにいい?」
「よさが分かんないやつは黙っててくれます? うざ、つか頼んでないし」
「僕の方が花梨ちゃん好きなのになあ」
「うざ!」
花梨ちゃんのほっそりした手が僕の頰をつねる。全然痛くない。
「花梨ちゃん、明日も来るからね。明日も夜明けのコーラルでいい?」
「……来なくていいよ、別に」
「来させてよ、花梨ちゃんと一緒がいいよ。ずっと一緒にいたいんだ」
ばかじゃない、と言った花梨ちゃんの声は弱々しい。面会時間も終わって、個室を出る。看護師さんにぺこりと頭を下げて、お隣さんだったはずの僕らは、遠くに帰らないといけない。
花梨ちゃんの蹴りは痛かった。容赦ない締め技とか、照れて力いっぱい抱きついてくるのも正直痛かった。
よくなってねと、もう僕は言わなくなった。花梨ちゃんはもう、ゲーム画面を長く見るのも疲れてしまう。それでもよかった、花梨ちゃんと、最後まで一緒にいると僕は決めて、決めたのに。
「要するに、これって花梨ちゃんのための世界だったのかも」
隣でネロが怪訝な顔をしたが、無視をすると決めたらしく視線は本に戻っていった。
トラック転生ってよくあるけど、病気の女の子パターンもあるし。頑張った花梨ちゃんのための世界に、うっかり僕が間違ったのかも。泣きながら自転車は漕いではいけない、いい教訓です。
花梨ちゃんが好きで、花梨ちゃんが大切にしてたゲームだから僕も尊重したかった。守ってあげたかった。その為にもめちゃくちゃ頑張った、聖女の回復魔法を習得しようと荒技を使って全身の皮膚がやばい事にもなりました。シナリオ破壊を序盤でやるとこだった、さすがに花梨ちゃんに怒られる。
「でもあんなのがいたら花梨ちゃんも楽しめないよ、僕でよかった」
ネロがため息をついてこちらを見た。
「東国の資料はこれで終わりのようです。あとは現地に行かねばはっきりとは」
「そう、じゃあ決まりだね」
夜明けのコーラルの舞台、ユリオラ王国を出て進路は東に。国の危機に巫女を召喚する、神秘の国。それを足掛かりに、異界の門からどうにか花梨ちゃんのお隣さんに戻る作戦なのである。
「待っててね、花梨ちゃん」
例え僕の姿も性別も何もかも変わっても、もしかしたら君の姿も変わってるかもだけど。僕は君と一緒がいい、一緒にいたい。たくさんの命を経験値に変えてでも、絶対君に届いてみせる。
僕はずっと、君に恋してる。




