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 不本意ながら呼び出された場所に転移したが、即座にまた転移しなかった自分を誰か褒めて欲しい。

「見たほうが分かりやすいでしょ、こいつネロ。魔王」

 硬直ならいい方で、自分の威圧感にばたばたと子供が倒れていくのが見える。すぐに魔力を絞って気配を抑えたが、気分が悪い。

 我が主人はそんな光景も気にせず喋り続けている、狂人め。

 無防備な布しか身につけず、武装すらしていないのになんとか戦意を見せようとする雛のなんと無残な事か。

「コーラル様、これは?」

「シナリオは破棄だ、もういらないってさ。僕も正直令嬢ごっこはなあ、いびられるし殺せないのがストレスすぎる」

 こんな狂人を令嬢扱いしてくれた学生たちに同情する、その未来にも。

「なんでぇ……ラスボスが、ヒロインと」

「こらこら、これでもネロは攻略対象だよ。頑張りなよ、君、助けないの?」

「だって、ネロは全クリ後の、うそ、うそ」

「強くてニューゲーム?はは、殴ればいけるって。いやごめんね、それは冗談。僕もちょっと手違いでさ」

 聖女と呼ばれるこの化物は、レベリングというものが大好きらしい。幼くあどけない血塗れの子供は嬉々として民を殺し尽くした。戦えば戦うほど手強く、一撃で殺さねば致命傷ですら癒してみせる。信頼する大切な部下を失いおめおめと生きている。自分が、攻略対象とかいうものだったせいで、こんな生き恥を。

 名前を知って謝られた日の屈辱と、死なずに済むと安堵した情けなさと。

「ラスボスまで行く気なかったんだよ。でもコツコツやったらいっちゃって。初期の村からラストダンジョンいけるってウケるね! ゲームだとストップかかるから止まれるんだけど困るなあ」

 そう言って、背後に迫っていた衛兵たちを腕の一振りで殺してみせた。

「お、そこそこの経験値。いいね、新しいマップはこうでないと」

「コーラル様」

「はいはい。そこの、これは宣戦布告だよ。大丈夫、今は殺さないから。シナリオ破棄は君の意志だけど、先にめちゃくちゃにしたのは僕だしね。責任を持って、ラスボスを務めるよ。装備を整え、戦力を集めて殺し合おうじゃないか」

 真面目ぶって厳かに宣言したつもりだろうが、高い声と軽薄さで上滑りしている。そもそも経験値とやらが目当ての癖にわざとらしい演技が鬱陶しい。

「かくて悪女コーラルは魔王城へ! 乙女と勇者は手を携え、世界の危機へと挑むのであった!」


 けらけらと狂人は笑う。転移する最中も、子供たちは血に汚れて呆然とするばかり。ため息をついて目を閉じた。

 ああ、もう何も見たくない。

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