『見えないアクリル板』リアゼノンIFストーリー
◇◇◇リアゼノン第五層◇◇◇
「ガロン‼ カメラ準備できたか?」
「もちろんなのです‼ モードレさん‼」
「よし‼」
暗い迷路の中で着々と準備が進む収録班。俺はその様子を見学しながら、開始の合図を待つ。
感染症が流行っているということで、それに合わせたセッティング。奥の方では、ルグアの兄ルクスが、手を振るのと駆け足を練習中、
ってか、仮想空間なんだから別にする必要なくね? それより、なんでこんなことになったん?
「アレンも位置についてくれ‼」
「そうっすね。分かりやした‼」
俺は、ルグアの隣に立つ。視線を少し下げると、ルクスの娘のラミアとファリナが、胸を踊らせていた。
ガロン達は収録班側なので、参加はしないけど……。それでも緊張感でいっぱいになる。というよりも、こっちの方が緊張する。
「では、テイク1なのです‼」
『せんぱーい‼』と行って駆け寄ってくる一人の男性ルクス。だけど、一回目は何故かつまづき、すってんころりん。
その状況にルグアは頭を抱え、子供達は呆然とする。俺もそれしか反応できない。仮想空間でズッコケるわけないもん‼
それよりも、よくズッコケられるよね? ルグアのお兄さんなんでしょ? カメラサービスが上手かったりして(苦笑)
「では、テイク2なのです‼」
そして始まる2回目。一回目と同様に手を振り駆け寄ってくるルクス。だが、それをルグアは見逃さなかった。
「ルクス危ない‼」
『先輩?』
「前だ前を見ろ‼」
――バシンッ‼
ルクスがなにかに激突した。これにはラミアとファリナの大ウケらしく、お腹を抱えてひっくり返る。
激突した張本人も、どこか気まずそうな表情。俺も助けようがない。んなことよりなんであんなところで?
俺はルクスがぶつかった場所を見る。そこには薄っぺらい透明な板。いや、これはアクリル板だよ‼
「なんでこんなところにアクリル板が?」
「片付け担当のミスだな」
「片付け担当っすか?」
ルグアが収録班を見つめる。そこには美味しそうに魚を頬張るフランが、カメラ前を陣取っていた。
「ってことはつまり……」
『フランさんが邪魔で、撮影できていないのです……』
全員「『おいッ‼』」