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「平凡な一週間」(インスタントフィクション)

作者: OvidiusⅢ

誰もが子どものころから知っている方のお話を聞いてきました。

次あったときに聞いてみてください。

 森を歩いているとムカムカしてくる。

 俺なんか生まれてから必死こいて働いて生きていかなきゃいけねぇのに。こいつらは突っ立ってるだけで、やれ神が宿るだの、守るべき存在だのと、尊敬されていやがる。確かに俺だって世話になってるさ。だから、なんだか余計にムカつくんだよな。これからだぜ、俺。


 俺だって生まれてからもう大分たって、体も大きく、強くなったってのに。立派に成長して、ついこのまえ社会にまででたんだぜ。けどよ、誰にも見向きもされないんだから。父ちゃん、母ちゃんの顔なんてみたことないし。何もかも一人でやらなきゃならないだよ。可哀そうだよな、俺。


 まあ、社会に出たっても人目につかないように、こっそりとだったけどな。あの頃は自分に自信がなかったのさ。けど、今の俺は違うぜ。一人でなんだってできるし、声だってこんなに響くんだから。俺だってできるって所を見せてやる。 そう思ってた矢先だよ。俺の努力をあざ笑うように騒めきやがって。仕事をするために森にはよくいくんだけどよ、そのたんびにイライラ、ムカムカして仕方がねぇんだよ。ダチには「森なんてところでやってられっか!」って出てっちまったやつもいたけど、、、。俺は逃げたくない。笑われたまま終わりたくない。そんなガッツで今まで耐えてきたんよ。偉いよな、俺。


 だから、社会に出てからずっと頑張ってよ。それなりに成績は残してたんだぜ。社会が大きく揺れても、散々うちのめされても、耐えて、耐えて、耐え抜いて。つらい人生の夜を迎えたもんさ。しかしな、あいつらはずっと上から見下ろしやがって。俺の努力がかき消されんばかりに騒めくんだ。つらいよな、俺。


 しかしな、そんな俺の人生にも春ってのがきたのよ。必死に働いてればいいこともあるってもんよな。それに子宝にも恵まれて幸せもんだよ。しかも俺を励ましてくれてよ。「いつか、貴方が尊敬される日が来ます。」って言ってくれてよ。初めて泣いちまったよ。辛くて長い若かりし頃を思い出してな。これからは、生まれてくる子どもたちの為にも、あったかい家庭を作るって決心を固めたんよ。まだまだこれからだぜ、俺。


 それから、また社会が荒波に呑まれても俺だけは頑張るつもりだったんだがな、ちと頑張りすぎたかもしれん。体が言うことをきかんし、ボー、、っとして、何をしようとしてたのか、わからなくなるんだ。森は若い頃よりも大きくさざめいていやがる気がするし、俺の響いてた声も随分としわがれてしまったもんだわ。だんだん肌寒くなってきたし用心しねぇと。まだまだこれからだよな、俺。


 もう身体は動かなくなっちまってよ。森に文句いってたころの饒舌ぶりもなくなっちまったよ。だがな、かみさんだけは傍にいてくれてよ。「よく頑張ったわね。」なんて抜かしやがる。泣きながら。幸せだな、俺。


ただ、子ども達の顔は見たかったな。


家の近くで、久方ぶりに鳴き声を聞いて思いつきました。風物詩ですね。

命に短いも長いもないような気がします。

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