5.大型
捕食獣の攻撃を防いだのは光の異能だった。
光子の盾。
「あ、ありがとうございます」
「今のうちに逃げて!」
「はい!」
光に促され、桜が距離をとる。
一方、光のシールドに弾かれた捕食獣。
態勢を立て直し、今度は光に向かって飛びかかった。
光が再度、異能を発動する。
だがそれはいつもの物とは違った。
――多重の盾。
今までは基本的に一枚ずつしか発動しなかった。
それが今回、一度に10枚のシールドを生成している。
光も別の任務を経て、成長しているようだった。
一枚目のシールドに飛びついた捕食獣。
前足や頭突きではびくともしなかった。
だが。
捕食獣がシールドに牙を立てはじめた。
シールドにひびが入る。
そして。
パリン!
一枚目のシールドは簡単に破られた。
「そんな!」
シールドの欠片を飲み込んでいく捕食獣。
そして2枚目のシールドに噛みつき始めた。
「くっ! 長くはもたないかも」
光が言った。
到極たち4人も光に加勢する。
前後左右あらゆる方向から捕食獣を攻撃する到極たち。
だが、まだ。
決定打が足りない。
「くっ、どうする?」
考える到極。
そんな到極にティアが言った。
「……私に考えがある」
「本当!?」
「うん」
それからティアは到極たちに時間を稼ぐように言った。
言われた通りにする到極たち。
その時はすぐに訪れた。
ティアの異能、光る巨大な腕。
それを生成するための時間稼ぎだった。
その腕が捕食獣に狙いを定める。
そして。
巨大な拳が捕食獣めがけて飛んでいった。
めいっぱい口を開いて待ち受ける捕食獣。
拳と口が重なる。
その大きな口を拳が完全に塞いだ。
徐々に飲み込まれていくティアの異能の腕。
「くっ!」
ティアの口からそんな声が漏れる。
「礼夏、お願い……!」
ティアが続けてそう言った。
「っ! うん!」
一瞬、戸惑う礼夏。
だがすぐに理解した。
ティアの目的は捕食獣の口を完全に塞ぐこと。
自分が犠牲になって。
今なら異能を当てられる。
礼夏が右手に力を込める。
そして。
「はああああっ!」
礼夏が異能を発射した。
紫色の光線が捕食獣の胴体に命中する。
そして。
次の瞬間には、捕食獣の腹には大きな穴が空いていた。
力が抜けたように活動を停止する捕食獣。
それに合わせてティアも異能を解除した。
その場にへたり込むティア。
「もう、あんたは、また無茶して!」
礼夏が駆け寄って言った。
「さっきはこの方法しか、思いつかなかったから」
右手をさすりながら言うティア。
この日、到極たちは初めて捕食獣の討伐に成功した。
だがそれは6人で協力し、さらにティアが自身を犠牲にするような方法だった。
あの日の十傑のようにはいかなかった。
――。
――――。
――――――。
それから数日。
到極たちの捕食獣との戦いは続いていた。
初日に比べると少しはコツを掴んだような気もするが、それでもまだ誰も怪我することなく討伐するという目標は達成できていなかった。
そんなある日、また一匹の捕食獣出没の知らせを受け、到極たちは街中に向かった。
◇ ◇ ◇
「おいおい」
「嘘でしょ」
「大きい……」
そんな声を上げる隼人、礼夏、桜。
街中で、到極たちは巨大な影を見上げていた。
20mほどある大型の捕食獣。
そんな怪物がビルの間から到極たちを見下ろしていた。
「こんな奴がいるなんて聞いてねぇぞ!」
隼人が言った。
捕食獣が到極たちを視界に捉える。
そして巨大な前足を振り下ろした。
「みんな逃げて!」
急いで散らばる6人。
間一髪、直撃は避けられた。
だがその一撃だけで、道路にはひびが入り少し凹んでいた。
「こんな奴、どうやって倒せばいいんだ!?」
動揺する到極。
攻撃を避けるだけで精一杯のチームL。
「はぁはぁはぁ」
次第に6人の動きが鈍くなってきていた。
このままではジリ貧だ。
到極たちはそう思い始めていた。
だがそんな時だった。
突然、地面から4本の鎖が飛び出した。
そのまま捕食獣の四肢を拘束する鎖。
鎖は黄金色。
捕食獣でも引きちぎれないほど強力だった。
そして。
ザンッ!
次の瞬間、捕食獣は真っ二つに切り裂かれた。
割れるように左右に倒れる捕食獣。
その足元。
一人の男が大剣を持って佇んでいた。
◇ ◇ ◇
身構える到極たち。
だが。
「怪我はないか、お前たち」
男は敵意なくそう言った。
「は、はい」「あなたは?」
「俺はガイ。捕食獣の討伐をしてる者だ」
「もしかして、十傑?」
ティアが聞いた。
「よく知ってるな、お前たち。もしかして、あんたらが嬢ちゃんの言ってた異能者か?」
男の名はガイ。
鍛え上げられた肉体を持つ男。
先日結城と共に討伐を行っていた男性だった。
「ガイ。楽しそうなの見つけたじゃねぇか」
するともう一人。
向こうから女性がゆっくりと近づいて来ていた。
女の名はギャラル。
背の高い金髪の女性だった。
こちらも引き締まった体をしていた。
彼女もまた十傑の一人だった。
「なぁ、ガイ。この間の約束、憶えてるよな?」
ギャラルが言う。
「あぁ……」
それに対してキレ悪く答えるガイ。
そして仕方なくという感じで桜、隼人、光、礼夏の前に立ち塞がった。
桜たちに駆け寄ろうとする到極とティア。
「まぁ待てよ。逃げんなって」
ギャラルが言う。
ガキン! と何かが到極とティアの動きを止めた。
黄金の鎖。
それが2人の腕に絡みついていた。
「ちょっと私と遊ぼうぜ!」
ギャラルが言った。
チームLと十傑の戦いは突然始まった。




