1.捕食者
2065年10月。
現在シェアハウスのメンバーは。
到極、ティア、桜、隼人、礼夏の5人。
先日、ある騒動があった。
E.D.O本部が攻撃を受けたのだ。
騒動は終息したものの、本部は半壊。
現在もまだ修復中だった。
【第17章 アークイーター編】
チームLのシェアハウス。
リビングで到極とティアが過ごしていた。
ソファーに座り、考え込む到極。
「……どうかした?」
ティアが聞いた。
「うん、ちょっとね」
「この間のこと?」
「うん」
ティアの問いかけに到極が頷いた。
到極は思い出していた。
数日前、自分たちが遭遇したある人物のことを。
◇ ◇ ◇
数日前。
到極とティアは本部近くの道を歩いていた。
E.D.O本部からシェアハウスに帰る途中だった。
そんな時。
向こうからひと組みの男女が近づいてきた。
到極と男、ティアと女の目が合う。
互いに足を止める4人。
数秒間の静寂。
先に話し始めたのは男の方だった。
「――ティア、それと君が到極縁か」
「……っ!」
その言葉を聞いて男を警戒する到極とティア。
だが男は。
「そんな警戒しなくて良いって」
そんな風に軽い口調で言った。
スタイルのいい高校生くらいの青年だった。
「私たちのこと、知っているの?」
ティアが聞いた。
「そりゃあ知ってるよ、君は有名人だからね」
飄々と答える青年。
だがただ軽いだけではない。
その奥には何か底知れないものを感じた。
「何者なんですか、あなた達」
「俺か、俺は――」
到極の問いに答えようとする青年。
だがそんな青年を女が制した。
「ごほん、本日の任務はすでに終了しています。これ以上、安易な接触は控えるべきでは?」
赤い縁の眼鏡をかけた、高校生くらいの女子だった。
「はぁ、わかったよ」
その言葉を聞き、到極への回答を止める青年。
「わりぃ、そろそろ行かなきゃ。また今度な」
そう言って歩き出す青年。
引き止めようと手を伸ばす到極。
「ちょっと待って」
到極のその言葉を聞き、青年が振り返る。
「なに、またすぐに会えるさ」
そう言って去っていく青年。
「失礼します」
女子も2人に一礼すると、青年の後を追い去っていった。
到極とティアだけが、しばらくその場に残っていた。
◇ ◇ ◇
「誰だったんだろう、あの人」
考え込む到極に桜の声が聞こえてきた。
「皆さん、お茶が入りましたよ」
そう言って皆にお茶を配りはじめる桜。
「はい、到極さん」
「ありがとう、桜」
「はい、ティアさん」
「……ありがとう」
桜にもらったお茶を一口飲む到極。
「うん、おいしい」
「ふふ、ありがとうございます」
自分の淹れたお茶を褒められてうれしそうな桜。
「何か、あったんですか?」
桜が聞いた。
「うん、大したことじゃないんだけどね」
そう言って到極は桜に数日前のことを話し始めた。
――。
――――。
「そうだったんですね、そんなことが」
桜が言った。
そして少し考えてから続けた。
「あの、私にできる事があったら言ってくださいね」
「桜?」
「私、力になりますから。その、大したことは出来ませんけど……」
5人の中で一番非力な桜。
そんな自分が回復役以外でどう役に立てるかは分からない。
だがもしも、そんな自分にも到極の憂いを晴らすためにできる何かがあるなら、それを精一杯したい。
と桜は思った。
「ありがとう、桜。頼りにしてる」
到極が言った。
「はい!」
そんな到極の言葉に桜は嬉しそうに頷いた。
◇ ◇ ◇
ある日の放課後。
買い出しに出かけた到極たち5人。
スーパーで買い物を済ませた帰り道。
「いっぱい買いましたね」
「これくらいいるって。そろそろ光も帰って来る頃だしな」
そんな話をしながら歩く5人。
辺りはすっかり暗くなっていた。
そんな時だった。
「なんだ、あれ」
ふと、隼人が何かを見つけて言った。
隼人の視線の先に注目する到極たち。
確かに何かがある気がしたがここからではよく分からない。小走りで近づく到極たち。
そして気付いた。
その何かを認識した。
そして、戦慄した。
血を流して倒れている人間。
アスファルト上に小さな血溜まりができていた。
だがそれだけではない。
くちゃくちゃくちゃ。
そんな音を立てながら人間を貪る白い獣。
「何なのよ、コイツ……!」
礼夏が言った。
ギロッ、とこちらを向く白い獣。
「ひっ!?」
思わず後ずさる桜。
ゆっくりとこちらに向かってくる白い獣。
特徴的な目に大きな口。無機質な白い肌。
2mくらいの獣が四足歩行で迫ってくる。
だが。
――――!
何かを察知し動きを止める獣。
辺りを見回す。
そして。
――ダッ!
急に進行方向を変え、どこかに駆け出していった。
呆気にとられる到極たち。
だがすぐに。
「わ、私あの人を助けてきます」
桜が言った。
「わかった。僕は距離をとってアイツの跡をつけてみる」
到極が言った。
あの獣によって他にも被害が出るなら、それは到極には見過ごせないことだった。
「私は桜さんに付いてる」
ティアが言った。
「お願い」
そう言って駆け出す到極。
隼人と礼夏も到極の後に続いた。




