表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能と青春  作者: 成海由華
生徒会長編
92/100

6.放課後

 放課後。

 旧校舎、空き教室の前。


「それではボランティア部の審査を始めます」


 生徒会副会長、平田が言った。

 今日はボランティア部審査の日だった。


 教室の前で隼人、神崎、望月、氷室が並んでいた。


「4人ですか? 部活として認めるにはあと一人必要ですが」


 平田が聞いた。


「まぁ、それは追い追い。まずは部室を見てってくれ」


 そう言って隼人が教室の扉を開けた。

 中に入る隼人と平田。


「去年まで使われていなかった教室ですね。よく片付けられているようですし。はい、これなら問題ありません」


 教室内を見渡して平田が言った。


「よし!」


 小さくガッツポーズする隼人。


「次は顧問だな。顧問は――」


 隼人はそれから顧問や活動内容について説明した。


 顧問は川谷先生。

 活動は月に一度。

 内容は町内のごみ拾い、地元の保育園や老人ホームへの訪問、駅前での募金活動など。


 内容については、去年までのものを参考に神崎と望月が考えたものだったが。


「はい、どれも問題ありません。あとは部員だけですが」


 平田が言った。


「お待たせしました、こちらです」


 隼人はそう言って改めて教室の奥を見せた。

 そこには部屋の一部を仕切り、向こう側を隠すように張られた大きな布があった。


「実は5人目の部員はとても恥ずかしがり屋でして。なのでこのような装置を用意しました。このまま進めてもらえませんか」


 隼人が言った。

 布には女子生徒と思しきシルエットが映っていた。

 神崎たち3人もその布の周りにいた。


「……分かりました。ではいくつか質問させてください」


 そう言って布の前の椅子に腰掛ける平田。

 平田が続けた。


「まずあなたのお名前は?」


とまりです。2年生です」


 布の向こうからそんな女子の声が聞こえた。


「泊さん。確かに2年4組に在籍しているようですね」


 平田が持参した資料を見ながら言った。


(よし、上手くいってるな!)


 隼人が心の中で言った。


 一方、布の向こう側では。

 平田に見えないように3人が必死に手を動かしていた。手には紐が握られていた。

 そして、紐の先には。


 椅子に置かれた状態のトルソーがあった。


 結局、部員は4人しか集まらなかった。

 それでも何とか部活動として登録したい。

 そして。


 架空の5人目の部員がいるように見せかける。


 それが隼人が考えたアイデアだった。

 胴体はトルソー、頭はボール、手足は木材。

 声は神崎が当てていた。


(事前に不登校の生徒を調べておいて正解だったぜ)


 隼人が思った。

 この場にいない生徒の名前を勝手に借りるアイデア。

 神崎からは反対されたが強引に押し切った。


 その後も平田はいくつかの質問をした。

 当たり障りのない回答をする泊こと神崎。


 審査も終盤に差し掛かった頃。


「最後に、その場で立ち上がって私の言うポーズをとっていただけますか」


 平田が言った。


「え? いや、その」


 思わぬ要求に動揺する隼人。


「何かマズい事でもあるんですか?」


「い、いや。何にも」


 そう言って布の向こうを心配そうに見つめる隼人。

 平田がポーズを指定する。

 従う神崎たち。

 だが。


「氷室先輩、そっちは左手です」

「神崎さん、僕のと絡まってます」

「望月くん、ぶつかってるよぉ〜」


 そんな3人の声が聞こえてきた。

 そして。


「「「うわぁ〜!」」」


 ズザァー!


 3人が平田たちの側に倒れてきた。

 布が外れ、仕掛けが明らかになる。


「いや、これはその……」


 隼人が何か言おうと口を開く。

 だが。


「はぁ、こんな事だろうと思いました。結果は後日お伝えしますので。それでは」


 そう言って鞄を持ち、席を立つ平田。


「待ってくれ!」


 引き止めようとする隼人の甲斐むなしく、平田は教室を出て行った。




 ◇ ◇ ◇




 教室の外。

 平田が扉を閉めた。


「だから私は反対だったんです――」

「そんな事言ったって仕方ねぇだろ――」

「まぁまぁ2人とも――」


 そんな声が先ほどの教室から聞こえてくる。


「はぁ、まったく仕方のない方々ですね。油断も隙もない」


 平田が言った。

 窓の外はすっかり夕焼けに染まっていた。


 生徒会室に戻ろうとする平田。

 旧校舎から普段の校舎に移動し、階段の手前まで来た時だった。


「ちょっと待ちなさい」


 そんな声が階段の上から聞こえてきた。

 見上げる平田。

 すると、階段の踊り場に一人の女子生徒が立っていた。


 礼夏だった。

 窓から差し込む夕陽が後光のように礼夏を照らしていた。


「あなたは確か、海野さん。何か御用ですか?」


 平田が言った。




「――あんたでしょ、今回の脅迫事件の犯人」




 礼夏が言った。

 平田と礼夏の間に流れる時間が、一瞬止まった気がした。




 ◇ ◇ ◇




 階段で対峙する礼夏と平田。


「何のことです? 仰っている意味が分かりませんが」


 平田が言った。


「言葉通りの意味よ。今回の事件はすべてアンタが計画したもの。生徒会に脅迫の手紙を出したのもアンタ」


「いい加減なことを言わないでください。第一、私は事件の被害者なんですよ、想像でものを言うのは――」


 そんな平田の言葉の最中だった。

 ヒュン! という音が鳴った。

 礼夏の異能だった。


 物質を消し去る光線。


 礼夏が平田の鞄を撃っていた。

 底が抜け、散らばる教科書やノート。

 その中には。


 この間の封筒と同じ封筒が何通も混じっていた。


「あら、これでもいい加減な事だったかしら?」


 礼夏が言った。

 今回の事件が平田の自作自演であることはもう明らかだった。


 動揺する平田。


「っ! ……緊急性のない状況で異能の使用し、生徒の持ち物を破損させた。重大な問題行為ですよ」


「それが? だから何? 私は到極やティアみたいに甘くない。あんたがもし歯向かってくるなら、次はあんたの体を撃ち抜く」


 そう言って指で銃の形を作り、平田に向ける礼夏。


「……っ!」


 歯を食いしばる平田。


「…………か」


 少しして平田が口を開いた。


「何が悪いっていうんですか。怪我したのは私一人じゃないですか。これは学園のためなんですよ。こちら側が正義なんです。だからこれ以上、私の邪魔をしないでください!」


「そう、まぁ確かに、私はあんたが何の為にこんな事をしたかは知らない。あんたにはあんたなりに立派な目的があるのかも知れない」


 でも、と。

 礼夏が続ける。


「それでも、このままアンタの好きにはさせない」


 礼夏がそう言い切った。

 少しの静寂が2人の間に流れる。


 再び礼夏が話し始めた。


「あたしの知り合いに、一人どうしようもない馬鹿がいるわ」


「ばかで、ぐずで、弱っちくて、頼りなくて。そのくせ困ってる人を放っておけなくて。だからいつもボロボロで傷だらけな、そんな奴」


「ほんとばかよね、あいつ。簡単なことじゃない。少し考えたら分かることじゃない」


 監視カメラに外部の人間が映っていなかったという事は、犯人は生徒会内部の人間。到極の話を聞いて、礼夏はすぐにそう思った。

 だが。


「それなのにあいつったら平田(あんた)の事これっぽっちも疑ってなくてさ。それどころか「絶対に犯人を捕まえて平田さんを安心させてあげるんだー」って言うのよ。笑えるわよね」


「あいつは今も学校中を駆けずり回ってる。他でもない、アンタを助けるためにね」


「犯人が見つからない限り、あいつはずっと走り続ける。そういう奴だから。だから悪いけど、アンタにはここで負けを認めてもらうわ」


 その言葉を聞いて、ここまで黙っていた平田が口を開いた。


「……。はぁ、分かりました。私の負けです」


「生徒会室に行って用事を済ませたら、そのあと先生にすべてを話します。では」


 そう言って階段を上り始める平田。

 用が済み、階段を降りる礼夏。


 途中ですれ違う2人。

 そんな礼夏の後ろ姿を、平田は恨めしそうに見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ