5.新しい部活
「皆さーん、晩ごはん出来ましたよー」
桜が言った。
到極たち5人が食卓に着く。
今日のメニューはオムライスだった。
「「いただきます」」
オムライスを口に運ぶ4人。
その姿、特に礼夏の姿を心配そうに見守る桜。
オムライスは礼夏の好物の一つだった。
「どうですか」
桜が礼夏に聞いた。
「うん。まぁ、悪くないんじゃない」
礼夏が言った。
言うとすぐに到極の方を向いた。
「それより気をつけなさいよね。あんた」
礼夏が続ける。
「あんたは真面目過ぎんのよ。生徒会の人のことも大事かも知れないけど、だからっていつもみたいに変な無茶しないこと、わかった?」
「わかった、気をつけるよ」
到極が言った。
その隣で。
(まぁ悪くない、か。うーん……)
桜は自分の作ったオムライスの反省をしていた。
◇ ◇ ◇
東京都贈ヶ丘中学校。
隼人、神崎、望月が集合していた。
「望月くん、今日は君がボランティア部に入るに相応しい人物か確認させてくれ」
隼人が言った。
「はい。よろしくお願いします」
真面目に返す望月。
隼人にはある思惑があった。
望月の欠点を見つけ出し落選させる。そして改めてハーレムを作り直す。これはそのための審査だった。
「そもそも君はなんでボランティア部に入りたいの?」
「はい。僕、将来は人のためになる仕事がしたくて。そんな自分にこの部活はとても合っていると思いまして」
(くそ! いい子なのかよ!)
隼人が心の中で叫んだ。
その後もいくつか質問したが、それはかえって望月の善性を証明する結果になった。
隼人の思惑は完全に砕けていた。
「性格もよくて体力もある。ボランティア部に相応しい人材ですね。ね、松島先輩?」
神崎が言った。
「あぁ……、そうだな」
隼人がうなだれながら言った。
「どうしたんですか、松島先輩?」
「何でもねぇ、何でもねぇよ」
(俺の理想が、俺のハーレムが……)
隼人はそれからしばらくの間、この調子だった。
◇ ◇ ◇
生徒会室。
生徒会役員たちが集合していた。
この間に引き続き、ティアも参加していた。
彼らは会議の最中だった。
「私は、予定通り開催すべきだと思う」
生徒会長、織田が言った。
謎の人物からの脅迫を受け、このまま生徒会選挙を開催するかどうか。その議論だった。
「でもそれだと、犯人がまた何か仕掛けてくるかも知れませんよ」
役員の一人が言った。
「だとしても、このまま脅迫に屈することはできない」
そう言って織田が平田の方を向く。
そして続ける。
「澄怜ちゃんはどう思う?」
「私は、会長について行きます。少し怖いですけど……」
平田が包帯の巻かれた指を見ながら言った。
数分後。
会議を終え、部屋を出て行く生徒会役員たち。
生徒会選挙は通常通り開催する予定となった。
そんな中。
ティアだけが席に着いたまま考え込んでいた。
その様子を織田は少し離れた場所から見ていた。
◇ ◇ ◇
2階の廊下。
うなだれながら歩く隼人。
「あ、隼人君だ。どうしたのー?」
そんな隼人に誰かが声をかけてきた。
振り返る隼人。
隼人はその人物を知っていた。
氷室らん。
夏休みの補習で会った女子だった。
氷室に話しかけてもらえたのは嬉しかったが、まだ先ほどまでに受けたダメージの方が大きかった。
「どうしたの? 元気ないねー」
氷室が言った。
「はい、実は新しい部活を作ろうと思って色々やってるんすけど、上手くいかなくて」
「新しい部活かー。なんか楽しそう」
「そうですよね……」
「私もやってみたいかも!」
氷室が言った。
「そうですよね…………」
聞き流す隼人。
だが。
「って、今なんて!?」
ようやく頭が理解し、隼人が言った。
慌てて氷室の元に駆け寄る隼人。
「今の話、本当ですか?」
「うん! だって楽しそうだもん」
聞き返す隼人に氷室が笑顔でそう言った。
――。
――――。
「というわけで、新しく入部してくれることになった氷室らんさんです!」
「らんでーす、よろしくー!」
隼人が神崎、望月に氷室を紹介した。
氷室を歓迎する2人。
「メンバーも増えてきたし、そろそろ部室と顧問も探さないとな!」
隼人が言った。
その言葉で、4人は分かれて行動を開始した。
――。
――――。
再び集合した4人。
「顧問は去年までボランティア部の顧問だった川谷先生が引き受けてくださるそうです」
神崎が言った。
「問題は部室だな、去年までボランティア部が使ってた部室はすでに取られてた」
隼人が言った。
「それなんだけど、旧校舎の空き教室なら使っていいって」
氷室が言った。
旧校舎の空き教室前に移動した4人。
「ここか」
そう言って隼人が扉を開ける。
中は埃っぽく、大量の備品が置かれていた。
運動部のボール。服飾部のトルソー。
過去の文化祭で使った木材の余り。
それらが適当に積み重なっていた。
「物置きとして使われていたみたいですね」
神崎が言った。
「ま、まぁ、掃除すりゃいいだけだ。問題ない」
若干、部屋の有り様に引きながら言う隼人。
「そうだね」
「やりましょう」
前向きに言う氷室と望月。
だが、その前に。
「神崎、ありがとな」
ふと、隼人が真面目な口調で言った。
「え、何ですか。急に」
神崎が思わず聞き返した。
「部員でもないのにここまで手伝ってくれて。神崎にはもう充分過ぎるほど助けてもらった。だから、ここから先は俺たちだけでやるさ」
隼人が続ける。
「ちょっと口うるさいと感じた時もあったが、助かった。ありがとう」
「先輩……」
そう言われて、少し考える神崎。
そして。
「その、いいですよ。私も、入部しても」
「本当か!」
「私も先輩たちと過ごしたこの数日間、それなりに楽しかったですし」
神崎がそう言った。
「これからよろしくね」
「よろしくお願いします」
氷室と望月も神崎を歓迎した。
「これで残すは部員一人ですね」
神崎が言った。
すると隼人は、目の前の空き教室を見渡して。
「それなら一つ、俺に考えがある」
自信あり気にそう言った。




