9.決戦
廃墟の二階。
到極と桜が部屋に入った。
部屋には机以外ほとんど物がなかった。
到極が机の上にあった手記を手に取った。
「これが、毒島さんの手記……」
桜が言った。
到極が手記をめくり、二人でそれを見る。
「「こ、これは!?」」
到極と桜はその内容に驚愕した。
それと同時に。
何者かが階段を登る足音が聞こえた。
到極と桜が敵の来襲に備える。
二人の目の前に辰巳が現れた。
「やっと追いつきましたよ。さぁ、文書をこちらに渡してください」
「こ、ここにはなかった!」
到極が言った。
「嘘をつくのがヘタですね、バレバレなんですよ!」
そう言って、辰巳が到極に向かって走ってきた。
狭い室内で長刀は不利だと判断した様で、到極に対して素手で向かってきた。
「だったら、ちからづくで奪うまで!」
辰巳と到極が組み合う。
到極は異能者だが、戦闘のプロではない。
到極はパンチやキックを繰り出したが、大振りな攻撃は辰巳にダメージを与えるには至らなかった。
それどころか。
辰巳が到極と組み合ったまま、窓に向かって走り出した。
(まずい!)
到極はそう思った。
バリン! という大きな音と共にガラスが割れる。
到極と辰巳がそのまま二階から落ちていった。
◇ ◇ ◇
とある山道。
礼夏、ティア、隼人の三人は両腕を破壊された機械兵士(機兵1)、新たな機械兵士(機兵2)の二体と対峙していた。
「隼人、あんたアイツらを羽交い締めにしなさいよ。私がまとめて撃ち抜いてあげるから」
「俺ごと倒そうとすんな、ラデ○ッツ戦のカカ○ットか俺は!」
礼夏の提案に隼人がツッコんだ。
「冗談を言っている場合ではないわ。私の異能で後から出てきた方の動きを封じるから、礼夏が仕留めて」
「私に指図すんな!」
ティアの提案に礼夏が文句を言いながら従った。
「じゃあアイツは俺一人で倒せってか?」
隼人が機兵1としぶしぶ向き合った。
「仕方ねぇ、やってやるよ!」
そう言うと隼人はアークを発動した。
「無限拳、啄木鳥ッ!」
隼人が一瞬で機兵1に詰め寄る。
そして拳を高速で突き出した。
「おりゃあああああっ!」
拳が何発も打ち出される。
その全てが機兵1の腹部を捉え続ける。
「これで、終わりだーッ!」
隼人が機兵1に最後の一撃を与えた。
機兵1が吹き飛び、後ろの大木にぶつかった。
バチバチ、という中身の機械が壊れる音と共に、機兵1は動きを停止した。
一方、ティアは機兵2と向かい合っていた。
異能で幻影の両手を作り出し、機兵2を拘束する。
「くっ、礼夏、早く……っ!」
「私に指図すんなって、言ってんでしょーが!」
礼夏がアークを発動した。
紫色のビームが機兵2を撃ち抜いた。
機兵2は動きを停止した。
「さ、急ぐわよ――って、きゃっ!?」
礼夏がよろけ、そのまま倒れ込んだ。
ティアも地面にへたり込んでいた。
隼人も息を切らし、その場に座っていた。
アークは生命力や体力を消費して発動される。
そして感情や集中力に応じて力を増減させる。
三人は、エネルギー切れを起こしていた。
「はやく、アイツを追わなきゃ……」
その言葉とは逆に、礼夏たち三人はしばらくその場を動けなかった。
◇ ◇ ◇
廃墟の二階。
桜が慌てて窓まで走り、窓から下を見た。
「到極さん大丈夫ですか!?」
地上では到極がうずくまった状態から、なんとか立ち上がろうとしていた。
桜は到極がとりあえず無事だったことにホッと胸を撫で下ろした。
そして階段を降りて到極のもとへ向かった。
地上では到極と辰巳が向かい合っていた。
「二階から落ちてその傷、あんたも異能者か!」
到極が言った。
異能で肉体を強化した到極が怪我をしているのに。
辰巳はほぼ無傷だった。
「えぇ、いかにも。でもどんな異能か分からなければ対策のしようがないでしょう?」
辰巳はそう言うと、背中に背負っていた長刀を抜き両手で握った。
(どうする! どうすれば良い!?)
到極が動揺する。
今の到極の異能では刃物の攻撃を生身で防ぐことはできなかった。
それに加えて刃物はリーチが長い。
到極にとって、相性の悪い相手だった。
辰巳が走る。到極に向かって。
到極の動揺が加速する。
(やばい! このままじゃ、"死ぬ"!)
その時だった。
「到極さん、受け取ってください!」
桜の声だった。
桜がそう言って何かを投げた。
異能警棒。
桜が持ってきていた護身用グッズだった。
到極は警棒を受け取ると、とっさに異能を込めた。
ガキン! と金属同士がぶつかる音がした。
辰巳の一撃を、到極が警棒で受け止めていた。
「よかった……」
桜の口から安堵の声が漏れた。
到極が辰巳の刀を振り払う。
そして今度は到極が警棒で攻撃した。
何度も何度も、金属のぶつかる音が響く。
到極の体には浅い切り傷がいくつも出来ていた。
だが優勢だった辰巳が、次第に劣勢になっていた。
動揺していた到極が落ち着きを取り戻したことで、アークの力が増大していた。
到極の攻撃が加速し、次第に辰巳を捉え始めた。
辰巳も必死でさばくが、徐々にダメージを受け始めていた。
互いの武器にヒビが入る。
打ち合うごとにヒビは段々大きくなっていった。
そして、遂に。
「おりゃあああああ!」
両者の最大の一撃がぶつかる。
辰巳の刀と、到極の警棒。
二つの武器が、同時に砕けた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
無数の切り傷と打撲によって、到極の身体は多大なダメージを受けていた。
「ここから先は"拳"の勝負になりそうですね」
辰巳が言った。
桜は到極の様子を心配そうに見つめていた。
到極は拳を握り、辰巳に向かって歩き始めた。




