2.神崎煉
チームLのシェアハウス。
リビングに到極と隼人がいた。
「そうか、わかったぞ!」
突然、隼人が言った。
「うわぁ! 急に大きな声出さないでよ、びっくりするじゃない」
そう言って隼人の方を見ると、隼人は目を輝かせながらこちらを見ていた。
(話、聞いて欲しそうだな……)
「……、何がわかったの?」
隼人の意図を汲んで到極が聞いた。
「俺は常々、自分の学園生活には何かが足りないと思ってたんだ。で、それが今わかったんだ」
隼人が自信満々に言った。
ピンとこなくて首を傾げる到極。
「部活だよ、部活! 美少女たちに囲まれながらお茶したり、ゲームしたりする。そんな天国みたいな日常が、俺には足りなかったんだ!」
隼人がわくわくした様子で言った。
「そうと決まれば早速、新部活の設立だ!」
そう言う隼人の表情は、到極が見た中で一番やる気に満ちているように感じた。
◇ ◇ ◇
翌日。
東京都贈ヶ丘中学校。
職員室。
「新しい部活を作りたい?」
2年2組の担任、水沢先生が言った。
「はい!」
隼人が元気よく言った。
その言葉を聞いて、水沢は書類の入った棚から一枚のプリントを取り出した。
それを隼人に差し出す水沢。
「はい、これ」
「何すか、これ?」
隼人が聞いた。
「新部活動申請書。この申請書を書いて、生徒会に提出するの。認められれば部活として活動できるわ」
水沢が言った。
「ありがとうございます! 失礼しました!」
隼人はそう言ってすぐ職員室を出て行った。
「あ、あのー。詳しい説明、聞かなくていいの?」
一人残され、水沢がぽつんと呟いた。
◇ ◇ ◇
休み時間。
到極と隼人は2階の廊下を歩いていた。
「いやー、楽しみだなぁ」
「よかったね、隼人」
隼人の言葉に到極が返した。
隼人の手には新部活動申請書が握られていた。
2人が廊下の曲がり角に差し掛かった時だった。
一つの人影が曲がり角から現れた。
そして、到極を認識するなりこう言った。
「やっと見つけた」
と。
「えっ」
一瞬固まる到極。
(こんな子、この学校にいたっけ?)
すぐに誰とわかる人物ではなかった。
両者の間に不穏な空気が流れたような気がした。
(えーと)
だがすぐに思考を再開する。
目の前にいる人物を観察し、過去の記憶と照らし合わせていく。そしてある一つの可能性にたどり着いた。
(もしかして……)
到極が口を開く。
「もしかして、煉くん?」
「うん。久しぶり、縁ちゃん」
そう言って目の前の人物は笑顔で到極の手を握った。不穏な空気が一気に晴れた。
神崎煉。
中学1年生のボーイッシュな少女だった。
髪型はショートヘアー。制服はセーラー服でその上からパーカーを重ね着していた。
「大人っぽくなったね」
「縁ちゃんは背伸びたね」
朗らかな雰囲気で話し合う2人。
「なんだ、知り合いか?」
そんな2人の会話に隼人が入った。
「ごめん隼人、2人で話進めちゃって。紹介するね。
神崎煉くん。僕のいとこなんだ」
到極が言った。
彼女と到極は親が兄弟同士、従兄弟の間柄だった。
「こっちは僕の友達の隼人」
到極が今度は隼人を紹介した。
「松島隼人だ、よろしく」
「……どうも」
隼人と神崎が互いに挨拶した。
「じゃあ俺、先いってるわ」
そう言って、隼人は一足先に教室に戻って行った。
隼人が去った後。
「あれ、でも煉くんって入学式にいた? いなかったような」
到極が神崎に聞いた。
「うん。途中で転校してきたの」
「そっか、それで」
「これからよろしくね」「こちらこそ、よろしく」
2人が言った。
そろそろチャイムが鳴る時間だった。
到極と神崎はそれぞれの教室に戻っていった。
◇ ◇ ◇
放課後。
桜、隼人、礼夏が下校した後。
生徒会室。
中央には机が並べられ、壁際の棚には大量の書類が収納されていた。
そんな教室で黙々と作業する生徒会役員たち。
その中にはティアと到極の姿もあった。
ティアの横には役員の一人がついて仕事を教えていた。
「そうそう。ティアさん仕事が早くて助かるわ」
役員の一人が言った。
一方、到極の横には織田がついていた。
「悪いね、君にまで手伝ってもらっちゃって」
「いえ、ティアを待ってる間、暇でしたから」
そんな話をしながら作業は進んでいた。
その中でも平田は特にてきぱきと作業をこなしていた。
書類に目を通し、次々にハンコを押していく平田。
書類の山がみるみる減っていく。
(えーと、次は)
平田が次の書類に目をやる。
その書類は。
――――――――――――――――――――
【新部活動申請書】
〈部活名〉ハーレム部
〈活動内容〉学校中の女子を勧誘し、男は俺だけのハーレムを作ってイチャイチャする!
〈部員〉2年2組 松島隼人
〈使用教室〉2階の空き教室のどこか
〈顧問〉必要なし!
――――――――――――――――――――
「却下!」
平田が思わず叫んだ。
「全く、何ですか、これは」
呆れる内容が書かれた書類を仕分ける平田。
次の書類を取ろうと手を伸ばす。
だが。
「あれ? 何でしょう、これ?」
書類の山の次にあったのはプリントではなかった。
封筒。
表にも裏にも何も書かれていなかった。
不思議そうに封を開ける平田。
だが次の瞬間。
「――痛っ!?」
そんな声が生徒会室に響いた。
到極たちが慌てて声のした方を見る。
そこでは平田が苦悶の表情をしていた。
そして。
その指からは真っ赤な血が垂れていた。
垂れた血が、封筒から出たカミソリの刃を赤く染めていた。




