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異能と青春  作者: 成海由華
王女護衛編
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10.井上レオン

 レオンの精神世界。


(あれ、僕は一体なにを)


 レオンが思った。

 そんなレオンに薄っすらと声が聞こえてきた。


『思い出してください、本当のあなたを』


 その言葉を聞いてレオンが考える。


(本当の自分……)


 そして。


(そうだ、僕は!)


 レオンは思い出した。

 自分を慕ってくれていた貧民街の子供たちのことを。


『お兄ちゃん、いつも遊んでくれてありがとう』

『また一緒にご飯食べようよ』

『帰ろう、レオンお兄ちゃん』


 レオンの前で子供たちの幻が言った。


(そうだ、戻らなくちゃ。みんなの所へ)



――。

――――。



 現実世界。

 機械の手がわずかに緩んだ。

 その隙を見逃さず、到極が脱出した。


「馬鹿な、なぜ」


「あったって事ですよ。あなた達がバード教の神様を大切に想うように、レオンさんの心にも、あなた達とは別の、大切に想うものが」


 到極が言った。


「ふざけるな。神の使命を超える大切なものなど、あってはならない」


 そう言って男が再びレオンに指示を出す。

 苦しみ出すレオン。

 必死に指示に抗っている証だった。


 対する到極も、もう満身創痍だった。


(ここでレオンさんが解放されてくれたら、助かるんだけど……)


 だが。


 レオンが再び男の支配下に落ちる。


「くっ、駄目か!」


 機械の手を振り上げ、レオンが迫る。

 だが。




 機械の手は到極には当たらなかった。

 機械の手を"異能の手"が押さえていた。


「ティア!」


 到極が言った。


 気がつくと一台の車が到着していた。

 その車から降り、ティアが異能を発動していた。


 到極に反応し、無言で頷くティア。


 機械の手と異能の手が互いに組み合う。

 指と指を交互に絡ませ、力比べになる。


 全力を解放するティア。


 互角だった。チームB相当のレオン。

 そのレオンと互角の勝負を繰り広げていた。


「くっ――!」

「ぐううううっ!」


 異能を通してティアが、機械を通してレオンがダメージを受ける。


 ティアを助けるため、レオンを倒すため、到極がレオンのすぐそばまで近づく。

 腕を大きく振り上げる到極。

 そして。


「でぃやああああっ!」


 到極がその右手を勢いよく振り下ろした。

 手刀。到極がレオンの左腕と機械の接続部分をチョップで破壊した。


 肉体に繋がっていたケーブルが引き抜かれる。

 レオンの左腕が血で染まった。


「ぐあああああっ!」


 雄叫びのような悲鳴をあげるレオン。


「すみませんレオンさん。すぐ終わらせますから」


 苦しむレオンに到極が言う。

 そして駆け出す。


「【第三艤装】爆拳バグパンチ!」


 到極の必殺の異能が炸裂した。




 教会の外に出たシルヴィアとドロシーが見たのは、まさにそんな場面だった。


 王女を守るために、ぼろぼろになりながら敵と戦い、勝利した少年。

 そんな少年の姿が、2人には輝いて見えた。


 2度の必殺技を受け、レオンは今度こそ動きを停止した。


 一方、到極ももう限界だった。

 力が抜け、倒れる到極。

 そんな到極をティアが受け止めた。


「……お疲れさま、到極くん」


 ティアが囁いた。


「ば、馬鹿な……」


 男が言った。茫然と立ち尽くす男。

 勝負はついた。

 到極は王女を守り抜くことができた。


 その後、レオンは病院に搬送された。

 男は駆けつけた親衛隊によって拘束された。

 そして実行犯たちは警察に連行されていった。




 ◇ ◇ ◇




 翌日、宮殿内。

 シルヴィアの部屋。


「シルヴィア様、これは一体どういう……」


 ドロシーが言った。

 今、シルヴィアとドロシーは椅子に座り、向き合っていた。真剣な表情のシルヴィア。


(怒ってる? 私、また何かしちゃったのかな?)


 考えるドロシー。

 だが、その予想は違った。


「あなただったんですね」


 そう言った直後。

 がばっ! とドロシーに抱きつくシルヴィア。


「えっ!? あの、シルヴィア様?」


「嬉しいですわ、10年ぶりにあなたと会うことができて」


 シルヴィアが言った。

 その意味を理解し、ドロシーが返す。


「私もです、シルヴィア様」


 10年ほど前。シルヴィアとの出会いをきっかけに、ドロシーは彼女に深い尊敬を抱いていた。そして数ヶ月前、王室で働くチャンスを掴んだドロシー。


「どうして言ってくれなかったんですか?」


 シルヴィアが言った。


「だってあんな昔のこと、もう覚えてないと思ったし……」


「忘れるはずがありませんわ。あなた達は私の大切な友達ですもの」


 それからシルヴィアとドロシーは、互いの10年間のことを語り合った。今だけは王女とメイドとしてではなく、友達同士として。




 ◇ ◇ ◇




 数時間後。

 宮殿内の廊下。


「どこに行ったんでしょう、到極さん」


 桜が独り言を言った。

 宮殿内の廊下を歩きながら、到極を探す桜。


 桜は、少し焦っていた。


(ティアさん、今回も活躍してすごいなぁ)

(それに比べて、私は……)


 到極をピンチを救ったティアに対し、ほとんど何も出来なかった自分。桜はそんな自分に落ち込んでいた。


 理由は他にもあった。


(今回の件で到極さんとティアさんの距離がまた縮まった気がします……)

(それに、ここ数日でシルヴィア様とも仲良くなってるみたいだし……)


 強力な恋のライバルたちに置いていかれた気分だった。


 シルヴィアの部屋。

 その部屋の前に桜が来た時だった。

 扉が少し開いていた。


 中から到極とシルヴィアの話し声が聞こえた。


 壁に体を寄せ、耳を澄ませる桜。


(よくないよね、こんな事。何してるんだろう私)


 複雑な気持ちで2人の話を聞く桜。


「それで、話って何ですか?」


 部屋の中。

 到極がシルヴィアに聞いた。


「はい。その……」


 少しもじもじした様子のシルヴィア。

 だが覚悟を決め、言った。




「到極様、このままヴァルデリア王国に残って頂けないでしょうか?」

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