8.仮面の男
到極と新解釈派が対峙する。
到極が言う。
「何を信じたっていいよ、誰を崇めたっていいよ」
「でも――」
と、到極が続ける。
「それを理由に誰かを傷つけるのは、やっぱり違うと思う!」
「何を言うかと思えば」
呆れたように言う男女の内の一人。
「シルヴィアさん、僕戦います。争うためじゃなく止めるために。だから逃げてください!」
「……分かりました。でも決して死なないでくださいね」
そう言って走り出すシルヴィア。
教会の中へと逃げ込む。応援が来るまでここで耐えるつもりだった。
「貴様が戦うなら、こちらも"アレ"を使おう――」
「来い、レオン」
男がそう言うと彼の後ろから何かが現れた。
上半身裸の青年。
眼は紅く染まり、歯は牙のように鋭かった。
そして。
左腕には巨大な機械の手が接続されていた。
井上レオン。
それが目の前の青年の名前だった。
「やれ、レオン」
男が言った。
その言葉を受けて、レオンが動き出す。
機械の手を振りかざしながら到極に迫る。
避ける到極。
「ここは私が。皆さんは王女の始末を」
男が仲間に言った。
レオンと戦闘中の到極。
そんな彼の横を堂々と通り、新解釈派はシルヴィアを追っていった。
◇ ◇ ◇
教会の中。
手分けしてシルヴィアを探す男女。
男の一人がシルヴィアを発見した。
その男から光がシルヴィアを守っていた。
手に持った角材を振り下ろす男。
それを防ぐ光の異能、光子の盾。
だがそれも長くは続かなかった。
何度も繰り出される攻撃。何度もバリアを張り直す光。だがその度に消耗し、バリアを展開する速度が遅くなっていた。そして遂に。
「おらぁ!」
バリアの無い一瞬の隙を突いて、男が角材を振り下ろした。間一髪でかわす2人。だがこれで、2人は分断された。男が再び、棒を振り上げる。
(まずい、発動が間に合わない!)
光が思った。
棒を振り下ろす男。思わず目をつぶるシルヴィア。
そして。
ぐしゃ。と鈍い音が響いた。
閉じた視界の中。
(私、倒れてる。でも不思議、どこも痛くない)
シルヴィアが思った。
恐る恐る目を開けるシルヴィア。
そこには。
「あなた、どうして」
ドロシーがいた。
彼女がシルヴィアに飛び付き、押し倒していた。
「よかった、シルヴィア様が無事で」
ドロシーが言った。
だがその額からは血が流れていた。
シルヴィアを押し飛ばす際、間に合わず代わりに攻撃を受けてしまっていた。
そんな2人に向かって男が再び棒を振り上げる。
急いで異能を再発動する光。
光の異能が男の追撃を防いだ。
ひるむ男の隙を突き、光とシルヴィアが男にタックルした。頭を打ち、気を失う男。
「今のうちに逃げますよドロシー、歩けますか?」
そう言ってドロシーに肩を貸すシルヴィア。
反対側は光が担いだ。
3人は教会の奥へと進んでいった。
◇ ◇ ◇
演説会場の近く。
隼人は謎の人物の跡を追っていた。
だがそれでも、その人物に追いつくことが出来ないでいた。
そして、何度目かの角を曲がった時。
「あれ、どこ行った……?」
隼人はその人影を見失った。
(見失った? この俺が?)
そこは建設中のビルの前だった。
隼人が辺りを見回していると。
「くそっ! アイツ、どこ行きやがった!」
そう言いながら一人の男が走って来た。
肩で息をし、怒りを露わにする男。
月島氷哉だった。
2人が辺りを見回す。
その時だった。
建設中のビルの屋上に、人影が現れたのは。
「あいつ!」
「貴様!」
人影の正体、それは2人が探していた人物だった。
仮面の男。
男は2人を見下ろし、不敵に佇んでいた。
「もう一度俺の前に現れたって事は、覚悟はできてんだろうな!」
月島が男に向かって叫んだ。
「何者だ、お前」
隼人が男に向かって言った。
「私は……そうですね、"トリックスター"とでも名乗っておきましょうか」
仮面の男が言った。
気が付くと辺りには冷気が立ち込めていた。
月島が異能を発動していた。
月島の周りに生成されるいくつもの氷塊。
そして。
「うおおおおおっ!」
月島がそれらを一斉に射出した。
トリックスターめがけて飛ぶ氷塊。
だが。
トリックスターはいとも簡単にそれらを防いでみせた。
「なに!?」
月島の口から思わずそんな声が漏れた。
「シールド? いや念力か?」
隼人が言った。
「だったら……っ!」
月島はそう言うと、更に大きな異能の力を発動した。
――背中に生える二枚の氷の翼。
その翼を大きく羽ばたかせ、宙を舞う月島。
一瞬でトリックスターの眼前に迫る。
身体がねじれるほど、拳を大きく振りかぶる。
「おらあああああっ!」
月島最大の一撃がトリックスターを襲う。
拳と防御の力が激突した。
バチバチバチ! と火花のような光が散る。
「うおおおおおっ!」
「くっ――!」
そして、遂に。
月島の攻撃が弾かれた。
「ぐはっ!」
落下する月島。そして地面に激突した。
だが、異能で衝撃を軽減することでダメージを最小限で抑えることができた。
「チィッ!」
起き上がり、トリックスターを睨む月島。
「思ったよりやるようですね。今のは流石に効きましたよ……」
トリックスターが言った。
月島の本気の攻撃を受けたのだ。
流石に無傷というわけにはいかなかった。
手の痺れから手首を振るトリックスター。
そして。
「そろそろ時間ですかね。またお会いしましょう」
トリックスターが言った。
そしてビルからビルへ飛び移っていった。
「待て!」
そう言って追おうとする月島。
だが怪我の影響ですぐには動けなかった。
あっという間に見えなくなるトリックスター。
「くそっ!」
月島が地面を殴った。
「おい、大丈夫か。あんた」
月島の怪我を心配する隼人。
「俺のことはいい、自分で何とかする」
「そうかい。じゃあ俺はこれで――」
月島の言葉にそう言いかけて。
「って、そうだ。早く王女様の所に行かねぇと!」
隼人は本来の任務を思い出し、急いで王女の元へ向かった。




