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異能と青春  作者: 成海由華
王女護衛編
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7.演説

 8日目。

 今日はシルヴィアの演説が行われる日だ。

 到極たちは既にその会場にいた。


 会場は町の広場だった。

 演壇が用意され、演説を聞こうと人々が集まり始めていた。


「それでは皆さん、よろしくお願いしますね」


 シルヴィアが言った。


「「はい」」


 到極たちが一斉に返した。


 あの夜の後、到極は4人に真実を伝えた。

 シルヴィアの本心。シルヴィアが何者かに狙われている事。

 4人のシルヴィアに対する誤解を解いた到極。

 これで皆、任務に集中できる。


「はぁ〜。まったく酷い目に遭ったぜ」


 シルヴィアが離れたのを確認して、隼人が到極に言った。


「大変だったね(自業自得な気がするけど」


「おい、聞こえてるぞ」


「ごめん、つい心の声が」


 到極が言った。


「……予定の時刻まであと5分。そろそろ持ち場についた方がいい」


 ティアが言った。

 その言葉を合図に全員が持ち場につく。


 光はシルヴィアのすぐ近くで警護。

 桜は少し離れたところで待機。

 到極、ティア、隼人は会場周辺の見回り。


 予定の時刻になった。

 舞台の中央に向かって進むシルヴィア。

 そして、シルヴィアの演説が始まった。




 ◇ ◇ ◇




 シルヴィアの演説は淀みなく進んだ。


 今年から国の政治に参加することになるシルヴィア。演説はそんな彼女の所信を表明するものだった。


 内容は差別や貧困について。


 数年前、国の現状を知るために訪れた貧民街。

 そこで見た現実と、そこであった子ども達との交流のエピソードを交えながら演説は進んだ。

 そして。


 差別や貧困を解消するため全力を尽くすことを約束して、シルヴィアの演説は終わった。


 静寂の後、聴衆から拍手が上がった。

 歓声が会場を包んだ。


 演説は無事に終了した。




 ◇ ◇ ◇




 一方その頃、街中では。


「ん、なんだアイツ?」


 隼人が不審な人影を目撃していた。


『こっちで怪しい奴を見かけた。ちょっと行ってくる』


 無線で到極やティアに伝える隼人。


『了解。無茶はしないでね』

『……気をつけて』


 2人が言った。


『おう!』


 そう返事をして隼人は不審者の跡を追った。




 ◇ ◇ ◇




 無事、演説を終えたシルヴィア。

 今は帰りの車内にいた。


「お疲れ様でした。シルヴィア様」

「えぇ、ありがとう」


 ドロシーの言葉にシルヴィアが言った。

 車内にはシルヴィア、到極、光、ドロシー、親衛隊数名がいた。


 ティア、桜、老執事じいや、スコーピウスは別の車に乗ることになっていた。


「演説が無事に終わって、本当よかったです」


 ドロシーが言った。


 会場周辺、何人かは不審者もいた。だがそれらはことごとく到極たちに拘束されていた。


 ティアが連日参加していた会議の成果だった。


 人が隠れられる場所。爆発物が隠せる場所。更には狙撃ポイントまで。ティアがそれらを予測したことで、先手を打つができたのだ。


 それと『探究する5次元の会』の拠点にも張り込みをつけていた。


「本当ティアさんのおかげですわ。何と御礼をしたらいいか。ね、到極さん」


 シルヴィアが言った。


 だが到極からの返事はなかった。

 難しい顔で周囲を気にする到極。

 強化された五感が何かを察知していた。


「到極さん?」


 心配そうに言うシルヴィア。


「……来ます!」


 到極が言った。

 その数秒後、数台の車が後方から姿を現した。

 シルヴィア暗殺を企む組織だった。


「シルヴィア様、作戦を開始します」


 無線から別の車両の声が聞こえてきた。


 シルヴィアの車の周りには3台のダミーの車両が走っていた。その車が、それぞれ別の道に進んだ。撹乱される敵の車。


 これもティアが協力した作戦の一つだった。


 最終的にシルヴィアの車を追ってきたのは1台だけだった。だが次の瞬間。


――バン! と大きな物音が鳴った。


「タイヤをやられました!」


 運転手が言った。

 打開策を考えるシルヴィア。

 そして。


「この先に古い教会がありましたわね。そこに向かいましょう」


 シルヴィアが言った。




 ◇ ◇ ◇




 今は使われていない教会。

 車を止め、シルヴィアたちが外に出る。


 だがすぐに敵の車も到着した。

 警戒する到極と光。

 数人の男女が車を降りる。その姿が露わになる。


「貴方たちは!」


 シルヴィアが言った。

 その人物たちをシルヴィアは知っていた。


「そう、貴方たちでしたか。私を狙っていたのは」




「バード教の皆さん」




 シルヴィアが言った。


「バード教? この国で主流の? それがどうして!」

「『探究する5次元の会』じゃなかったの!?」


 到極と光が驚いた。


「その服とエンブレム、『新解釈派』ですね』


 シルヴィアが言った。


 バード教にはいくつもの宗派がある。

 昔からの伝統を重んじる『古典派』。

 現代の生活に合わせて変化した『主流派』。


 国民の多くが信仰しているのも、この『主流派』だった。


 そして『新解釈派』。

 教典を従来と全く異なる解釈で読み解き、その解釈こそ真の教えだと主張する派閥だった。


「あちらに人員を割いてくれて助かりましたよ。シルヴィア王女」


 新解釈派、その内の一人の男が言った。


「『探究する5次元の会』を囮に使ったということですか」


 シルヴィアが言った。


「どうしてこんな事、一体何のために」


 その問いに男が答える。


「平和のためですよ、シルヴィア王女」


「平和、ですって……」


「すべては世界を平和に導くため。我々はそのために活動してきました」


「鳥たちに行った酷い仕打ちもですか」


 シルヴィアが言った。

 シルヴィアが続ける。


「『すべての人々と鳥たちを傷つけてはならない』教典に書かれている最初の一文です。私たちが信じる教えの中で、最も重要なもののはずです」


「もちろん知っています。ですが一切の傷をつけられないのなら我々は医療行為すら行えない。神の言葉にも例外はある、という事です」


「今回もその例外だと?」


「はい。この世界を蝕む悪性の腫瘍を切り取るため。という解釈です」


 男が言った。


「では『すべての人間は武器を持ってはならない』この教えにはどう答えるつもりですか?」


 再びシルヴィアが教典から引用して聞いた。


「ですから剣や銃ではなく、工具や調理器具を使っているのですよ」


 そう言う彼らの手には今も、スパナや角材が握られていた。


「もうよろしいですね、シルヴィア王女。では――」


「――世界の平和のために、死んでください!」


 そう言って走り出す新解釈派。

 だが。


「そのために、シルヴィアさんの平和は壊しちゃうんですか?」


「――なに」


 新解釈派の足が止まる。

 声の主を睨む数人の男女。


 到極縁だった。


 到極がシルヴィアを守るように立ち塞がった。

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