4.会食
任務を終え、宮殿に帰ってきた到極と光。
ティア、桜、隼人の3人は先に戻っていた。
宮殿に入った所で合流する5人。
そんな5人に、階段の上から声が聞こえてきた。
シルヴィア王女のものだった。
「皆さん戻られたみたいですね。これから会議を兼ねて、食事会を開きますわ。準備ができ次第、1階の食堂に来てください」
シルヴィアが5人に言った。
5人は着替えを済ませると、食堂へと向かった。
◇ ◇ ◇
1階、食堂。
扉を開けるとそこには豪勢な空間が広がっていた。
天井にはシャンデリア。中央には白いクロスのかかった長いテーブル。その上には三叉の燭台がいくつか置かれていた。
「お待ちしておりましたわ」
シルヴィアはすでに食堂にいた。
テーブルの一番奥の席に座っていた。
「さぁ、皆さま。こちらへどうぞ」
入口近くにいた老執事が言った。
案内され席に着く到極たち。
席に着くとすぐ料理が運ばれてきた。
置かれた料理にテンションが上がる5人。
「では、まずはいただきましょうか」
シルヴィアが言った。
その言葉を合図に食事会が始まった。
「「いただきます!」」
目の前には、野菜と白身魚を使った前菜。
すぐに、横から声が聞こえてきた。
「うめぇ、うめぇ!」
隼人のものだった。
「本当、おいしい!」
「……おいしい」
光とティアが言った。
「当然ですわ。最高の食材を一流のシェフが調理していますから」
上機嫌なシルヴィア。
そんなシルヴィアに老執事が近づいた。
そしてシルヴィアに何かを耳打ちした。
「わかったわ。ありがとう、じいや」
話を聞き終えたシルヴィアが老執事に言った。
「じいや!?」
その言葉を聞いて、隼人が思わず聞き返した。
(漫画やアニメでしか見たことなかったな)
(初めて見ました)
到極と桜が心の中で呟いた。
「実在したんだな! 写真撮ってください! あとサインも!」
隼人だけが声に出して言った。
そんな様子を見て。
「……隼人はなぜ興奮しているの?」
ティアが光に聞いた。
「な、何て説明したらいいんだろう。あはは……」
「……?」
ティアの問いかけに光は苦笑いしか出来なかった。
――。
――――。
「それで、どうでしたか?」
前菜を何口か食べた所でシルヴィアが聞いた。
巡回の結果についてだ。
到極と光が任務で得た情報を伝えた。
「殺傷事件に、"仮面の男"ですか……」
それを聞き、真剣な表情で考え込むシルヴィア。
到極の話が終わったのを確認し、次は隼人が口を開いた。
「俺たちの方は怪しい団体を見かけたくらいだな。何て言ったっけな?」
「……『探究する5次元の会』」
隼人の説明にティアが付け加えた。
「そうそう、それそれ」
「それって何年か前に日本でも問題になった団体だよね」
光が言った。
『探究する5次元の会』
かつて日本で活動していた新興宗教団体だった。数年前、霊感商法や怪しげな修行が問題視されたが、最近はあまり噂を聞かなくなっていた。
「海外に拠点を移していたとはね」
光が言った。
「なるほど、宗教団体ですか。分かりました、チェックしておきましょう」
シルヴィアが真剣な表情で言った。
――。
――――。
話し合いがひと段落ついた頃。
「ドロシー、飲み物の用意を」
老執事が言った。
「はい、ただ今!」
そう言って飲み物を運んで来るメイド。
到極たちはそのメイドに見覚えがあった。
巡回の前、到極とぶつかったメイドだった。
ぎこちない歩き方で進んでいくドロシー。
彼女がシルヴィアに近づいた時だった。
「きゃっ――」
つまずくドロシー。
持っていたトレーから水差しが離れる。
そして。
ガシャーン!
そんな音が響いた。
大量の水をシルヴィアが頭から被っていた。
「あっ」
一瞬の静寂。
だがすぐに。
「あわわわわ、すみませんシルヴィア様、すぐに拭く物を」
ドロシーが泣きそうな声で言った。
慌ててシルヴィアの顔を吹くドロシー。
だがすぐに。
「もういいですわドロシー」
シルヴィアが冷たく言った。
「はい、申し訳ありません……」
ドロシーが言った。
部屋を出て行くドロシー。
「じいや、着替えの用意を」
「かしこまりました」
そう言って、一度部屋を出ていくシルヴィア。
数分後。
着替えを済ませ、シルヴィアが戻ってきた。
席に着くシルヴィア。
だが今度は逆に隼人が立ち上がった。
そして言った。
「おい、あんた。いくらなんでもさっきのは言い過ぎだったんじゃないか」
そう言われ、無言で隼人を見るシルヴィア。
「ちょ、ちょっと隼人さん!?」
「あんたシルヴィア様に何てことを!?」
桜と光が動揺しながら言った。
「隼人、どうしたのさ。相手は王女様だよ?」
到極が小声で言った。
「だからだよ到極」
「えっ?」
理解できていない到極に隼人が説明を続ける。
「こういうのはむしろタメ口の方がいいんだ。『私のことを特別扱いしなかったのは貴方が初めてです! 隼人さま、素敵!』ってな」
隼人の説明を受けて到極が聞いた。
「それもギャルゲーの知識?」
「あぁ、ゲームとか漫画とか。まぁ常識だな」
隼人が言った。
(それにドロシーちゃんを庇えば、ドロシーちゃんからの好感度も上がって一石二鳥!)
(ふふ、俺って天才! まじ主人公! 到極にばっか可愛い女の子を取られてたまるかよ)
隼人がそんな事を考えていると。
先ほどまでの沈黙を破りシルヴィアが口を開いた。
「じいや」
「何でしょう、シルヴィア様」
シルヴィアが続ける。
「確かこの宮殿には地下牢があったわね?」
「はい。かれこれもう100年は使われておりませんが」
「構いません」
シルヴィアが言った。何かが決定したらしい。
「かしこまりました。では――」
「――その者を地下牢へ!」
老執事が声を張り上げた。と同時に使用人たちが隼人を捕らえた。
「へっ? いやちょっと待って! さっきの嘘、嘘だから!」
必死に弁明する隼人。
「黙りなさい、無礼者」
そんな隼人の言葉をシルヴィアが一蹴した。
部屋の外へ連れていかれる隼人。
「うわぁん! 助けて到極! 光ぃ!」
そんな声を残して隼人は見えなくなっていった。
「全く、なにやってんのよあいつは」
「はぁ、やれやれ」
光と到極が言った。
食堂が再び静かになった。
そのタイミングでシルヴィアが口を開いた。
「さて。今度こそ、食事の続きにしましょうか」
シルヴィアが笑顔で仕切り直した。




