表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能と青春  作者: 成海由華
王女護衛編
77/100

2.王女

 シルヴィア=ケツァール=ヴァルデリウス。

 それがこの高貴な王女の名前だった。


 スタイルの良い金髪碧眼の少女。

 年齢は到極と同じか少し高いくらいに見えた。


「貴方たちが今回の護衛ですか」

「はい、到極縁です」


 王女シルヴィアの言葉を受けて到極が言った。

 到極に続いてティアたちも名乗った。


「詳しいことは中で話しましょう」


 シルヴィアが言った。

 振り返り、宮殿の中へ進んでいくシルヴィア。


「さぁ、皆さまもこちらへ」


 老執事が言った。


 宮殿は内部も豪華だった。高い天井、いくつもの彫刻や絵画、メイドや執事が行き交う廊下。


 シルヴィアがある部屋の前で足を止めた。

 そこは応接間だった。


 中に通される到極たち。

 老執事の案内はここまでだった。

 中には別の若い執事が待っていた。


 シルヴィアと5人が席に着く。

 若い執事はシルヴィアの後ろに立った。


「改めまして、シルヴィアと申します」


 そして。


「――スコーピウス」


 王女が後ろの執事に向かって言った。


「はい、シルヴィア様」


 執事が返事をした。


「スコーピウスと申します」


 到極たち5人に執事が名乗った。


 スコーピウス。

 それがこの執事の名前だった。

 歳は到極やシルヴィア王女より少し上。

 10代後半から20代くらいの長身イケメンだった。


 スコーピウスが改めて今回の任務の説明を始めた。


 期間は10日間。

 内容はシルヴィア王女の護衛と町の巡回。

 それと演説会場の警備だ。


 8日目、シルヴィアは国民の前で演説を行うことになっていた。


「本当に、僕たちでよかったんですか?」


 到極が言った。


 そのような重要な任務に、チームLが選ばれた事。

 到極にはそれが疑問だった。


 E.D.OにはLより優秀なチームがいくつもある。

 王女なら当然、最上級のチームを雇えたはずだ。


 そんな到極の疑問に王女が答える。


「えぇ。だって貴方たちは『巨大な悪の組織』を倒した方たちなのでしょう?」


 王女の言葉を聞いて、到極は合点がいった。


 2065年7月7日の事だ。

 到極たちチームLは『ティアを狙っていた組織』と戦い、そして勝利した。


 王女はその実績を重視した、という事らしい。



――。


――――。



 話を終え、応接間を出る到極たち。

 シルヴィアとは一旦ここで別れた。


 廊下を進む5人。自分たちが泊まる部屋を目指していた。荷解きをし、いつもの服に着替え、巡回の任務に向かう。そのためだ。


「私たちの部屋、どんな感じだろうね」


 光が言った。


「そりゃ、どーんと豪勢な部屋だろうな」


 隼人が言った。

 そんな話をしていた時だった。


「――きゃっ!」


 厨房から一人の少女が飛び出してきた。

 水の入ったコップを数杯、トレーに載せて。


「うわっ!」


 到極と少女がぶつかった。

 トレーが大きく傾く。コップがひっくり返る。

 数杯分の水が到極の服を濡らした。


「わわわ、すみません!」


 少女が言った。


「いえ、僕の方こそ」


 到極が返した。


「いいえ、私が悪いんです。お洋服もこんなに濡らしてしまって」


 そう言って濡れた到極の服を拭き始める少女。

 一方、少女の服装は。


 黒いワンピースに白いエプロン。

 頭にはカチューシャ。

 その全体にフリルの装飾が施されていた。


 少女はこの王室のメイドだった。


「気にしないでください、ちょうど着替えるところでしたから。はい、これ」


 そう言って床に落ちたコップを拾い渡す到極。


「ありがとうございます。本当に、すみませんでした!」


 そう言って深々と頭を下げるメイドの少女。

 メイドは到極たちが見えなくなるまで、頭を下げ続けていた。



――。


――――。



 メイドの少女と別れ、少し進んだところで隼人が口を開いた。


「なんつーか。さすがだよ、到極」

「何のこと?」


 聞き返す到極。


「だって異国の王女様だけに留まらず、ドジっ子メイドとまで出会っちゃうんだぜ。ほんとギャルゲー主人公の素質あるよ、お前」


 やれやれといった感じで隼人が言った。


「ぎ、ぎゃるげー……」


 相変わらずの隼人に苦笑いする到極。


「ほら、馬鹿なこと言ってないで行くよ。任務に遅れるわけにいかないんだから」


 そう言って後ろから隼人の肩を掴む光。


「わかった、わかったから押すなってーの」


 光に押されながら隼人が言った。

 そんなやり取りをしながら5人は部屋に向かった。




 ◇ ◇ ◇




 数時間後。

 ヴァルデリア王国の街中。


 到極と光は2人で大きな通りを歩いていた。

 2人は巡回の任務中だった。


「到極くんと2人って、なんだか珍しいね」


 光が言った。


「言われてみればそうだね」


 到極が返した。




 巡回に出発する前。

 部屋を確認し、荷解きした後。


「せっかくだしジャンケンで組分けしようぜ!」


 隼人が提案した。

 隼人の提案に乗ることになった4人。


「最初はグー、じゃんけんポン!」


 そして、ジャンケンの結果。

 到極、光の2人。

 ティア、桜、隼人の3人に分かれる事になった。




 到極と光。

 巡回中の2人の雰囲気は和やかなものだった。


 反対に。

 別の大きな通りでは。


「いやー。両手に花、って奴だな!」


 隼人がウキウキしながら言った。


 だがご機嫌なのは隼人だけだった。

 ティアと桜はどんよりした雰囲気で歩いていた。


(……到極君は今頃どうしているかしら)

(到極さんと同じ班がよかったです……)


 ティアと桜が思った。

 そして。


「「はぁ……」」


 ティアと桜が同時に小さくため息をついた。




 その頃、到極と光の2人は。

 "何か"に集まる群衆に遭遇していた。


「ちょっとすいません」

「通してください」


 到極と光が群衆をかき分け進む。

 そして。


 2人は何かの正体を見た。


 それは"1羽の鳥"だった。

 だがただの鳥ではない。


 羽根をもがれ、胴体には釘が刺さっていた。

 到極の顔が引き攣った。


「ひどい……」


 光の口からそんな言葉が漏れた。


 悪質なイタズラでは済まされなかった。

 勿論、犯罪である。


 だが、それだけではなかった。

 それはここが『ヴァルデリア王国』だからだ。


 この国にとって、鳥は神聖な動物だった。


 国民のほとんどが鳥を崇める宗教、バード教を信仰し、国旗や紙幣などあらゆるものに鳥が描かれているこの国。


 そんな国で鳥を傷つけるという行為は、国家に対する反逆と疑われかねない重罪だった。


「あぁ、なんということを……!」


 群衆の一人、老婆が言った。


「最近多いわよね」

「今月だけでもう3度目だ」

「一体誰がこんなことを」


 群衆は口々にそんな話をしていた。

 鳥はその後、動物病院へと運ばれていった。


 到極は群衆の話から手がかりを掴もうとしたが、事件の核心には迫れなかった。




 ◇ ◇ ◇




 到極と光。

 2人が街角を曲がる。

 すると、そこには一人の青年が立っていた。


 背が高く、冷たい印象の青年。

 数メートル離れた位置で2人と青年の目が合う。

 青年が静かに言った。


「お前たちか、――()()()()()()()()()


 この日、到極は思わぬ強敵に遭遇した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ