4.軍馬と籠島
ティアが両親と再会して数日後。
とある公園。
到極と礼夏がいた。
到極が礼夏を呼び出したのだ。
「わたしに何の用?」
礼夏が冷淡な口調で言った。
「その、最近どうかなと思ってさ。ティアとは上手くいってる?」
到極が聞いた。
ティアはあれからも両親と会っていた。
同様に、ティアは礼夏とも会っていた。
だがそれらは別々で、4人が揃って会ったことはまだなかった。
「あの後、何度か会ってるわ。大した話はしてないけど。仲は、別に普通ね」
到極の質問に答える礼夏。
まだ両者の距離は縮まっていないらしい。
「そっか」
そう相槌を打つ到極。
「何よ、そんなことを聞くためにわざわざ呼び出したの?」
礼夏が語気を強めて言った。
「あ、いや、えっと、そういうわけじゃなくて」
礼夏に押され気味の到極。
「言いたい事まとまらなくて、上手く言えないんだけどさ」
そう言いながら、到極が続ける。
「礼夏さん、苦しんでるんじゃないかと思って。5年前のこと。そのことで僕にできる事はないかなって」
それを聞いて、礼夏の表情が変わった。
「アンタ、それ本気で言ってるの?」
静かに、冷たい口調で言う礼夏。
「う、うん」
礼夏の問いに到極が頷いた。
その直後の事だった。
「ふざけないで!」
礼夏が叫んだ。
「罪はそれを犯した奴にしか償えない。当たり前のことよ。それを部外者が勝手なこと言わないで」
礼夏が声を荒げて言った。
「罪って、あれは事故だったんでしょ。僕はただ、礼夏さんに笑顔になってほしいっていうか、思いつめる必要はないって伝えたいというか」
落ち着かせようと説得する到極。
だが。
「それが余計なお世話だって言ってんの!」
礼夏の怒りは治まらなかった。
「これは私の問題、アンタには関係ない」
そう言って立ち去ろうとする礼夏。
「待って!」
引き留めようと到極が言う。
だが。
「もう私に関わらないで」
そう言って、礼夏は行ってしまった。
この日、到極の説得は失敗に終わった。
◇ ◇ ◇
数日後。
E.D.O本部。
到極とティアは本部を訪れていた。
1時間後に合流する約束をして分かれる2人。
それからティアはある部屋の前に来ていた。
軍馬と籠島の研究室。
その入口で2人がティアを出迎えた。
「今日は検査の予定はなかったはず」
「そんな日に来るなんて珍しいな」
そんな2人にティアが言う。
「……調べてほしい事があって。いいですか?」
「もちろんだよ」
「さぁ、入って入って」
ティアの質問に二つ返事で答える2人。
2人に案内され、ティアは薄暗い研究室へと入っていった。
――。
――――。
ティアは最近、身体と異能の不調に悩まされていた。
身体の方は急な痛みや吐き気。
異能の方はコントロールの精度が落ちていた。
その原因を、ティアは探していた。
湯神をはじめ、数人の医者や研究者に話を聞いたが、その原因は明らかにならずにいた。
「どう、ですか?」
説明を終え、改めてティアが聞いた。
「あの湯神博士にも分からなかった事だ、俺たちに何ができるか分からないが……。だが、できるだけの事はやってみよう」
軍馬が言った。
籠島もその横で頷いていた。
「……ありがとうございます」
ティアが頭を下げて言った。
イスに座って検査が始まるのを待つティア。
その後ろでは2人が検査の準備をしていた。
だが、次の瞬間。
後ろから、ティアの口に何かが押し当てられた。
「むぐっ……!」
それは白い布だった。
そしてそれには"何か"が染み込ませてあった。
何かを嗅がされるティア。
軍馬の仕業だった。
抵抗しようとするティア。
だがそれよりも早く、薬が回ってしまった。
全身の力が抜けるティア。
ティアはそのまま意識を失った。
軍馬と籠島がティアを持ち上げる。
2人はティアを奥の部屋へと運んでいった。
◇ ◇ ◇
「おそいな、ティア」
到極が独り言を言った。
ティアと別れてから1時間後。
到極は待ち合わせ場所の休憩スペースにいた。
だがしばらく待っても、ティアは来なかった。
ティアは遅れる際、必ず連絡を入れてくれる。
だが今回はそれがなかった。
(やっぱりおかしい)
到極が立ち上がった。
そしてティアを探し始めた。
ティアが立ち寄りそうな場所を巡っていく到極。
――。
――――。
「あとはここくらいか」
到極が『軍馬と籠島の研究室』の前で言った。
ラボの存在自体はティアから聞いていた。
どんな研究を行なっているかまでは知らないが。
「すみません」
ラボの入口で言う到極。
だが反応はなかった。
(留守か?)
そう思い、帰ろうとした時だった。
扉がわずかに開いていた。
考える到極。
そして。
「すみません、誰かいませんか?」
到極はラボに入ることにした。
室内は薄暗く、視界が悪かった。
荷物やイスにぶつかりながら、前に進んでいく。
そんな中、何とか軍馬の机までたどり着いた到極。
机の上には大量の写真が散らばっていた。
(研究の資料か?)
写真が到極の視界に入る。
だが、それを認識した瞬間。
「なんだよ、これっ!」
到極が拳を強く握った。
それは下着姿の女子中高生の写真だった。
被写体は、この研究室を訪れた異能者たちだった。
そしてその中には、ティアの姿もあった。
そんな到極の後ろに一つの影が忍び寄っていた。




