7.遭遇
とある山の中。
シェアハウスで本崎から任務を告げられた到極たちは、隼人を連れて山道を歩いていた。
「まったく、何で俺たちがこんな事を」
「あーだこーだ言ってもしょうがないでしょ、ほら、先を急ぐわよ」
隼人の愚痴に礼夏が言った。
この先に毒島のかつての別荘があるらしい。
毒島れんげ。
性別も年齢も不明の人物。
どうやら未来を見ることができる異能者らしい。
その異能を悪用しようとする者たちに狙われ、もう十年以上も行方をくらませている。
だが先日。
毒島らしき人物が目撃されたことで、複数の組織が動き出した。
E.D.Oの上層部もその内の一つだった。
「上層部もやっぱり"手記"を手に入れたいのかな? それとも、悪い奴らの手に渡ってほしくないだけ?」
「どうかしらね。でも上層部が正義感だけで動いてるとは、私には思えないけど」
到極の疑問に礼夏が答えた。
ティアが言う。
「……それより桜さんは一緒に来てもよかったの? 今、敵が現れても"光"に守ってもらう事はできないというのに」
ティアが桜を心配した。
ティア以外も実は同じことを思っていた。
五人の中で、桜だけが攻撃の手段を持っていなかった。
防御はというと、ティア、桜、隼人、礼夏の四人が一般人と同レベルだった。
到極も異能で肉体を強化できるとはいえ、剣や銃を耐えられるレベルではなかった。
防御系の異能はNo.5が持っていた。
No.5、花咲光。
だが彼女は現在別任務でチームLを離れていた。
現在のチームLは、防御面で課題を抱えていた。
(こんな時、光さんがいてくれたらな……)
到極はそう思った。
だが回復役は桜ひとり。
桜だけ留守番というわけにもいかなかった。
「だ、大丈夫ですよ。それに、じゃーん!」
そう言って桜がカバンから何かを取り出した。
「ちゃんと護身用のアイテムも持ってきてますから」
桜が取り出したのは黒い棒のような物だった。
異能警棒。
異能の力を流し込む事で強度が増す護身用アイテムだった。
この道具を使えば、桜の回復能力を攻撃または防御の力に転用することができる。
「敵が防犯グッズの通用する相手ならいいんだけど。ま、無いよりはいいか……」
礼夏が言った。
その時だった。
「――っ!?」
到極が何かを察知した。
その様子を見てティアが言った。
「到極くん、どうかした?」
「……来る!」
到極が言った。
すると四人にも何かの物音が聞こえた。
五人の中で到極がいち早く物音に気づいた。
アークには"准力"と呼ばれる概念があった。
意識して発動するメインの力とは別のサブの力。
異能者が意識せずに発動し続けている微力の異能。
それが准力だった。
桜なら人より傷が治りやすい。
隼人なら人よりほんの少し早く動くことができる。
到極は五感等が常に強化されていた。
そのため敵の襲来をいち早く知ることができた。
五人が周りを警戒する。
すると背後から一人の男が向かってきた。
長髪の男性、辰巳だった。
辰巳は長い刀を持っていた。
辰巳が五人に向かって長刀を振るう。
だが。
――パシッ、と。
ティアの異能、巨大な手が長刀を受け止めた。
そしてそのまま辰巳ごと長刀を投げ飛ばした。
だが辰巳も余裕の振る舞いで、空中でくるりと回って着地した。
「まさか我々以外に、この場所を嗅ぎつけた組織がいたとは」
辰巳がそう言って、刀を構えた。
その様子を見て、到極も拳を構えた。
両者の間に静寂が流れる。
だがその静寂を破ったのは、到極でも辰巳でもなかった。
「動かないで!」
礼夏が手で銃の形をつくった。
そして辰巳の足元を一発撃った。
辰巳のすぐ前の地面がえぐるように削り取られた。
辰巳は両手を上げた。
「到極、先に行って」
「わ、わかった」
礼夏の言葉を聞き、到極がうなずいた。
「……桜さんも行って」
「は、はい!」
ティアの言葉に桜が返事をした。
到極と桜が辰巳の横を通り過ぎる。
二人はそのまま、目的地の別荘へと向かった。
◇ ◇ ◇
山道でティア、隼人、礼夏の三人が辰巳と対峙していた。
「あんたの所属する組織とその目的、あんたが異能者なら異能の内容も、すべて教えなさい」
礼夏が辰巳を牽制しながら言った。
だが辰巳がその質問に答えることはなかった。
――ドシン、と巨大な音と共に。
礼夏の目の前に、何者かが立ち塞がった。
機械兵士。
文字通り機械で造られた戦士で、悪の組織の間で売買されている未来の兵器の一つだった。
礼夏が反応するより速く、機械兵士が礼夏の両手を押さえた。
「きゃっ!? 痛たたたっ、離しなさいよ!」
礼夏が機械兵士の身体を蹴る。
だが機械兵士は微動だにしなかった。
「後は任せたぞ」
辰巳は機械兵士にそう言うと、到極と桜を追って別荘へと向かった。




