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異能と青春  作者: 成海由華
手記争奪編
7/100

7.遭遇

 とある山の中。

 シェアハウスで本崎から任務を告げられた到極たちは、隼人を連れて山道を歩いていた。


「まったく、何で俺たちがこんな事を」


「あーだこーだ言ってもしょうがないでしょ、ほら、先を急ぐわよ」


 隼人の愚痴に礼夏が言った。


 この先に毒島のかつての別荘があるらしい。


 毒島れんげ。

 性別も年齢も不明の人物。

 どうやら未来を見ることができる異能者らしい。

 その異能を悪用しようとする者たちに狙われ、もう十年以上も行方をくらませている。


 だが先日。

 毒島らしき人物が目撃されたことで、複数の組織が動き出した。

 E.D.Oの上層部もその内の一つだった。


「上層部もやっぱり"手記"を手に入れたいのかな? それとも、悪い奴らの手に渡ってほしくないだけ?」


「どうかしらね。でも上層部が正義感だけで動いてるとは、私には思えないけど」


 到極の疑問に礼夏が答えた。


 ティアが言う。


「……それより桜さんは一緒に来てもよかったの? 今、敵が現れても"ひかり"に守ってもらう事はできないというのに」


 ティアが桜を心配した。

 ティア以外も実は同じことを思っていた。


 五人の中で、桜だけが攻撃の手段を持っていなかった。

 防御はというと、ティア、桜、隼人、礼夏の四人が一般人と同レベルだった。

 到極も異能で肉体を強化できるとはいえ、剣や銃を耐えられるレベルではなかった。


 防御系の異能はNo.5が持っていた。

 No.5、花咲光はなさきひかり

 だが彼女は現在別任務でチームLを離れていた。

 現在のチームLは、防御面で課題を抱えていた。


(こんな時、光さんがいてくれたらな……)


 到極はそう思った。


 だが回復役は桜ひとり。

 桜だけ留守番というわけにもいかなかった。


「だ、大丈夫ですよ。それに、じゃーん!」


 そう言って桜がカバンから何かを取り出した。


「ちゃんと護身用のアイテムも持ってきてますから」


 桜が取り出したのは黒い棒のような物だった。


 異能警棒。

 異能の力を流し込む事で強度が増す護身用アイテムだった。

 この道具を使えば、桜の回復能力を攻撃または防御の力に転用することができる。


「敵が防犯グッズの通用する相手ならいいんだけど。ま、無いよりはいいか……」


 礼夏が言った。

 その時だった。




「――っ!?」




 到極が何かを察知した。

 その様子を見てティアが言った。


「到極くん、どうかした?」


「……来る!」


 到極が言った。

 すると四人にも何かの物音が聞こえた。

 五人の中で到極がいち早く物音に気づいた。


 アークには"准力"と呼ばれる概念があった。

 意識して発動するメインの力とは別のサブの力。

 異能者が意識せずに発動し続けている微力の異能。

 それが准力だった。


 桜なら人より傷が治りやすい。

 隼人なら人よりほんの少し早く動くことができる。


 到極は五感等が常に強化されていた。

 そのため敵の襲来をいち早く知ることができた。


 五人が周りを警戒する。


 すると背後から一人の男が向かってきた。


 長髪の男性、辰巳だった。

 辰巳は長い刀を持っていた。


 辰巳が五人に向かって長刀を振るう。


 だが。




 ――パシッ、と。


 ティアの異能、巨大な手が長刀を受け止めた。

 そしてそのまま辰巳ごと長刀を投げ飛ばした。


 だが辰巳も余裕の振る舞いで、空中でくるりと回って着地した。


「まさか我々以外に、この場所を嗅ぎつけた組織がいたとは」


 辰巳がそう言って、刀を構えた。

 その様子を見て、到極も拳を構えた。


 両者の間に静寂が流れる。


 だがその静寂を破ったのは、到極でも辰巳でもなかった。


「動かないで!」


 礼夏が手で銃の形をつくった。

 そして辰巳の足元を一発撃った。


 辰巳のすぐ前の地面がえぐるように削り取られた。

 辰巳は両手を上げた。


「到極、先に行って」


「わ、わかった」


 礼夏の言葉を聞き、到極がうなずいた。


「……桜さんも行って」


「は、はい!」


 ティアの言葉に桜が返事をした。


 到極と桜が辰巳の横を通り過ぎる。

 二人はそのまま、目的地の別荘へと向かった。




 ◇ ◇ ◇




 山道でティア、隼人、礼夏の三人が辰巳と対峙していた。


「あんたの所属する組織とその目的、あんたが異能者なら異能の内容も、すべて教えなさい」


 礼夏が辰巳を牽制しながら言った。


 だが辰巳がその質問に答えることはなかった。




――ドシン、と巨大な音と共に。


 礼夏の目の前に、何者かが立ち塞がった。


 機械兵士。

 文字通り機械で造られた戦士で、悪の組織の間で売買されている未来の兵器の一つだった。


 礼夏が反応するより速く、機械兵士が礼夏の両手を押さえた。


「きゃっ!? 痛たたたっ、離しなさいよ!」


 礼夏が機械兵士の身体を蹴る。

 だが機械兵士は微動だにしなかった。


「後は任せたぞ」


 辰巳は機械兵士にそう言うと、到極と桜を追って別荘へと向かった。

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