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異能と青春  作者: 成海由華
もう一人のティア編
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2.湯神博士

 E.D.O本部には2人の天才がいる。


 一人は桂木天かつらぎてん

 まぎれもない天才のはずなのだが、その言動から変人扱いされる事が多かった。


 そしてもう一人は、湯神ゆがみ博士。

 異能アークに関する数々の研究を行い、その全てで輝かしい功績を修めていた。

 今や日本のみならず世界中から注目を集める若き天才科学者だった。


 この日。

 ティアと到極は『湯神の研究室』を訪れていた。




 本部内にある湯神の研究室ラボ


 ティアと到極はその扉の前にいた。


「失礼します」


 ティアが言った。


「ようこそ、いらっしゃい」


 そう言って湯神が2人を出迎えた。

 湯神は白衣姿のさわやかな青年だった。

 ティアがラボの中に入る。


「大きくなったね。元気そうで嬉しいよ」


 湯神がティアを見て言った。


「私もです、博士」


 ティアがいつもより明るく言った。

 ティアにしては珍しく、微笑みを浮かべながら話していた。


 ティアが笑顔になることは滅多になかった。

 現時点で、ティアが笑顔を向けた相手は2人しかいない。


 一人は到極縁。

 ティアは到極を最も信頼していた。


 そしてもう一人がこの湯神だった。

 ティアが発見されてから今まで、湯神はティアのことを研究し続けていた。


 ティアが異能を深いレベルで理解し、使いこなせているのは湯神のおかげでもあった。

 ティアにとって湯神は兄のような存在といえた。


 ティアの後ろから、到極もラボに入った。

 今日はティアの付き添いだった。


「いらっしゃい到極君。君の話はよくティアから聞いてるよ」


 湯神が到極に言った。


 普段、ティアは一人でこのラボを訪れている。

 ティアにとって湯神は、到極の次に長い時間を過ごしている人物といえた。


 湯神が2人にコーヒーを淹れている間。

 ティアは椅子に座って静かに待っていた。

 到極はラボ内を見学させてもらっていた。


 ラボは整理されていた。


(桂木博士のラボとは正反対だな)


 到極がそんな風に思った。


 ラボ内にある色々な物を眺める到極。

 そんな中。

 一つの水槽が、到極の目に止まった。


「綺麗……」


 到極の口から思わずそんな声が漏れた。


 水槽は小さかった。

 そしてその中で小さな球体が揺蕩たゆたっていた。


「へぇ、君にはこの球が綺麗に見えたんだね」


 そう言って湯神が到極に近づいてきた。


「他には、他には何か感じないかい!」


 湯神が興奮しながら言った。


「え、えーと……」


 湯神の勢いに少し押される到極。

 調子を取り戻し、到極が言う。


「温かい感じがします、あと少し怖い感じも」

「なるほどなるほど!」


 到極の言葉を熱心にメモする湯神。


「何なんですか、これは?」


 到極が聞いた。


「これはね、生命いのちだよ」


 湯神が言った。


 湯神は現在、異能の力を利用して『新しい生命体』を生み出す研究を行なっているらしい。

 この研究が成功すると、その生命体は。


 人類の新たな家畜になる。

 臓器移植などの新たな提供者になる。

 人類と一体化し、人類をさらに進化させる。


 等の可能性がある事を、湯神は話してくれた。


 到極にはそれが良い話にも危険な話にも聞こえた。


「この子もそろそろ、水槽から出たい頃かな」


 湯神が小さな声で言った。


 コーヒーが出来上がった。

 湯髪が到極とティアにコーヒーを振る舞う。

 それから湯神は2人に自分の研究について熱く語った。




 ◇ ◇ ◇




 ある日。

 E.D.O本部。

 とある研究室。


 この日ティアは一人である研究室を訪れていた。


 ティアの異能は貴重だ。

 異能自体は到極と同じものであっても、そのレベルはまるで違った。

 威力、規模、技術、練度、応用力、etc……。


 すべてが高い領域(レベル)にあった。


 それゆえに、ティアは本部内のさまざまな研究者の研究対象になっていた。


 今日はその内の一つ。

軍馬(ぐんま)籠島(かごしま)の研究室』に来ていた。


「悪いね、そんな格好にまでなってもらって」


 白衣を着た背の低い男性、軍馬(ぐんま)が言った。


 研究室は薄暗かった。

 軍馬の視線の先。

 ティアがいた。


 二の腕、太もも、谷間。

 それらが露わになった。


 下着姿のティアが。


「……いえ、検査のためですから」


 そう言って淡々と検査をこなすティア。

 一切恥じらいを見せることはなかった。

 その様子を見て。


「相変わらず無表情か、まるで人形だな」


 もう一人の研究者が言った。

 白衣を着た背の高い男性、籠島(かごしま)だった。


 検査結果を見ながら話す2人。

 その間に服を着るティア。


 服を着終えたティアに2人が近寄る。

 2人が今回の検査結果を告げる。


 次々に発表される数値。

 ティアが頭の中で過去の物と照らし合わせる。

 どの数値も問題はなかった。


 結果を聞き終えたティア。


「……ありがとうございました。失礼します」


 そう言って、一礼し研究室を後にする。

 その後ろ姿を見ながら。


「あの人形が微笑むなんて、湯神博士は一体どんな手を使ったんだ」


 籠島が言った。


「さぁな、そんな事より()()()はどうなってる」

「こっちは順調だ、そっちこそヘマするなよ」


 そんな事を言い合う2人。

 ティアや到極の知らないところで。

 2人の男が暗躍していた。

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