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異能と青春  作者: 成海由華
もう一人のティア編
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1.海野礼夏

 2065年8月。


 海外での任務を終え、到極たちチームLは日本に帰って来ていた。

 現在、シェアハウスには5人の男女。

 到極、ティア、桜、隼人、光。


 そしてこの日、到極は出会う。

 6人目の少女、海野礼夏(うみのれいか)と――。




【第8章 もう一人のティア編】




 とある大型商業施設。


 この日、到極は買い物に来ていた。

 目当ての物を買い終え、帰ろうとした時だった。


「――え、ティア?」


 今日は一緒に来ていないはずの"ティア"の姿を見かけたのは。


「待って」


 到極が言った。

 だが"ティア"は人混みに紛れ、姿を消した。


 急いで追いかける到極。

 エスカレーターを登ったり降りたり。

 店中を歩き回った。


 そして、遂に見つけた。


 音楽コーナー。

 流行りの曲を特集した棚で。


「ティア、来てたんだね。でも今日は別の用事があるって言ってなかったっけ」


 到極が言った。

 だが。


 ティアは無反応だった。


(え、無視? そんなはずは……)


 ティアに限って無視するはずがない。

 到極はそう思った。


 きっと気付いていないだけ。

 そう考え、到極がティアの肩に触れて言った。


「ティア、僕だよ。到極――」


 だが。

 ティアの反応は到極の予想を大きく裏切った。


「きゃああああっ! 何なんですか貴方!?」


 ティア、であるはずの少女が叫んだ。

 いつもなら淡々と話すはずのティアが。


「ちょっとどうしたのティア、大丈夫?」


 到極が言った。

 しかし。


「ティアって誰よ! 新手のナンパか何か!?」


 ティアであるはずの少女が再び叫んだ。


 そう、ティアのはず。

 到極がティアを見間違えるはずがなかった。


 13歳の平均値より少し低い身長。

 ショートヘアの髪型。

 それだけじゃない。

 目も鼻も口も耳も。


 すべてがティアだった。

 それなのに。


 到極と"ティアであるはずの少女"の会話は一向に噛み合わなかった。


 言い争う声を聞き、周りには人が集まって来ていた。

 そして遂に。


「この人不審者です! 誰か捕まえてください!!」


 少女がそう叫んだ。

 すぐに警備員が駆けつけた。

 到極を取り押さえる警備員。


 異能を使えば振り払うことも出来たが、それは違反になる行為だ。

 迂闊には使えなかった。


 到極は考える。

 これは一体どういう状況か。

 何故ティアと話が通じないのか。


(まさか"別人"なのか、こんなに似ているのに)


 考える中で、そんな可能性が頭に浮かんだ。


「君、ちょっと来なさい」


 警備員が言った。

 到極をどこかに連れて行こうとする警備員。

 徐々に"ティア"との距離が離れていく。


「ごめん、人違いだったみたい」

「君とよく似てる子がいて、勘違いしちゃったんだ」

「怖い思いをさせちゃって、ごめん」


 警備員に引っ張られながら、到極が言った。

 自身の頭の中に浮かんだ仮説をまとめながら。


 だがその言葉は、警備員にも野次馬にも苦し紛れの言い訳にしか聞こえなかった。


 ただ一人、ティアにしか見えない少女を除いては。


 その少女だけは、到極の言葉を真に受けていた。

 真に受けるだけの、根拠があった。


(まさか、そんな事あるわけ……でも!)


 少女の心が激しく揺れる。

 そして。


「その人を放してください」


 少女が言った。


「本当に良いのかい?」


 警備員が聞いた。


「はい、ご迷惑をおかけしました……」


 少女が警備員に言った。

 警備員が到極を解放する。

 すると。


「ちょっと来て!」


 少女が到極に言った。

 少女は到極の腕を掴むと、そのまま人気(ひとけ)のない場所まで走り出した。




 ◇ ◇ ◇




「本当なの? あんたが"私そっくりの人間"と知り合いって話」


 少女が言った。

 それを聞いて、到極も頭の中を整理する。


 やはり、この少女はティアではない。

 そして『ティア』という名を知らない。

 だが、自分と瓜二つの人間が存在する事は知っている。


「うん。よく似てたから間違えちゃったんだ、ごめん」


 頭を下げて謝る到極。


「そんな事はいいからその女の事を教えて」

「無事なのよね!?」

「そいつは今どこにいるの!」


 矢継ぎ早に言う少女。


「う、うん無事だよ。今は僕と一緒に暮らしてる」


 若干、勢いに押されながら到極が言った。

 その言葉を聞いて、ひとまず安心した様子の少女。

 次は到極が質問した。


「僕からも聞かせて。君は一体何者なの? ティアとはどういう関係?」


 到極の質問に少女が答える。


「私は海野礼夏(うみのれいか)。ティアって奴は多分、




――――海野夏恋(うみのかこい)、私の()()()()よ」




 ◇ ◇ ◇




 海野礼夏。

 ティアの双子の姉。

 見た目はティアと瓜二つだった。


 だが性格は真逆だった。

 服装も、趣味も、喋り方も。

 全てがティアを反転させたようだった。


 それから。

 ティアの本名は『海野夏恋』というらしい。


 ティアが家族と再会出来るのは、到極にとってうれしい事だった。

 ティアにとってもうれしい事だろう。

 もちろん、ティアの両親にとっても。


 だが、礼夏だけは違った。


「今から会いに行こうよ、ティアきっと喜ぶよ」


 到極がそう言っても。


「あぁ、私はいいわ。それよりパパとママと会ってあげて。2人ともすごく喜ぶと思うから」


 そう言って、礼夏はティアと会おうとしなかった。


 到極と礼夏が連絡先を交換する。

 ティアと両親の再会をセッティングする為だ。


 双方のやり取りの末、ティアと両親は数日後に両親宅で会う事になった。

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