3.追跡者
東京都贈ヶ丘。
そこが到極たちの暮らす町だった。
グラーズとエントランスも、同じくこの町にいた。
今から数十分前。
「やれ」
グラーズがエントランスに命令した。
その言葉を聞き、暗視ゴーグルのような眼鏡を装着するエントランス。
エントランスが異能を発動した。
アーク名 血液追跡。
記憶した血液を持つ者の居場所を特定する異能。
ゴーグルはこの異能を手助けするアイテムだった。
エントランスはすでに到極の血液を記憶させられていた。
グラーズがあるルートで入手した血液をエントランスに与えたのだ。
グラーズの今回の目的、それは。
"到極縁を捕獲すること"だった。
エントランスが到極の居場所を特定した。
だが。
「……反応が2つある」
エントランスが言った。
「2つだぁ!? 真剣に探さねぇとぶっ飛ばすぞ」
グラーズがエントランスの胸ぐらに掴みかかった。
「わたし……うそ、ついてない」
エントランスがか弱い声で弁明した。
チッ、と舌打ちするグラーズ。
グラーズが乱暴に胸ぐらを離した。
血液追跡の特徴として。
採血の後など、反応が2つになる場合があった。
そして血液の位置は分かっても、量や本来の持ち主かどうかは分からなかった。
「仕方ねぇ、近い方から行くぞ」
グラーズが言った。
エントランスがゴーグルを外し、特定した位置情報を伝える。
エントランスをナビ代わりに、グラーズが動き出した。
――。
――――。
だがグラーズの二択は外れた。
グラーズが到着した場所。
そこから出てきたのは銀髪の少女だった。
(チッ、外れか)
だがこの少女も到極縁の血液を持っている。
到極に関係のある人物かも知れない。
グラーズはそう思った。
ミラを気絶させ、抱きかかえるグラーズ。
グラーズはそのまま、自身の拠点へと戻って行った。
◇ ◇ ◇
学校での水やりを終え、到極はシェアハウスに帰る途中だった。
そんな中。
到極は先ほどミラと出会った場所に通りかかった。
(ミラさん、綺麗な人だったなぁ……)
ミラとの出会いを振り返る到極。
すると。
先ほど休んでいた日陰に、"何か"が落ちていることに気づいた。
到極が駆け寄る。
「これって……」
到極が言った。
それはミラが身につけていた装飾品の一部だった。
単に落とした可能性もゼロではないが、それだけではないような気がした。
(ミラさんに何かあったのかも!)
ミラを探す方法を考える到極。
すると。
突然、頭の中にとある風景が浮かんできた。
それは暗い部屋の映像だった。
部屋の中はボロボロで、三角コーンやロープなどが散乱していた。
うっすらだが、部屋の窓から景色も見える。
少しすると、その風景は消えてしまった。
(何だったんだ、今の……)
だが今は、この映像に賭けるしかなかった。
その風景を手がかりに、到極はミラを探し始めた。
◇ ◇ ◇
とある廃ビル。
その一室。
ここがグラーズの拠点だった。
足元には三角コーンなどが散乱していた。
グラーズは部屋の奥にいた。
椅子に座り、次の作戦を練っていた。
時々誰かと電話で連絡をとっているようだった。
部屋の壁際にはエントランスがいた。
膝を抱え、冷たい床に座り、壁に寄りかかっていた。
そして部屋の入口側には。
ミラが倒れていた。
手足をロープで縛られていた。
「……ん」
そんな中、ミラが意識を取り戻した。
ゆっくりと目を開けるミラ。
(ここは……?)
見覚えのない場所だった。
記憶を辿るミラ。
それから自分が縛られている事にも気づいた。
そして理解した。
自分が何者かに連れ去られた事に。
目と首を動かし、辺りを確認するミラ。
だが。
「気づいたみてぇだな」
グラーズが言った。
意識を取り戻したことが、グラーズにバレた。
――。
――――。
「あなたは一体、どうして私を?」
勇気を振り絞ってミラが聞いた。
だがグラーズが答える事はなかった。
適当にはぐらかすグラーズ。
そして。
「痛い目に遭いたくなきゃ、大人しくしてるんだな」
そう言って部屋の奥に帰っていくグラーズ。
(誰か、助けて……)
ミラが心の中でそう呟いた。
◇ ◇ ◇
とある廃ビル。
到極はその建物の前にいた。
頭に浮かんだ風景を頼りに。
街を捜索し、そして見つけた。
入口の扉を開け、そーっと中に入って行く。
静かに階段を上がっていく到極。
そんな中、一つの部屋が目についた。
ドアノブに手をかける到極。
そして勢いよく、扉を開いた。
「到極くん――!」
ミラの声がした。
部屋の手前。
ロープで縛られ、ミラが床に倒れていた。
「ミラさん!」
到極が思わず言った。
視線を壁の方に向けると、そこには10歳くらいの少女、エントランスもいた。
すると、部屋の奥から。
何かが走ってきていた。
長身の屈強な男、グラーズだった。
グラーズが到極に迫る。
グラーズの最初の一撃を避ける到極。
到極が拳を握る。
そしてグラーズの脇腹に拳を叩き込んだ。
だが。
グラーズは避けることなく、到極の拳を受けきった。




