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異能と青春  作者: 成海由華
吸血鬼少女編
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1.夏休みも半ばを過ぎて

 とある国家、そのA。

 日本にはその国の軍が駐留していた。

 その軍の基地内で。


 突如サイレンが鳴った。

 ランプが点灯し、基地内を赤い光が照らした。


「侵入者か!?」


 警戒する隊員たち。


 だが、そんな中。

 平然と廊下を歩く一人の隊員がいた。

 その男は基地内のとある場所に向かっていた。


 牢獄のような部屋。

 そこが男の目的地だった。

 その部屋には一人の少女がいた。


《エントランス》。

 それがこの少女のコードネームだった。

 年齢は10歳。髪は黒のロングヘアー。

 貧相な服を着た、痩せた少女だった。


「着替えろ、出番だ」


 男がそう言って、少女の足元に着替えを投げた。


 床に散らばった服を拾い、少女が着替える。


 黒い拘束衣のような服。

 これが彼女の戦闘服だった。

 首からは暗視ゴーグルのような眼鏡をぶら下げていた。


 着替えが済んだのを見て。


「行くぞ」


 男が少女を連れ出した。

 2人は基地の出口へと向かった。



――。

――――。



 基地内の隊員たちが駆けつけたのは、それから少し経ってからだった。


「何だ、これは……」


 もぬけの殻になった牢獄。

 それを見て、駆けつけた隊員たちは驚愕した。


 逃げ出した《エントランス》を捕獲するため、基地内を捜索する隊員たち。


 そんな中。

 数人の隊員が、遠く離れた野外に男と《エントランス》が走っていくのを発見した。


 隊員たちが叫ぶ。


「お前だったのか、グラーズ!」

「どういうつもりだ!」

「裏切ったのか、グラーズ隊員」


 隊員たちにそう言われ。

 男が立ち止まった。


 男の名はグラーズ=バークレイJr.

 この軍の隊員の一人だった。

 年齢は20代。長身で屈強な男性だった。


 グラーズが隊員たちに言い返す。


「裏切った? 違うな、俺は――」


 その言葉を聞いて。

 隊員たちは耳を疑った。


「じゃあな!」


 そう言って、グラーズが《エントランス》を連れて敷地の外へ脱出しようとする。


「待て!」


 隊員たちが後を追う。

 だがグラーズは、すでに敷地の境界線まで近づいていた。


 このままでは取り逃がしてしまう。


「やむを得ない……」


 隊員たちが決断した。


 銃を構える隊員たち。

 そして。


 隊員たちが一斉に発砲した。


 闇夜に響く銃声。


 だが、それでも。

 グラーズを止めることは出来なかった。


 銃弾をかわし、柵を越え、グラーズと《エントランス》は敷地の外へと消えていった。

 2人を取り逃がし、隊員たちは茫然としていた。





【第10章 吸血鬼少女編】





 2065年8月。

 チームLのシェアハウス。


 現在のメンバーは。

 到極、ティア、桜、隼人、光、礼夏の6人。


 夏休みも折り返しを過ぎた今日。

 到極にはやる事があった。




 ◇ ◇ ◇




 その日の朝。


 朝食を食べ、身支度を済ませた到極。

 夏休みだというのに、到極は学校に向かっていた。


 クラス委員としての用事だった。


 4月にクラス委員を決めた際。

 到極は植物委員になった。


 学校で育てている花や野菜を世話する係だ。


 そのため夏休みであっても。

 到極は水やりのために、時々学校に通っていた。


 学校までの道のりを歩いていると。

 到極は、道端にへたり込む一人の少女に遭遇した。


「大丈夫ですか?」


 そう言って少女に近づく到極。


「はい、少しクラッとしちゃって」


 そう言いながら、少女が顔を上げた。


 美しい銀髪の少女だった。


 年は到極と同じくらい。

 銀髪はロングヘアーで、ふんわりカールしていた。


 フリルの付いた白いドレスを着て。

 リボン等の装飾品を全身にまとっていた。

 ゴシックロリータの様な服装だった。


 目が合い、一瞬ドキッとする到極。

 だがすぐに。


(貧血、いや熱中症かな)


 少女の身体を心配した。


「涼しい場所で休んだ方がいいですよ。そこの日陰とかどうです」


 到極が続ける。


「歩けますか? 手、貸します」


 そう言って手を差し伸べる到極。

 到極に支えられて、日影に入る少女。


 ビルの間の路地のような場所だった。

 少女はそのまま日影に座り込んだ。


「ありがとうございます」


 少女が言った。


「救急車、呼びましょうか?」


 到極が聞いた。


「大丈夫です、そこまでしてもらわなくて」


 少女が言った。


「じゃあせめて水分。お水だけでも飲んでください」


 そう言って自分の鞄からペットボトルを取り出す到極。

 そんな中。


「お水じゃなくて」


 少女が言った。

 そして、急に立ち上がり。




「――もっと"別のもの"が欲しいんですけど」




 到極の耳元で、少女がささやいた。

 先ほどまでとは違う、甘い声だった。


 突然の出来事に、取り出したペットボトルを落とす到極。


 ペットボトルの蓋が開き、地面に転がった。

 2人の足元では水がちょろちょろとこぼれていた。

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