6.撃破
今は使われていない工場。
巨大なフックがハイウォーカーを直撃した。
吹き飛ぶハイウォーカー。
そのまま数メートル転がり、止まった。
ティアと浜松のアイデアだった。
ハイウォーカーに対抗する手段を手に入れるため、浜松は工場内を探っていた。
そして天井にぶら下がっていたフックに目をつけた。
同じ頃、ティアもフックを利用することを思いついていた。
2人は協力し、フックを振り子の要領でハイウォーカーにぶつけたのだった。
ティアと浜松が4人の元に駆け寄った。
6人が改めてハイウォーカーの方を見る。
数秒ほど経った今もまだ。
ハイウォーカーは動かない。
倒れた状態のままだった。
安堵するチームLのメンバーたち。
だが。
ゆっくりと。
ハイウォーカーが起き上がり始めた。
胸には爪痕のような傷。
腕や脚には煤が付いている。
更に地面に転がったことで、身体中が砂埃で汚れていた。
それでもなお、立ち上がるハイウォーカー。
その様子を見て、顔が引き攣る隼人。
「嘘、だろ。まだ動けるのかよ……」
隼人の口から思わずそんな声が漏れた。
ティアと浜松は苦悶の表情を浮かべ。
桜と光は絶望を感じ始めていた。
しかし、到極だけは違った。
確かに到極も満身創痍だ。
だがその眼はまだ絶望していなかった。
本来ならもう、打つ手はないはずなのに。
「浜松さん――」
到極が口を開いた。
到極が他のメンバーたちの前に立つ。
そして続けた。
「――僕、やるよ」
到極が浜松たちの方を振り返って言った。
その意味が、浜松にはすぐに分かった。
【第四艤装】。
世界で数例しか確認されていない力。
到極の爆拳を超える、超必殺技。
それに挑戦する気だと。
「駄目だよ、到極くん!」
浜松が叫んだ。
そもそも成功する可能性は限りなく低い。
失敗すれば到極の身体もただでは済まない。
「到極くん言ってたじゃない。これ以上の力はいらないって」
浜松が叫び続ける。
そして、もし発動に成功したとしても。
「一度でも発動してしまったら元に戻れない。引き返せないんだよ!?」
大き過ぎる力を抱えながら毎日を過ごしていく事になる。
それは到極が望んだ日常ではないはずだった。
でも、と到極は思う。
今の到極には自身を突き動かす理由があった。
破壊された町。
怪我人でごった返す病院。
病室で眠る被害者と、その家族。
その光景を、思い出していた。
そして誓う。
もうこれ以上、コイツの好きにはさせないと。
到極が右手の拳を天高く突き上げた。
するとティア、桜、隼人、光、浜松から色鮮やかな光の粒子が溢れ出て、到極の拳に集まっていった。
通常なら、ぶっつけ本番で出来る技ではない。
だが今の到極には。
戦う覚悟。
極限の状況。
限界寸前の肉体。
心は不思議と落ち着いていた。
新しい力を発現する準備は整っていた。
到極の拳にすべての異能の力が集約された。
反対に、力を吸収された事で、ティアたち5人は身体の力が抜けその場にへたり込んだ。
到極が振り返りハイウォーカーに狙いを定める。
そしてゆっくりと歩き出す。
一歩ずつハイウォーカーに向かっていく。
一方、ハイウォーカーも多少はダメージが蓄積していたらしい。
少しふらつきながら、到極に向かっていく。
心配そうに到極を見守るティアたち。
「はぁぁぁっ」
ハイウォーカーの少し前で、到極が息を吐く。
そして拳を引き、振りかぶる。
拳が6人分の異能の輝きを放ち出す。
【第四艤装】超越爆拳!
到極が思い切り拳をハイウォーカーの身体の中心にぶつける。
後ろに吹っ飛ぶ事なく、ハイウォーカーの動きがその場で止まった。
到極に掴みかかる直前の体勢で止まっていた。
静寂が一瞬流れた。
そして数秒後。
ハイウォーカーがその場で爆発した。
粉々に粉砕され、破片が四方八方に飛び散った。
爆発の後、再び静寂な時が流れた。
爆発のあった中心部に一人立つ到極。
それを後ろから座り込んだ状態で見つめる5人。
目の前で起こった事。
そのあまりの衝撃から、ティアたちはしばらく何も言えなかった。
到極たちによって、ハイウォーカーは倒された。
そしてチームLは到極の【第四艤装】という強力過ぎる戦力を手に入れた。
振り返る到極。
そこには唖然とした5人の表情があった。
だがそれも数秒だった。
すぐにいつもの表情、笑顔に戻る5人。
安堵し喜び合う到極とティアたち。
明るく朗らかな雰囲気が辺りを包んでいた。
だがそれと同時に。
少しだけ、6人は強大な力への恐怖も感じていた。
他者の異能を掛け合わせ、20倍を超える威力を生み出す【第四艤装】。
今後どうやって"この力"を扱っていくのか。
それによって今後の運命が、大きく変わっていくような気がした。
◇ ◇ ◇
数日後。
チームLのシェアハウス。
全員が揃い、リラックスした時間を過ごしていた。
到極はソファでくつろぎ。
ティアは活字の本、隼人は漫画を読み。
桜と光はお菓子を食べていた。
浜松は携帯でニュースを見ていた。
ハイウォーカーの脅威が去り、町には平和が戻っていた。
「到極くんが心配していた病院の人たち、無事に退院できたみたいだね」
そんな記事を読みながら浜松が言った。
その記事を見せようと浜松が到極の隣に座った。
「うん、よかったよ。本当に」
到極が隣に座る浜松に言った。
「それにしても、ちょっと近すぎないか。そこ2人」
隼人が浜松と到極に言った。
確かに浜松は、触れそうなほど到極に近づいていた。
「そりゃそうだよ、だって私――」
「好きだもん。到極君のこと」
浜松が言った。
シェアハウスに一瞬、静寂が流れた。
ティアのページをめくる手が止まり。
桜が持っていたお菓子を落とした。
「浜松さん、それって――?」
光が思わず聞いた。
「え、あぁ "like" だよ。もちろん!」
浜松が言った。
それを聞いて安堵するティアと桜。
隼人は隼人で、到極に先を越されたくないという意味でホッとしていた。
先ほどまでの雰囲気に戻るシェアハウス。
「 "like" だよ、今はね」
到極にも聞こえない小さな声で、浜松がつぶやいた。
今後の到極の異能と同様に。
シェアハウス内の恋の行方も、まだどうなるか分からなかった。
【間章 ハイウォーカー編 起編 完】




