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異能と青春  作者: 成海由華
ハイウォーカー編
60/100

6.撃破

 今は使われていない工場。


 巨大なフックがハイウォーカーを直撃した。


 吹き飛ぶハイウォーカー。

 そのまま数メートル転がり、止まった。



 ティアと浜松のアイデアだった。


 ハイウォーカーに対抗する手段を手に入れるため、浜松は工場内を探っていた。

 そして天井にぶら下がっていたフックに目をつけた。


 同じ頃、ティアもフックを利用することを思いついていた。

 2人は協力し、フックを振り子の要領でハイウォーカーにぶつけたのだった。



 ティアと浜松が4人の元に駆け寄った。

 6人が改めてハイウォーカーの方を見る。


 数秒ほど経った今もまだ。

 ハイウォーカーは動かない。

 倒れた状態のままだった。


 安堵するチームLのメンバーたち。


 だが。


 ゆっくりと。

 ハイウォーカーが起き上がり始めた。


 胸には爪痕のような傷。

 腕や脚には煤が付いている。

 更に地面に転がったことで、身体中が砂埃で汚れていた。


 それでもなお、立ち上がるハイウォーカー。


 その様子を見て、顔が引き攣る隼人。


「嘘、だろ。まだ動けるのかよ……」


 隼人の口から思わずそんな声が漏れた。


 ティアと浜松は苦悶の表情を浮かべ。

 桜と光は絶望を感じ始めていた。


 しかし、到極だけは違った。


 確かに到極も満身創痍だ。

 だがその眼はまだ絶望していなかった。


 本来ならもう、打つ手はないはずなのに。


「浜松さん――」


 到極が口を開いた。

 到極が他のメンバーたちの前に立つ。

 そして続けた。


「――僕、やるよ」


 到極が浜松たちの方を振り返って言った。

 その意味が、浜松にはすぐに分かった。


【第四艤装】。


 世界で数例しか確認されていない力。

 到極の爆拳(バグパンチ)を超える、超必殺技。

 それに挑戦する気だと。


「駄目だよ、到極くん!」


 浜松が叫んだ。

 そもそも成功する可能性は限りなく低い。

 失敗すれば到極の身体もただでは済まない。


「到極くん言ってたじゃない。これ以上の力はいらないって」


 浜松が叫び続ける。

 そして、もし発動に成功したとしても。


「一度でも発動してしまったら元に戻れない。引き返せないんだよ!?」


 大き過ぎる力を抱えながら毎日を過ごしていく事になる。

 それは到極が望んだ日常ではないはずだった。


 でも、と到極は思う。

 今の到極には自身を突き動かす理由があった。


 破壊された町。

 怪我人でごった返す病院。

 病室で眠る被害者と、その家族。


 その光景を、思い出していた。


 そして誓う。

 もうこれ以上、コイツの好きにはさせないと。


 到極が右手の拳を天高く突き上げた。


 するとティア、桜、隼人、光、浜松から色鮮やかな光の粒子が溢れ出て、到極の拳に集まっていった。


 通常なら、ぶっつけ本番で出来る技ではない。


 だが今の到極には。

 戦う覚悟。

 極限の状況。

 限界寸前の肉体。


 心は不思議と落ち着いていた。

 新しい力を発現する準備は整っていた。


 到極の拳にすべての異能の力が集約された。


 反対に、力を吸収された事で、ティアたち5人は身体の力が抜けその場にへたり込んだ。


 到極が振り返りハイウォーカーに狙いを定める。


 そしてゆっくりと歩き出す。

 一歩ずつハイウォーカーに向かっていく。


 一方、ハイウォーカーも多少はダメージが蓄積していたらしい。

 少しふらつきながら、到極に向かっていく。


 心配そうに到極を見守るティアたち。


「はぁぁぁっ」


 ハイウォーカーの少し前で、到極が息を吐く。

 そして拳を引き、振りかぶる。

 拳が6人分の異能の輝きを放ち出す。




【第四艤装】超越爆拳エクストリームバグパンチ




 到極が思い切り拳をハイウォーカーの身体の中心にぶつける。


 後ろに吹っ飛ぶ事なく、ハイウォーカーの動きがその場で止まった。

 到極に掴みかかる直前の体勢で止まっていた。


 静寂が一瞬流れた。


 そして数秒後。



 ハイウォーカーがその場で爆発した。



 粉々に粉砕され、破片が四方八方に飛び散った。

 爆発の後、再び静寂な時が流れた。


 爆発のあった中心部に一人立つ到極。

 それを後ろから座り込んだ状態で見つめる5人。


 目の前で起こった事。

 そのあまりの衝撃から、ティアたちはしばらく何も言えなかった。



 到極たちによって、ハイウォーカーは倒された。

 そしてチームLは到極の【第四艤装】という強力過ぎる戦力を手に入れた。



 振り返る到極。

 そこには唖然とした5人の表情があった。

 だがそれも数秒だった。


 すぐにいつもの表情、笑顔に戻る5人。

 安堵し喜び合う到極とティアたち。


 明るく朗らかな雰囲気が辺りを包んでいた。


 だがそれと同時に。

 少しだけ、6人は強大な力への恐怖も感じていた。


 他者の異能を掛け合わせ、20倍を超える威力を生み出す【第四艤装】。


 今後どうやって"この力"を扱っていくのか。

 それによって今後の運命が、大きく変わっていくような気がした。




 ◇ ◇ ◇




 数日後。

 チームLのシェアハウス。


 全員が揃い、リラックスした時間を過ごしていた。


 到極はソファでくつろぎ。

 ティアは活字の本、隼人は漫画を読み。

 桜と光はお菓子を食べていた。

 浜松は携帯でニュースを見ていた。


 ハイウォーカーの脅威が去り、町には平和が戻っていた。


「到極くんが心配していた病院の人たち、無事に退院できたみたいだね」


 そんな記事を読みながら浜松が言った。

 その記事を見せようと浜松が到極の隣に座った。


「うん、よかったよ。本当に」


 到極が隣に座る浜松に言った。


「それにしても、ちょっと近すぎないか。そこ2人」


 隼人が浜松と到極に言った。

 確かに浜松は、触れそうなほど到極に近づいていた。


「そりゃそうだよ、だって私――」




「好きだもん。到極君のこと」


 浜松が言った。

 シェアハウスに一瞬、静寂が流れた。


 ティアのページをめくる手が止まり。

 桜が持っていたお菓子を落とした。


「浜松さん、それって――?」


 光が思わず聞いた。


「え、あぁ "like" だよ。もちろん!」


 浜松が言った。


 それを聞いて安堵するティアと桜。

 隼人は隼人で、到極に先を越されたくないという意味でホッとしていた。


 先ほどまでの雰囲気に戻るシェアハウス。




「 "like" だよ、今はね」


 到極にも聞こえない小さな声で、浜松がつぶやいた。


 今後の到極の異能と同様に。

 シェアハウス内の恋の行方も、まだどうなるか分からなかった。




【間章 ハイウォーカー編 起編 完】

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