5.奥の手
今は使われていない工場。
本崎からの情報を頼りに、この場所にたどり着いた6人。
ここに来るまでの道中で、すでに到極と5人は合流していた。
工場の周りにはハイウォーカーにやられた警官や異能者たちが倒れていた。
迅速に本部や救急への連絡を済ませる。
そしてチームLの6人全員で、工場の中へと入る。
中は広く、涼しかった。
天井には工業用の巨大なフックが吊り下がっていた。
そんな工場内の奥に、白い人影が見えた。
ハイウォーカーだ。
胸に爪痕のような傷。
到極と浜松が対戦した個体だった。
身構える6人。
ハイウォーカーも6人に気付いたようだった。
睨み合う両者。
先に動いたのはハイウォーカーだった。
走り出し、6人の元へ向かっていく。
迎え討つべく到極と隼人も走り出した。
中間で重なる両者。
ハイウォーカーの初めの一撃を躱し、カウンターを叩き込む2人。
だが案の定、効果はなく、すぐに次の一撃が襲い来る。
攻撃を躱しながら隙を突いてカウンターを入れ続ける到極と隼人。
ハイウォーカーから少し離れた地点。
ティア、桜、光、浜松の4人がいた。
ティアも、この距離から戦闘に参加していた。
自身の異能で作った『腕』で。
そんな中、避け切れない一撃が到極を襲った。
(まずい!)
だがその攻撃は到極には届かなかった。
分厚い異能の壁が、攻撃を阻んでいた。
光が異能で助けてくれたのだ。
だが。
「くっ、ううっ……」
光が苦痛の声をあげた。
いつもの何倍も固く、分厚い盾。
それを生成するには相当な力が必要だった。
しかし、その盾をもってしても。
ハイウォーカーの攻撃を完全には止められなかった。
盾にひびが入る。
到極が急いでハイウォーカーから距離をとる。
その直後、盾が割れ、先ほどまで到極がいた場所をハイウォーカーが打った。
間一髪だった。
体勢を立て直す到極。
「ありがとう、光」
到極が言った。
ハイウォーカーから離れた4人のいる場所。
消耗し一瞬よろけそうになる光。
そんな光を桜が支えていた。
到極が距離をとっている間も。
ハイウォーカーと隼人、ティアの戦いは続いていた。
到極が服の中から何かを取り出した。
それは金属製のグローブ。
《属性付与》。
異能を別の力に変える桂木の発明品だった。
これはその"炎タイプ"。
異能を炎に変えることができた。
ここに来る前、桂木から借りてきた物だった。
(これを使えばアイツに勝てるかも知れない、でも……)
到極は桂木に言われた事を思い出していた。
『《属性付与》はまだ調整が完了していないんだ』
『今の段階で、これを君に貸すことは出来ないな』
『このまま使えば、君もタダでは済まないよ』
そんな桂木をなんとか説得して、《属性付与》を持ち出した到極。
躊躇いがない訳ではない。
桂木の言っていたリスクを背負いながら。
到極がグローブを装着しようとしていると。
ヒュン――。
と到極の側を何かが横切った。
そして気づいた時にはもう《属性付与》は手元になかった。
慌てて周りを見る到極。
すると。
「隼人!? 一体何して――」
到極から少し離れた場所に、隼人は立っていた。
到極が先ほどまで持っていた《属性付与》を持って。
「なんだ、これ?」
隼人が《属性付与》を軽く投げ、キャッチしながら言った。
「返して隼人、それは危険な物なんだ!」
到極が言った。
「そんな物、なんで使おうとしてた。到極、お前ならいいのかよ」
「そ、それは……」
隼人の問いに、言葉が詰まる到極。
「ったく、いつもお前ばかりカッコつけやがって。今回こそは見せ場、譲ってもらうぞ」
隼人が言った。
自分が活躍したい気持ち。
ただそれだけではない。
その奥には、到極の身を案じる気持ち。
そのどちらも本心な所が、隼人らしかった。
到極の真似をして、右手にグローブを装着する隼人。
ここから先は、勘で進めていく。
目盛りをいじり、数値を最大に合わせる。
右手を前に出し、ハイウォーカーに狙いを定める。
そして息を整えると。
「はぁっ!」
隼人はひと思いに電源らしきスイッチを入れた。
その瞬間。
巨大な炎が隼人の右手から発射された。
その反動で隼人は勢いよく後ろに吹き飛んだ。
そのまま工場の壁にぶつかり、地面に倒れる隼人。
炎はもう出ていなかった。
一方、ハイウォーカーは。
隼人の放った炎が直撃していた。
炎はハイウォーカーだけでなく、その周囲ごと巻き込んで燃え上がっていた。
「すごい……」
「何なの、これ」
驚きと戸惑いの声を上げるチームLのメンバーたち。
だがすぐに我に返り、その内3人が隼人に駆け寄る。
「大丈夫!? 隼人!」
「隼人くん、隼人くん!」
「隼人、ねぇ、隼人ってば!」
到極、桜、光が隼人の身を案じる。
「うぐっ、っ痛ぇ。けど、無事だぜ。何とかな」
隼人が起き上がりながら言った。
ホッと胸を撫で下ろす3人。
一方、ティアと浜松は隼人には駆け寄らず、2人で何か話していた。
先ほどまで勢いよく燃えていた炎も、次第に小さくなっていった。
だが。
小さく揺れる炎の向こうから、白い人影が浮かび上がってきた。
ハイウォーカーだった。
ハイウォーカーは直立不動でこちらを見ていた。
体に煤が付いているものの、傷は出来ていなかった。
「おいおい、まじかよ」
隼人が言った。
隼人たち4人に向かってハイウォーカーがゆっくりと歩いてくる。
そんな時だった。
ゴゴゴ、ギギギ、ガンという音が工場内に響いた。
音の正体はティアと浜松だった。
2人が天井に向かって異能を発射していた。
そして。
次の瞬間。
"何か"が猛スピードでハイウォーカーに迫っていた。
よく見るとそれは工業用のフック。
それが巨大な振り子のように、ハイウォーカーのいる位置に加速して向かっていた。
チームL対ハイウォーカーの戦いが、まもなく決着しようとしていた。




