3.再起
アーク名 切断因子。
【第二艤装】固定切断。
命中した相手を"切り裂かれた状態"にする能力。
どんな硬い物質だろうと。
切りにくい物質だろうと。
この異能を受ければ"こま切れ"になる。はずなのだが。
「うそっ!?」
浜松から思わずそんな声が漏れた。
ハイウォーカーは無事だった。
しっかりと身体を保っていた。
ほんの僅か、胸に爪痕のような傷が付いただけだった。
「そんな、浜松さんの異能が効かないなんて……」
到極が言った。
到極の心に、少し嫌な予感が湧き始めていた。
「まだだ、力を合わせるぞ少年!」
「は、はい!」
そんな不安を払拭するように青年が言った。
到極もすぐにそれに答える。
同時に走り出す2人。
拳を振りかぶり、ハイウォーカーに迫る。
「「うおおーっ!」」
異能の力が炸裂する。
2人の拳がハイウォーカーを撃った。
衝撃で辺り一面に土煙が舞い上がる。
だが。
徐々に煙の奥から人影が浮かび上がってくる。
ハイウォーカーだ。
2人の合体技を受けてなお無事だった。
「そんな……」
「なん、だと」
動揺する到極と青年。
そんな2人にハイウォーカーの魔の手が迫る。
「逃げて到極君!」
浜松が叫んだ。
だがその時にはすでに、攻撃は目の前に迫っていた。
腕を鞭のように振るい、到極を攻撃するハイウォーカー。
「ぐわぁ!」
弾き飛ばされ、地面に転がる到極。
直後に青年にも同様の攻撃が迫る。
躱そうとする青年。
だが躱し切れず、後ろに吹き飛ばされた。
「うおっ、ぐふっ……」
地面に倒れる2人。
何とか起きあがろうと藻掻く到極。
だが中々立ち上がれない。
自分の意識が段々と薄れていくのを感じた。
(まだだ、立ち上がらなきゃ、戦わないと……)
だが無情にも、力は抜けていくだけ。
都合のいい奇跡は起きてくれなかった。
薄れゆく意識の中でハイウォーカーの方を見る。
まるで次の獲物に狙いを定めるかのように、ハイウォーカーは逃げ惑う人々に向かって歩き始めていた。
必死に手を伸ばす到極。
だがそこで力尽き、到極は意識を失った。
――――――。
――――。
――。
意識が戻り、ゆっくりと目を開ける到極。
「ここは?」
気がつくとそこはベッドの上だった。
辺りを見回す到極。
どうやら病院のようだ。
「痛っ!」
痛みを覚え、身体を見る到極。
身体には包帯が巻かれていた。
「無理に動かない方がいい」
不意にそんな声が聞こえた。
声のした方を見ると浜松がいた。
浜松も包帯姿だった。
「到極君、見えてる箇所だけじゃなく体内もダメージを受けてるって。お医者さんが言ってたよ」
浜松が言った。
「それから、なんだけどさ――」
それから浜松は少し言いにくそうに話し始めた。
――。
――――。
「なんだって、ティアと桜が!?」
浜松の説明を聞いて、到極が言った。
到極と浜松がハイウォーカーに敗れた後。
ティアと桜もハイウォーカーと遭遇した。
2人は戦い、そして――敗北した。
との事だった。
2人は本部に運ばれ、治療を受けたらしい。
今は医務室のベッドで休んでいるとの事だった。
「怪我の程度は到極君ほどじゃないみたい。ティアも桜も、私もね」
浜松が言った。
実際に拳をぶつけ合った分。
怪我の状態は到極が一番悪いらしい。
「私はこれから本部に行ってくる」
「僕も行くよ。このまま横になってるわけにいかない」
そう言って状態を起こす到極。
「大丈夫? 寝てなくて」
「うん。そうだ、隼人と光にも連絡しておこう」
そう言って電話が可能な場所に移動する到極。
浜松も到極の隣で耳を傾ける。
「隼人か? いま町にすごく強い怪物が現れて大変なんだ。早く帰った方が良い。光にも伝えて――」
「悪い、到極。それは出来ねぇ」
到極の言葉をさえぎって、隼人が言った。
「どうして!?」
到極が言った。
「だってよ……」
電話の先、隼人は街中にいた。
そして。
「そいつが今、目の前にいるんだからよぉ!」
隼人が電話に向かって叫んだ。
街中。
隼人と光がハイウォーカーと対峙していた。
両者の間に緊迫した空気が流れていた。
そして。
ガシャン、バキッ、ドン、ゴォ――。
次に電話口から聞こえてきたのは、そんな物音だけだった。
「本部で集合しよう、必ずだ、隼人」
「隼人、隼人!」
それからは到極がいくら呼びかけても、隼人の声は返ってこなかった。
焦る到極。
電話を握りしめ、下を向く。
そんな到極の肩に、浜松がそっと手を添える。
「2人ならきっと大丈夫。私たちは先に本部に行ってよう?」
浜松がささやくように言った。
到極が顔を上げ、頷いた。
到極と浜松は本部に行くため歩き出した。
本部に向かうため、病院の廊下を進む到極と浜松。
病院にはハイウォーカーに倒された町の人たちが次々に運び込まれていた。
その中には到極が共闘した3人の姿もあった。
そんな中、一つの病室が到極の目に留まった。
病室のベッドの上。
小学生くらいの男の子が眠っていた。
その周りには男の子の家族がいた。
ベッドの横で母親が男の子の手を握っている。
今にも泣き崩れそうな顔で、男の子の名前を呼んでいた。
ハイウォーカーの破壊活動に巻き込まれた子供だった。
そんな光景を目にした到極。
歯を食いしばり。
拳を強く握りしめる。
そして静かに決意した。
次は絶対にハイウォーカーを倒す、と。




