5.迎撃
校庭。
到極と宇野がグラウンドで戦っていた。
怒りに任せて拳を振るう宇野。
先ほどまでと違い、打撃メインの戦い方だった。
もちろん、異能も温存はしない。
不意を突き、異能を発射する宇野。
宇野に主導権を握られ、思うように戦えない到極。
戦況は宇野の優勢だった。
到極が光線をかわす度、光線が木や物置きを破壊していく。
折れた木や学校の備品が、辺りに散らばる。
遂に宇野の攻撃が、到極を追いつめる。
光線をかわし、体勢が崩れた所を狙われた到極。
宇野の拳と蹴りが到極に命中した。
「ぐあああぁっ」
吹き飛ばされ、地面を転がる到極。
その結果、到極はティアのいる場所のすぐ近くまで戻ってきていた。
ティアが到極に駆け寄る。
ティアに支えられ、到極が立ち上がる。
到極を追って、宇野が歩いてくる。
途中で宇野の足が止まった。
倒れている藤原に気づいたからだった。
「お前が倒したのか」
宇野がティアを見て言った。
「お前、中々やるな」
ティアの強さを認めた様子の宇野。
「でも私はどうかな。こいつの様に行くかな」
宇野が藤原をチラッと見ながら言った。
宇野が異能を発動する。
宇野の頭上に宇宙が広がる。
「宇宙は未知の力、お前らごときに敵うはずがない!」
宇野の言葉が響いた。
その言葉を聞いて、到極が考える。
(そうか、これなら――)
到極が動く。
足元に散らばった物の中から、ボールを用意する。
そして。
到極がそのボールを勢いよく投げた。
「馬鹿め、どこを狙っている!」
だがボールは宇野ではなく、明後日の方向に飛んでいった。
一方、頭上の宇宙では星が輝き始めていた。
到極もティアも、かなり消耗していた。
次の一撃を受けて耐え切れるのか。
確率は五分五分だった。
「今度こそ、これで終わりだ」
宇野が言った。
だが。
宇野が異能を発射する、まさにその時。
宇野の頭上の宇宙が割れ、消滅した。
「何っ!?」
予想外の出来事に動揺する宇野。
何故こんなことが起きたのか。
宇野には分からなかった。
「貴様、一体何をした!」
宇野が叫んだ。
宇野に答えたのは到極だった。
「ボールですよ」
到極が言った。
そして続ける。
「さっきのボールであなたの宇宙を壊したんです」
「馬鹿な、一体どうやって――」
到極の言葉に宇野が返した。
「あなた言いましたよね、宇宙は未知の力だって」
到極が説明する。
異能はイメージによって発現する。
炎を想像した者が炎を出し。
時の流れをイメージできた者が時を操れる。
だが、宇野は宇宙を未知だと言った。
それは宇野が、彼女の異能の中に想像できていない部分、つまり空白の部分があることを意味していた。
到極はそこにボールを当て、宇野の宇宙を壊した。
壁にボールを当て、裏側から。
先ほどまでの戦いで、前と横は確認済みだった。
弱点があるとすれば、裏側だと推測できた。
「おのれ、許さん!」
到極の説明を聞いて、逆情する宇野。
再び異能を発動させ、宇宙を造り始める。
だが、それより早く。
到極が宇野に迫る。
到極が宇野の懐に飛び込む。
そして。
「うおりゃー!」
到極が拳を振り抜く。
まだこの時点では技名の決まってない一撃。
爆拳と呼ぶことになる一撃を、到極が放った。
「がはっ!」
宇野が吹き飛び、地面を転がった。
今度こそ、到極は宇野に勝利した。
◇ ◇ ◇
戦いを終え、ひと息つく到極。
「さっきは助かったよ、ティア」
到極が先ほどのお礼を言った。
到極のお礼にティアが小さく頷いた。
「でも驚いたなぁ。ティアが戦いに参戦するなんて」
「……到極くんの事、助けたいって思ったから」
到極の言葉にティアが返した。
「そっか、ありがとう」
「……どういたしまして」
そんな2人の元に。
教師たちが走ってきた。
「ちょっと、何ですかこれは!」
土埃で汚れた到極の制服。
穴だらけになった校舎から校門までの道。
散乱する備品や折れた樹木。
そして、倒れている見知らぬ男女。
それらを見て、教師の一人が言った。
到極とティアが、教師たちに事情を説明した。
――。
――――。
ひと通り説明を聞き終えた教師たち。
ひとまず、警察を呼ぶことにした。
警察が来るまでの間。
散乱する備品を片付ける教師たち。
「君たちは休んでなさい」
その言葉に従い、到極とティアは休憩していた。
少しして警察が到着した。
警察に宇野、藤原の身柄を引き渡す。
その様子を並んで見つめる到極とティア。
「詳しいことは、あの人たちが回復してからだね」
到極が言った。
到極の隣で、ティアが小さく頷いた。
何故、ティアが狙われたのか。
それを指示した者は一体誰なのか。
ティアの記憶に、何か関係があるのか。
それらが明らかになるのは、もう少し先になりそうだった。
【第1章 出会い編 中盤戦 完】




