4.初陣
ティアは木の影から到極を見守っていた。
到極と宇野の戦いを見ながら、ティアは考えていた。
(……到極君はいつも私を助けてくれる)
苅谷との戦いの時も、今も。
そんな到極が今、藤原の異能を受け苦しんでいる。
そんな光景を目の当たりにし、ティアは考える。
自分が今、何をしたいのかを。
ティアは今まで、誰かのために何かをしたいと思った事がなかった。
だが今回。
それを遂に見つけた。
(私は、私は――)
(到極くんを助けたい!)
◇ ◇ ◇
宇野が到極を仕留めるために放った一撃。
だが。
その一撃は到極には命中しなかった。
"何か"が攻撃を防いでいた。
「何っ!?」
宇野の口から思わずそんな声が漏れた。
"何か"の正体、それは異能でできた巨大な光の手。
その手が、光線から到極を守っていた。
ティアの異能だった。
到極を守るため、木の影から出て、ティアが異能を発動していた。
「チッ、あいつか――!」
宇野も気づいた。
異能を発動したのがティアだという事に。
だが一瞬。
宇野がティアを攻撃するよりも早く。
ティアの異能が、宇野と藤原を薙ぎ払った。
吹き飛ぶ2人。
その隙に、ティアが到極に駆け寄った。
そして。
ティアが到極をやさしく抱きしめた。
――――――。
――――。
――。
幻影世界の中で、到極はうずくまっていた。
だが。
世界に小さな亀裂が入る。
亀裂から暗闇に光が射し込む。
亀裂はどんどん大きくなっていった。
光を受け、小学生たちの幻が消えていく。
そして。
遂に、幻影の世界が割れた。
到極の意識が、現実に戻っていく。
――。
――――。
――――――。
(なんだろう、この感覚。やさしくて、温かい……)
現実に戻って、到極が一番初めに感じたのはそんな感覚だった。
ティアの顔がすぐ近くにあった。
「ティア……?」
到極が言った。
「えぇ、到極くん」
ティアが頷きながら言った。
そうしている内に、到極は気づいた。
自分がティアに抱きしめられている事に。
「え、て、てて、ティア!?」
動揺する到極。
対してティアは冷静だった。
「よかった、戻ったのね」
ティアが落ち着いた口調で言った。
「え、あ、うん。ありがとう」
到極が礼を言い、到極とティアが離れる。
「よくもやってくれたな、貴様!」
宇野が叫んだ。
宇野と藤原が立ち上がろうとしていた。
到極が構える。
そんな到極に向かって。
「到極くん、私も戦うわ」
ティアが言った。
その言葉に、一瞬驚く到極。
だがすぐに。
「うん、わかった!」
到極がそう言った。
立ち上がった宇野と藤原。
「ふざけやがってー!」
そう言いながら走ってくる宇野。
そんな宇野を、到極が引き受ける。
到極と宇野は掴み合いながら、グラウンドの方に向かって行った。
◇ ◇ ◇
校舎の前ではティアと藤原が向かい合っていた。
「さっきはよくも邪魔してくれたね」
藤原が言った。
藤原は余裕の表情だった。
「……どうして?」
ティアが言った。
「どうして、私を狙うの?」
ティアの質問に藤原が答える。
「ごめんね、詳しいことは俺にも分からないんだ」
藤原が言った。
藤原の言葉はまだ続いた。
「でも"あの方"の命令は絶対なんでね。悪いけど、一緒について来てもらうよ!」
そう言って、異能を発動する藤原。
黒い立方体が空中に出現した。
「今度は君が僕の異能を受ける番だ、はっ!」
藤原のかけ声と同時に、立方体の上面が開く。
そして中から触手が飛び出し、ティアに飛びかかった。
だが。
ティアはまったくの無反応だった。
触手もすぐに消えてしまった。
「何っ!?」
藤原が驚きを露わにした。
「何故だ、なぜ僕の異能が効かない!?」
藤原が困惑しながら言った。
そんな藤原に、ティアが説明する。
「……私には記憶、無いから」
そう、ティアは記憶喪失だ。
トラウマになるような悲惨な記憶など、そもそも持っていなかった。
当然、記憶を利用する藤原の力は、ティアには通用しなかった。
「そんな……」
藤原が力なく言った。
ティアが異能を発動した。
藤原の頭上に、巨大な光の手が出現した。
「……これで、終わり」
ティアが言った。
異能で作り出した手が、藤原に迫っていく。
「ひっ、う、うわあああっ!」
巨大な手が、藤原を叩いた。
ティアが異能の手をどけると、藤原は地面に倒れ、伸びていた。
ティアvs藤原は、ティアに軍配が上がった。




