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異能と青春  作者: 成海由華
出会い編1'
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3.狙われた少女

 東京都贈ヶ丘中学校。


 放課後。

 生徒たちが階段を降り、続々と下校していく。

 その生徒たちの中に到極とティアもいた。


「どうだった、学校は?」


 到極が聞いた。


「……みんな優しくしてくれた」


 ティアが今日一日を振り返って言った。


「そうだね。ティアの人柄が、みんなに伝わったのかもね」


 到極が言った。


 下駄箱で靴を履き替え、玄関を出る2人。

 話しながら校門に向かって歩いていると。


「あんたがティアだな」


 一人の女が話しかけてきた。


 女の名は宇野。

 年は高校生くらい。

 身長も到極たちより高かった。


「私と一緒に来てもらおうか」


 そう言って、ティアに近づいてくる宇野。


 ティアが到極の後ろに隠れる。


 到極の右腕を両手で握りしめるティア。

 ティアの心細さが伝わってくる。

 それを見て。


「はぁ、力ずくか。面倒だな」


 宇野が言った。

 そして立ち止まり、右手を前に出した。


(この人、まさか異能者か!?)


 その動作から、異能を発動しようとしていると感じた到極。


「ティア、隠れてて」


 到極が言った。

 ティアが頷き、少し離れた木の影に向かう。

 木の後ろに隠れ、到極を見守るティア。


 到極が宇野を警戒する。


 すると彼女の頭上に何かが広がっていった。

 それは"宇宙"の景色だった。


 小さな宇宙が宇野の頭上に誕生した。

 そして。


 その星のいくつかが輝き始める。

 その光が一斉に、到極に発射された。


 後ろに飛んで回避する到極。

 地面を見ると、光線の当たった部分が焼け焦げていた。



 その光景を見て、爆発音を聞いて。


「きゃー!」

「助けてー!」


 近くにいた生徒たちが一斉に逃げ出した。

 その場には到極と宇野だけが残っていた。


 アーク名 銀河閃光(コズミックブラスター)

 宇宙のレプリカを作り出し、そこから光や熱の攻撃を放つことができる力。

 それが宇野の異能だった。


 その威力に動揺する到極。

 だがティアを守るため、到極は戦う姿勢をとる。


 ティアを巡る戦いが始まった。


 宇野が連続で光線を発射する。

 宇野の攻撃をかわしながら、反撃の糸口を探す到極。


 身体を捻り、飛び、倒れながら。

 慣れない動きで、なんとか宇野の元へ近づいていく。

 そして。


(この距離なら――!)


 一か八か、到極が宇野に向かって飛び込んだ。


「うおおぉー!」


 到極が拳を握る。

 降りしきる光線の間を縫って、到極の拳が宇野に命中した。


「ぐああぁっ」


 宇野が後ろに勢いよく吹き飛んだ。


 突き出した拳をゆっくりと下ろし、到極が宇野に向かって歩く。

 彼女の頭上の宇宙も、もう消えていた。

 不意打ちの心配もなさそうだった。


 到極が異能を使えるようになって、今回で5戦目。

 初戦の苅谷との戦いに比べると、少しは異能を使った戦いにも慣れてきたように思う。


 倒れる宇野のそばまで近づき、到極が聞く。


「あなた、一体何者なんですか。どうしてティアを狙うんですか?」


 ティアが何故、狙われなければならないのか。

 その答えを知ることが、ティアの記憶にも繋がる気がした。


 だが、宇野は答えなかった。


 そして、ニヤリと笑った。


(っ!)


 不意打ちを警戒し、思わず一歩下がる到極。

 だが、一歩下がったその位置で。


「――へぇ、思ったよりやるんだね。君」


 何かが耳元でささやいた。


(しまった、もう一人いたのか!)


 慌てて振り返る到極。


 そこには高校生くらいの男がいた。


 男の名は藤原。

 黒い服に身を包み、不敵に笑っていた。

 身長も到極たちより高かった。


 到極がファイティングポーズをとる。

 警戒し、動きが堅くなる到極。

 対する藤原は余裕の振る舞いを見せていた。


 藤原が異能を発動した。

 すると、黒い立方体が出現した。


 立方体の上面が開いた。

 その中から触手のようなものが飛び出し、到極の胸に飛び込んだ。


 触手はすぐに消えた。

 痛みも無かった。

 だが。


 突然、到極の視界が暗転した。



――――――。


――――。


――。



 気がつくと、到極は暗い闇の中にいた。

 藤原たちも見当たらなかった。


 それだけではない。

 校舎など、あらゆる物が消失していた。


 到極が闇の中で困惑していると。


 目の前に小学4年生の生徒たちが現れた。


 到極はこの生徒たちを知っていた。

 4年前、同じクラスだった同級生たちだ。


 生徒たちは自分の方を指さして嘲笑っていた。


 そして。

 気がつくと自分も小学4年生の頃の姿になっていた。


「うわあああぁーっ!」


 思わず叫ぶ到極。

 しゃがみ込み、耳を塞いだ。


 ぎゅっと目を閉じる到極。

 その身体は小刻みに震えていた。

 思い出したくない光景が目の前に広がっていた。



――。


――――。


――――――。



 アーク名 黒い箱(パンドラボックス)

 他者の記憶からトラウマを引きずり出し、その幻影を本人に見せる異能。

 それが藤原の異能だった。


 今、到極は藤原が見せた幻影世界の中にいた。

 トラウマに苦しめられる到極。


 現実側からは、到極の見ている幻影は見えない。

 現実側から見ると、到極は急に怯えだし、突然叫びだしたように見えた。


 そして、この間。

 到極には現実の世界が見えていなかった。


 その隙に立ち上がる宇野。

 服に付いた砂埃を払う。


「相変わらず性格の悪い異能だな」


 宇野が藤原の方を見て言った。

 宇野の言葉に藤原が苦笑した。


「じゃ、そろそろ終わらせるか」


 宇野が言った。

 到極が反撃できないこの隙に、宇野が異能の発射準備に入る。


 宇野の頭上に小さな宇宙が広がる。

 その中のいくつかの天体が輝き出す。


「これで終わりだ、あばよ」


 宇野が言った。

 天体の光がビームとなって、到極に襲いかかった。

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