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異能と青春  作者: 成海由華
出会い編1'
50/100

2.転校生

 新学期が始まってから一週間。


 朝。

 シェアハウスの玄関。

 到極とティアが靴を履いていた。


「いってきます」


 到極が言った。

 到極は制服姿だった。


「……いってきます」


 ティアが到極を真似して言った。

 今日はティアも制服姿だった。


 到極が玄関を出る。

 今日からはティアも一緒だった。


 2人は中学校に向かって歩き出した。




 ◇ ◇ ◇




 東京都贈ヶ丘中学校。

 2年2組の教室。


「ティア、です。よろしくお願いします」


 教室の前でティアが自己紹介した。

 言い終わると同時に、水沢先生の時と同じように、教室に歓声が鳴り響いた。


 やはり声の中心は吉田、加藤、小森の3人だった。


(す、すごい声だな……)

(まあ、こんな美少女が転校してきたんだ。無理もないか)


 3人の熱狂には若干引きつつも、到極は納得した。




 休み時間。

 チャイムが鳴ると同時に、ティアはクラスメートに囲まれた。

 どうやら質問攻めに遭っているようだった。


「どこから転校して来たの?」

「好きな食べ物は?」

「部活は何をやってたの?」

「好きな芸能人は?」

「好きなタイプは?」


 その回答のほとんどは「わからない」だったが。


 質問が落ち着いてきた頃。

 一人の少女がティアに話しかけてきた。


「転校して来たばかりで分からない事も多いと思うけど、私でよかったらなんでも聞いて」


 少女が笑顔で言った。


 少女の名は夏目なつめカナ。

 このクラスの学級委員だった。


「……ありがとう」


 ティアが返した。




 次の時間のチャイムが鳴った。

 次の授業が始まった。




 数学の授業。

 黒板の前で先生が首を傾げていた。


「あれ、おかしいな……」


 先生が言った。


「先生、式の方に誤りがあります」


 ティアが先生のミスを訂正した。




 理科の授業。

 教室に入って来るなり、先生が口を開いた。


「今日は抜き打ちテストをします」


「「「えぇーっ」」」


 生徒たちのブーイングが響いた。


 数分後。

 テストと答え合わせが終わった。


「全問正解者は、ティアさんだけか」


 先生が言った。


 今度は生徒たちの驚きの声が響いた。


(ティアってこんなに頭が良かったのか)


 到極も心の中で驚いていた。




 再び休み時間。

 ティアは再びクラスメートに囲まれていた。


「すごいよ、ティアちゃん」

「今度わたしに勉強教えて!」

「俺にも!」

「私も!」


 クラスメートたちが言った。

 ティアはあっという間に2組での人気を獲得した。




 ◇ ◇ ◇




 みたび休み時間。

 転校生の噂は他クラスにも広がっていた。


 ティアを見にたくさんの生徒が2組の教室の前に来ていた。


「あの子だ、かわいいなー」

「俺、話しかけてみようかな」


 他クラスの生徒たちがはしゃぐ中。

 一人の男が近づいてきた。


「おい、どけろ。邪魔だ」


 そう言って人混みを割り、進む男。

 男はとうとう2組の教室に入って来た。


 男の名は鮫島大吾さめじまだいご

 大柄な体格で傲慢な性格。

 2年5組の生徒で、学年一の不良だった。


 強ばる2組の生徒たち。


「転校生ってのは、どいつだ?」


 鮫島が言った。

 2組の何人かがティアの方を見た。


「へえ、お前か。なかなか美人じゃねぇか」


 そう言ってティアに近づいて行く鮫島。

 だがティアも嫌な予感がしたようで、さっと到極の横に寄った。


「ティアに何か用ですか?」


 到極が聞いた。


「あ゛ぁ、お前には関係無えだろ」


 そう言ってティアに手を伸ばす鮫島。

 だがティアに触れる事は出来なかった。

 ティアが到極の後ろに隠れたからだ。


「おいお前、どけろ」


 鮫島が言った。

 以前の到極ならすぐに避けていたかも知れない。

 だが今は違った。


(戦ったら、互角に持ち込めるか)


 到極はそんな事を考えていた。

 今の到極には異能がある。


「どけろって言ってんだよ!」


 鮫島が到極の胸ぐらを掴んで言った。

 2組の教室に緊張が走った。


(どうする、使うか?)


 到極が異能の力を纏い始める。

 同時に鮫島が拳を構えた。

 だが。


「そこで何をしている!」


 廊下から大声が聞こえた。

 鮫島の動きが止まった。


「やべ、藤山ふじやまだ。逃げろ!」


 廊下にいた生徒の誰かが言った。

 その声を聞いて廊下にいた生徒たちが逃げ出した。


 藤山ふじやま先生。20代。

 竹刀を持ったジャージ姿の女性教師。

 髪型はポニーテール。

 生活指導の担当でもあった。


 藤山先生の厳しさは生徒の間でも有名だった。


「ちっ」


 鮫島も到極を離し、去っていった。


(助かったぁ)


 到極はホッと胸を撫で下ろした。


 到極が振り返ると2組の生徒たちが到極を見ていた。


「鮫島相手に引かないなんて、お前すげぇよ」

「ティアちゃんを守る為に盾になるなんて素敵」

「かっこよかったよ、君」


 生徒たちが言った。

 到極の2組でのポジションは、何とか悪いものにならずに済みそうだった。




 ◇ ◇ ◇




 放課後。

 続々と生徒たちが下校して行く。

 そんな中、一人だけ学校に向かって来る者がいた。


「ここか、ティアがいるのは」


 その人物が言った。

 ティアを狙う魔の手は、すぐそこに迫っていた。

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