1.始業式
2065年4月。
到極とティアの共同生活が始まって数日後。
春休みが終わった。
今日から新学期がスタートした。
朝。
シェアハウスの玄関。
到極とティアが向き合っていた。
「それじゃ、いってきます」
到極が言った。
到極は制服姿だった。
「いってらっしゃい」
ティアが言った。
ティアは私服姿だった。
ティアが到極を見送る。
到極は玄関を出て中学校へ向かった。
【第1章 出会い編 中盤戦】
東京都贈ヶ丘中学校。
生徒の自主性を重んじる自由な校風が特徴だ。
女子スラックスOK。
男子スカートOK。
髪の長さ、髪色、髪型、自由。
メイク、自由。
装飾品、自由。
下着の色や種類、もちろん自由。
他にも生徒会による自治。
バリアフリーな設計。
解放された屋上。etc……。
人気のポイントは多かった。
異能者に対しても寛容で、他校と比べ異能者の割合が多いのも特徴だった。
今日はそんな学校の始業式だ。
続々と生徒たちが登校してくる。
学校の中に入ると、クラス替えの結果が貼り出されていた。
その結果を見て、一喜一憂する生徒たち。
そんな生徒たちの間をかいくぐり。
到極が自分のクラスを確認した。
◇ ◇ ◇
「僕は2組か」
貼り出された紙を見て、到極が呟いた。
この学校に、親しい友人はいない。
だから別に何組でも構わない。
それが、到極の感想だった。
2年2組の教室。
教室に入ると自分の席を確認した。
到極は、中央の列の一番後ろの席だった。
(ここだと、先生からよく見えそうだな。はぁ)
できれば廊下側か窓側が良かった。
と到極は思った。
到極は席に座り、チャイムが鳴るのを待った。
教室内には様々な生徒がいた。
本を読んでいる女子。
机に伏して寝ている男子。
イラストを描いている女子。
ぼーっと窓の外の景色を見る男子。
同じクラスになれた事を喜ぶ女子たち。
間違えて、一度去年の教室に入ってからこの教室に来た者たち。
などなど。
この学校は一クラス30人制だ。
2組は基準より一人少なく、全員分で29席だった。
ほぼ全員が教室に揃った頃。
「知ってるか? 今度、転校生が来るらしいぜ。まだ一学期が始まったばかりなのに珍しいよな」
男子生徒たち数人がそんな雑談を始めた。
転校生とは、ティアの事だ。
もちろん到極以外の生徒はまだ知らない事だが。
ティアが到極と一緒に住む事が決まった後。
学校関係の手続きが急ピッチで進められた。
だが始業式には間に合わず、ティアの登校日は一週間後となった。
そして急遽、席だけが到極の隣に配置された。
男子生徒たちの雑談が盛り上がる中。
始業のチャイムが鳴った。
生徒たちが席に着く。
だが全ての席は埋まらなかった。
空席が二つあった。
一つは到極の隣、ティアの席。
もう一つは到極の前の席だった。
(これじゃ、先生から丸見えだよ。はぁ)
前の席を見ながら到極は思った。
前の席の名前の欄。
そこには桜波姫と書かれていた。
そんな時だった。
――ガラガラガラ、と。
教室の扉が開いた。
先生が一人、教室に入って来た。
教壇に立ち、自己紹介する。
「水沢鏡子です。2年2組のみんな、これから一年間、一緒にお勉強がんばりましょう!」
水沢が言った。
言い終わると同時に教室に歓声が響いた。
水沢鏡子。20代。
セミロングヘアーの髪型。
明るい性格で生徒から人気の女性教師だった。
水沢が担任になった事を喜ぶ生徒たち。
中には指笛を鳴らす男子もいた。
(ずいぶん賑やかなクラスに組み分けされたみたいだ)
と、到極は思った。
それから。
クラス全員で整列して体育館に向かった。
そして体育館に並べられたパイプ椅子に座った。
始業式が始まった。
(退屈だなぁ)
到極は終始そう思っていた。
校長先生の話を聞き。
生徒会長と新入生代表の挨拶を聞いた。
教室に戻ると自己紹介に、クラス委員決め。
それらは円滑に進んだ。
だが賑やかな雰囲気の中で、到極はまだ周りに馴染めずにいた。
◇ ◇ ◇
新学期が始まって数日。
少しずつクラスメートの顔と名前が分かってきた。
吉田拓馬。
少年漫画の主人公のような見た目の少年。
加藤美樹。
長身のイケメン少年。
小森大。
ぽっちゃり体型の少年。
この3人がクラスで一番騒がしかった。
だがそれゆえに到極の印象に強く残った。
水沢先生が担任だと分かった時に一番うるさかったのも、この3人だった。
さらに。
安田智美。
女子のリーダー的な立ち位置の少女。
蔦谷星子。
交友関係の広いツインテールの少女。
佐野遥。
小柄でスポーツ万能の少女。
この3人が女子の中心グループの様だった。
よく教室の中央に陣取っているので見かける機会が多く、到極でも覚えることが出来た。
そんなこんなで一週間。
明日はいよいよティアの初登校の日だった。




